睡眠医療認定医
睡眠をとおしてこころと体の健康を回復するために、患者様に寄り添う医療を目指し、眠りとこころの問題をトータルに解決へ導く「睡眠医療認定医」
2017/12/21
- 経歴
- 昭和35年 北九州市生まれ
- 昭和61年 佐賀医科大学 卒業 久留米大学精神神経科に入局し、睡眠を研究
- 平成5年 久留米大学 医学博士号 取得 小嶺江藤病院 勤務(のち副院長就任)
- 平成15年9月 地元小倉にて「有吉祐睡眠クリニック」を開業
眠りの悩みはさまざまです
眠りの悩みというと、「眠りたいのに眠れない(不眠症)」が真っ先に思い浮かぶと思いますが、他にも「日中強い眠気に襲われる(過眠症)」「眠っている間に暴れてしまう(REM睡眠行動障害)」などさまざまです。
今回はその中でも患者さんの悩みで特に多い、①「不眠症〜睡眠薬のやめ方」②「過眠症〜居眠りするので困っている」③「リズム障害〜朝起きれなくて(起床困難)困っている 」について解説しましょう。
不眠症〜睡眠薬のやめ方
不眠症とは
不眠症は、正しくは「不眠障害」という疾患です。適切な睡眠環境にいるにも関わらず、眠れずに、日中の活動を損なっている状態を指します。一般成人の1/5が不眠の悩みを抱えているとも言われ、眠りに関する悩みの中では最もポピュラーです。
原因
眠ることにこだわりすぎる「神経質性不眠症」が典型的な不眠症ですが、他にもうつ状態などの精神疾患に伴う不眠やむずむず脚症候群や周期性四肢運動障害などに伴う不眠など原因は様々です。
不眠症治療
不眠症の治療は、まずは「睡眠衛生指導」が基本になります。そのためにも、その人の生活習慣や考え方をいかに詳しく把握するかが重要です。その上で、日中ゴロゴロして過ごすのをやめさせたり、ベッドタイム(寝床にいる時間)を縮めたり、様々な指導を行います。 必要であれば薬物治療を行いますが、当院ではカウンセリングで認知行動療法も行っています。
投薬治療
不眠症の治療には、睡眠薬の他、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などが用いられることがあります。 睡眠薬には、古いタイプ(ベンゾジアゼピン系)、少し古いタイプ(非ベンゾジアゼピン系)、新しいタイプ(メラトニン系とオレキシン系)があります。
認知行動療法
薬を減らしていくためにも、あるいは、薬を使わない治療法として、不眠症に効果的な治療法です。当クリニックでは臨床心理士が行っており、ただ治すだけでなく、再発しにくいというメリットもあります。
睡眠薬のやめ方
大事なポイントは、睡眠薬にはやめやすい薬とやめにくい薬があるということです。古いタイプよりも少し古いタイプがやめやすく、新しいタイプが最もやめやすいと覚えておいてください。 ですから、初めて睡眠薬を飲むときはなるべく新しいタイプから試すこと。新しいタイプは効きはマイルドですが、古いタイプのように効果が強烈だとやめにくいのです。 長く古いタイプに頼って寝てきた人は、私が提唱する「アドオン漸減法」がオススメです。今まで飲んできた睡眠薬により新しいタイプを必ず上乗せ(ここが重要)して、その後に少しずつ(ここが重要)古いタイプを減らしていきます。最大減量幅は25%!焦らずゆっくりで構いません。もし、アドオン漸減法を使わない場合でも、古いタイプの睡眠薬は少しずつ減らしていくことが基本ですので忘れないでください。 新しいタイプの睡眠薬のみで眠れるようになったら、睡眠薬からの卒業を目指しましょう。
過眠症〜居眠りするので困っている
過眠症
過眠症には「長時間寝すぎてしまう」タイプと、「日中眠くなる」タイプがありますが、ほとんどが後者です。原因は、ほとんどが寝不足です。日本人は睡眠にあてる時間が少なく、高校生や働き盛りの人たちは、5〜6時間も寝れば十分といった誤った認識を持っている人が多いようです。昼間に眠気を感じる人は、せめて7時間は寝ておくことをお勧めします。疾患として鑑別が重要なのは睡眠時無呼吸症候群とナルコレプシーです。(眠気をとる薬が処方できるのはこの二つの疾患だけです。)
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に何回も呼吸が止まる病気で、放っておくと生活習慣病の温床になったり、寿命が短くなってしまう恐ろしい病気です。無呼吸からの回復時に脳が目覚めてしまい、睡眠の質がとても悪くなることがあるため日中眠くなる場合があります。
ナルコレプシー
日中に場所や状況を選ばずに居眠りをしてしまう「睡眠発作」の他に、感情が高ぶった時に筋肉が脱力する「情動脱力発作」や、睡眠中に金縛りのようになる「睡眠麻痺」、寝入りばなに幻覚が見える「入眠時幻覚」が起こる病気です。有病率は0.16〜0.18%と珍しい病気です。
睡眠時間
日本人の平均睡眠時間は、先進国の中でも最も少なく、平日は7時間14分。他の主要国の平均睡眠時間は、OECDの発表では軒並み8時間20〜40分です。日頃睡眠不足の人は、長い間に「睡眠負債」と呼ばれる状態に陥っており、改善するまでに時間がかかります。これらのデータを踏まえ、まずは1ヶ月間、最低でも2週間は睡眠時間を2時間多く確保してみてください。
検査
それでも眠気に変化がみられない場合には、当院でMSLT検査という眠気の検査をします。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合にはSPO2簡易検査の後、当院に一晩泊まっていただきPSG検査を行います。
治療
睡眠時無呼吸症候群は軽症なら歯科装具で、中等症・重症ならCPAP療法(シーパップ〜経鼻的持続陽圧呼吸療法)を行います。CPAPは寝ている間、鼻につけたマスクにコンプレッサーから空気を流します。歯科装具もCPAPも共に睡眠中の気道を人工的に確保する治療法です。睡眠時無呼吸症候群の原因が、扁桃腺肥大の場合などには摘出手術を行うこともあります。 ナルコレプシーは薬物療法を行います。
リズム障害〜朝起きれなくて(起床困難)困っている
朝起きれない
最近は、朝起きれないという悩みで当院を訪れる方が急増しています。小児科であれば、「起立性調節障害」と診断するケースかもしれませんが、当院では「睡眠相後退症候群」や「適応障害」と診断することがほとんどです。多くは中学生や高校生ですが、中には20代の社会人もいます。朝目覚ましがなっても聞こえず、親が起こしに行っても全く起きてこないといいます。不登校や休職状態の方も多くいらっしゃいます。
原因
起床困難は、心因と呼ばれる心の悩みと、低血圧に代表される体の問題と、睡眠時間が遅い方にシフトしてしまっているというリズムの問題が、微妙に絡み合っています。ですから、カウンセリングでデリケートな心の悩みを扱いながら、リズムや身体症状を上手に薬物治療していく必要があります。
治療
当院は他のクリニックより多くの臨床心理士を抱えており、起床困難の方のほとんどがカウンセリングを受けておられます。その上で私がやっているのは、メラトニン受容体作動薬やアリピプラゾールを使った薬物治療、睡眠日誌や行動記録表を用いた生活改善です。特にスマホやゲームを夜いかに制限できるかが大事です。 それともう一つ、「自起き訓練」という方法にトライしてもらいます。これは、時限爆弾に見立てた目覚まし時計より先に起きなさいというミッションですが、自律訓練的なホルモンコントロールです。誰かにまたは何かに起こされるのではなく、自分で起きる時間を眠る前に強く意識することによって、まさしく自分自身を起こすのです。起きたい時間に起きやすい状態が来るようにコントロールできれば気持ちの良い目覚めが手に入るというわけです。 朝起きれない子どもは不登校になっているケースが少なくないので、「親の会」に参加してもらって親同士で悩みを打ち明けることも不安が軽減されて子どもへの接し方に変化が出てくるようです。
睡眠をとおして、こころと体の健康を回復するために患者様に寄り添う医療を目指します。
眠りに悩みを抱えている方は多く、症状も多種多様です。そのため、当クリニックでは、上記以外の多くの病気にも対応しており、全国でも数少ない「眠りのクリニック」として高度で丁寧な医療を提供いたします。
治療法も、薬物療法にとどまらず、さまざまな心理療法を取り入れて、薬物に頼りすぎない治療を行います。眠りの問題から起こる休職や不登校などにも、患者さんの職場や学校などと連携して、チーム医療で対策と再発予防に努めています。