整形外科専門医
「骨折の治療」だけではなく、骨粗鬆症治療という「骨折の予防」にも力を入れている整形外科専門医
2018/01/31
西嶋整形外科医院
西嶋 達也 院長
Tatsuya Nishijima
- 日本整形外科学会専門医
- 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
- 日本整形外科学会認定スポーツ医
- 日本骨粗鬆症学会認定医
- 経歴
- 平成15年3月 宮崎大学医学部卒業
- 平成16年5月 卒後臨床研修(佐世保共済病院、九州大学病院)
- 平成18年4月 九州大学整形外科教室入局、九州大学病院整形外科勤務
- 平成19年4月 別府医療センター整形外科勤務
- 平成20年4月 潤和会記念病院整形外科勤務
- 平成21年4月 山口赤十字病院整形外科勤務
- 平成23年4月 九州医療センター整形外科勤務
- 平成24年4月 九州厚生年金病院(現JCHO九州病院)整形外科医長
- 平成28年4月 西嶋整形外科医院勤務
- 平成29年4月 西嶋整形外科医院院長就任
骨折の原因はさまざまです
骨折とは、骨が折れたり、ひびが入ったりすることを言いますが、その原因は、
- ・外傷(ケガ、衝撃)
- ・過度の運動
- ・病気
の3つです。
外傷は、体の外から力が加わって起こります。転倒や打撲、交通事故などで起こりやすく、骨折の原因のほとんどは外傷によって起こっています。
過度の運動で骨折が起きることは、想像しにくいかもしれませんが、小さな負荷が同じ個所に何度も何度も繰り返し加えられることで起こる骨折を指し、「疲労骨折」とも呼ばれるものです。
病気によって骨折が起こりやすくなることもあります。骨髄炎と言って、骨髄が細菌に感染して骨がもろくなる、がんが骨に転移して骨が弱くなるなどの他に、骨粗鬆症という病気によっても骨折が起こりやすくなります。
骨粗鬆症を知っていますか?
日本人の10人に1人が骨粗鬆症?
骨粗鬆症とは、骨の密度が低下してスカスカになり、骨の強度が落ちて弱くなってしまう病気です。日本国内では全人口の1割程度、約1100万人の患者さんがいると見積もられています。骨粗鬆症にかかりやすい状態の予備軍の人も含めると、2000万人を超えると考えられています。日本だけでなく、世界的にも患者数が多く、人類が最もかかりやすい病気の1つに数えられています。
骨の構造と骨代謝
骨は表面を硬い「皮質骨(ひしつこつ)」に囲まれ、中は固い網目状のスポンジのような「海綿骨(かいめんこつ)」が詰まっています。海綿骨の隙間には骨髄が入っており、血液を作る役目を担っています。
このような構造の骨は、一度作られると一生そのままかと考えられがちですがそうではなく、骨代謝という骨の新陳代謝によって、古い骨の破壊と吸収(骨吸収)が行われ、新しい骨が作られ(骨形成)続けています。このようにして、年間に2~3割ほどの骨が、新しく入れ替わっているのです。
骨粗鬆症は、この骨の代謝のバランスが崩れ、古い骨の破壊と吸収は進むのに、新しい骨が作られず、「骨量(こつりょう)」と呼ばれる骨の質と強度が低下してしまっている状態です。
閉経後の女性は特に注意が必要です
骨粗鬆症になる原因はいくつかあり、運動不足や喫煙、過度の飲酒や栄養の偏り、特定の病気や薬の副作用、体質や遺伝の影響もあります。しかし、一番多い原因は加齢であり、特に閉経後の女性は要注意です。
骨粗鬆症の患者さんの3分の2以上は女性の患者さんが占めており、50歳以上の女性の3人に1人が骨粗鬆症になっているとの報告があるほどです。これは、女性のホルモンバランスが骨量に大きく影響しているからなのです。
女性ホルモンの1つエストロゲンは、骨代謝を促進する役割を持つホルモンですが、閉経に伴って分泌量が減ると、骨代謝のバランスが崩れます。骨吸収のみ進んで、骨形成が進まなくなるのです。このため、女性は閉経と同時に骨粗鬆症になりやすくなってしまうのです。
高齢者の骨折予防には骨粗鬆症治療が大切です
骨粗鬆症になると、骨が弱くもろくなるので、骨折しやすくなります。骨粗鬆症は年齢を重ねるごとにかかりやすくなる病気ですので、高齢者に多い病気です。高齢者は骨粗鬆症のために、骨折の危険にさらされてしまうことになります。
高齢者が骨折するとどのような問題が起こるのでしょうか。骨折はどの年代にとっても、行動や日常動作が制限されるものですが、高齢の患者さんにとって骨折は、要介護や寝たきりに直結して、生活の質を大きく低下させるものになります。
高齢者の寝たきりの原因の第3位には転倒による骨折です。また、要介護状態になる原因の1割ほどを骨折と転倒が占めており、高齢者の生活や活動を維持して、質を低下させないために、骨折を予防することはとても大切なことなのです。
さらに、骨折を予防するためには、骨折の原因となりやすい骨粗鬆症の治療を受けること、骨粗鬆症にならないように予防することも効果的と言えます。
骨粗鬆症は検査でわかります
骨粗鬆症はこんな検査を受けることで、罹患の有無や進行の程度を調べることができます。
①骨密度の測定
骨の強さである骨密度を測定し、骨粗鬆症がどの程度進んでいるのかを調べます。
②X線検査
骨折の有無だけでなく、骨内部がスカスカになっていないかどうかも調べることができます。
③身長測定
骨が弱くなると身長は少しずつ縮んでいきますので、その変化を調べます。身長の低下が大きい人ほど、骨折しやすいことがわかっています。
④血液検査と尿検査
骨代謝の様子やバランスがわかります。
骨粗鬆症の治療は食事療法と運動療法が中心です
・食事療法
骨粗鬆症の進行を防ぎ、予防にも効果的なのは、骨を作る栄養素であるカルシウムやたんぱく質、骨代謝に必要な栄養素である、ビタミンDやKなどを十分に摂取することです。一日の摂取目安は、カルシウムが700~800㎎、タンパク質が体重1㎏あたり0.8g、ビタミンDが400~800μg、ビタミンKが250~300μgです。
高齢者はたんぱく質が不足しがちなため、意識して食事に取り入れることが重要です。また、カルシウムとビタミンDは一緒に摂取すると、カルシウムの吸収率が上がる、タンパク質を十分に摂取している人の体は、カルシウムの働きが活発になる、などもありますので、食べ方や組み合わせにも工夫すると、効果的に治療することができます。
また、アルコールやコーヒーなどに含まれるカフェインは、カルシウムを体外に排出する働きがありますので、過剰摂取は控えましょう。加工食品に多く含まれるリンも、摂りすぎると骨密度が低下しますので、注意が必要です。
・運動療法
適度な運動は、骨を丈夫にし、筋肉が増えることで体をしっかりと支えられるようになりますので、転倒防止にもつながります。運動と言っても激しいものである必要はなく、ウォーキングや水泳、水中ウォーキングやランニングなどの軽めの運動を、少し息が上がる程度で、1日に30分以上行えると良いでしょう。
薬物療法も行います
骨粗鬆症の症状が進み、食事療法や運動療法だけでは効果が上がりにくい場合は、薬物療法も行います。骨代謝に関する薬では、古い骨の吸収を抑制する薬や、骨形成を助ける薬などを用います。
他には、カルシウムの吸収を良くする薬や、必要なビタミンを補うためのビタミン剤、減少したことで骨が弱くなった女性ホルモンを補う薬、副甲状腺ホルモンという骨形成を行うホルモンを注射して、骨形成を行う薬などがあります。
骨粗鬆症は予防が大切です
高齢者の生活を困難にし、生活の質を大きく低下させてしまう骨折は、骨粗鬆症を治療することで防げることが増えますが、骨粗鬆症は予防が大切な病気でもあるのです。治療として行われる食事療法ですが、普段から気を付けて必要な栄養素をメニューに取り入れることで、骨密度の低下を妨げることができます。
運動はとにかく続けることが大切です。つらいと思わずに済む程度の軽い運動を、週に3回以上を目標に続けてみましょう。好きなスポーツをする仲間を見つけることも、モチベーションの維持に効果的です。
整形外科専門医というと、骨折の治療を思い浮かべることも多いかと思いますが、当院ではそれよりも大切ともいえる「骨折の予防」を重視しています。骨粗鬆症は、早期に対策をすることで、高齢になってからの生活を生き生きと維持できる病気です。閉経を迎えた女性は、ぜひ一度、骨密度検査を受けにご来院ください。