この記事の監修ドクター|齋藤 陽先生(目黒外科)
足の血管が浮き出てこぶになる、下肢静脈瘤。症状や病気のメカニズムを見て行きましょう。
下肢静脈瘤を知っていますか?
下肢静脈瘤と言う病気の名前は知らなくても、足の血管が青い筋のように、あるいはこぶのようにふくれる症状を知っている人は多いかもしれません。その他にも、皮膚の下に赤黒く、蜘蛛の巣のように、あるいは網の目のように血管が浮き出して見えるなどの症状があります。
目に見えない症状では、足がむくんでつらい、だるくてつらい、あるいはよくこむら返りを起こすなどもあります。これらはすべて、下肢静脈瘤と言う病気の症状です。下肢静脈瘤は、足の静脈の不具合で起こります。どんな病気なのか、見ていきましょう。
足がつらい以外にもこんな症状があります
下肢静脈瘤の症状には以下のようなものがあります。
① 血管が浮き上がって見える
- ・青い筋のように盛り上がる
- ・蜘蛛の巣のように赤黒く浮き出る
- ・こぶのようにふくらむ
- ・網の目のように浮き出る
② 見えない症状
- ・むくむ
- ・だるい
- ・よくつる、こむら返りを繰り返す
- ・足が痛む
- ・足がほてる、熱い感じ
- ・足がむずむずする、不快感
③ 皮膚の症状
- ・かゆい
- ・湿疹、皮膚炎
- ・色素沈着
- ・潰瘍
これらの症状はどうして起こるのでしょうか。
下肢静脈瘤はこうやって起こります
動脈は上水道、静脈は下水道
全身を巡っている血管は、大きく動脈と静脈に分けることができます。動脈は心臓から酸素や栄養を豊富に含んで送り出される、鮮やかに赤い血液を通します。静脈は、それらの血液が全身を巡り終わって心臓へ帰る血管です。静脈には老廃物がたっぷり含まれてどす黒い血液が流れています。
「足は第二の心臓」と言われる理由
静脈は心臓へ向かって流れますが、足から重力に逆らって血液を心臓に帰すには、足の筋肉のポンプ作用が大きな役割を担っています。足の筋肉の収縮によって、静脈は重力に逆らって血液を送り返す力を得るのです。
静脈瘤ができる理由
足から心臓へ、重力に逆らって血液が流れていける理由は、足の筋肉のポンプ作用の他に、静脈の逆流防止弁の力があります。静脈を心臓に向かって流れる血液が、重力によって下へ逆流するのを防ぎます。
この静脈の逆流防止弁が、何らかの理由で機能しなくなると、血液が上へのぼって行けずに停滞します。長期間にわたって停滞した血液が足に溜まると、少しずつ血管が増え、そして太くなり、さらにはクネクネと蛇行してこぶ状にふくれます。これが静脈瘤のできる仕組みです。
下肢静脈瘤の症状はどうして起こる?
静脈瘤は血液がただ停滞しているだけではありません。停滞している血液は心臓へ帰る、老廃物をたっぷりと含んだ血液です。先に動脈=上水道、静脈=下水道と言いましたが、下水道がうまく流れなくなるとどうなるでしょうか。
静脈瘤の中には、老廃物が溜まります。また足の血流自体が悪くなるので、老廃物がスムーズに流れて行かなくなってしまいます。そのため、むくみやだるさが起こるのです。足がよくつる(こむら返り)が起こるのも、老廃物の影響です。
足全体の血液の巡りが悪くなるので、皮膚炎も起こりやすくなります。かゆみや湿疹、炎症ができ、悪化して潰瘍もできるようになります。
下肢静脈瘤は生活の質を低下させます。
専門医を受診しましょう
下肢静脈瘤は、良性の病気なので、突然悪化して命を危険に晒すような病気ではありません。こぶが破裂することもありませんし、静脈瘤の中で血栓ができる、さらにその血栓が脳や心臓で梗塞を起こすわけでもありません。エコノミークラス症候群とも異なる病気です。
しかし、命の危険がないからと言って、放置しておいて良い病気ではありません。足のだるさやこむら返りが頻繁に起こるようになると、生活の質(QOL)が目立って低下してしまいます。
下肢静脈瘤による皮膚炎は繰り返して起こり、治り切らずに悪化して行きます。細菌に対する抵抗力も弱まり、皮膚炎や潰瘍の範囲も広がって行きます。これらも、下肢静脈瘤を治療しなければ治らない症状です。
下肢静脈瘤は、重篤な進行はしませんが、とてもつらい病気です。症状が思い当たる場合は、早めに下肢静脈瘤の専門医あるいは心臓血管外科を受診しましょう。