うつの専門医インタビュー (原村メンタルクリニック)

うつ

患者さんの生活背景や環境を考え、心に寄り添った治療を行う「うつ病」の専門医

原村耕治先生

2017/07/21

MEDICALIST
INTERVIEW
50

  • シェア
  • シェア
  • LINEで送る

原村メンタルクリニック
原村耕治 院長
Koji Haramura

  • 医学博士
  • 日本精神神経学会認定精神科指導医
  • 日本精神神経学会認定精神科専門医
  • 精神保健指定医
  • 日本医師会認定産業医
経歴
  • 昭和51年 久留米大学医学部卒業
  • 昭和51年 久留米大学医学部付属病院神経精神科勤務(昭和60年3月まで)
  • 昭和52年 湯布院厚生年金病院勤務(昭和52年7月まで出向)
  • 昭和54年 久留米大学医学部脳疾患研究所勤務(昭和55年9月まで、兼務)
  • 昭和60年 中村病院副院長就任
  • 昭和60年 久留米大学医学部非常勤講師(昭和62年3月まで)
  • 昭和63年 福岡県私設病院協会看護専門学校講師(平成11年3月まで)
  • 平成 4年 相和会中村病院院長就任
  • 平成20年 原村メンタルクリニック開設(平成20年6月オープン)

誰にとっても身近な「うつ病」

誰にとっても身近な「うつ病」

当院には主にうつ、統合失調症、不安性障害(パニック、社会不安障害)、注意欠陥多動性障害などの発達障害、認知症の方が通院されていますがうつ病あるいはうつ状態の方が60~70%です。

日本の自殺者数は、長い間2万3千人前後でありましたが98年に3万人を超え、その後も3万3千人前後で推移しています。 福岡市でも同様で、97年の250人から98年には344人へと急増、 その後300人台で推移しています。 内訳を見ますと、特に中高年男性の自殺が急増しています。 一方、自殺者の大半がうつ病だったことが分かっています。

長引く不況、企業における経営効率の追求、情報化による労働の質・内容の変化、終身雇用制の崩壊など労働環境に大きな変化がみられ、 職場ストレスが増大しており、「強い不安、悩み、ストレス」を持つ労働者の比率が急速に増加していますが、働き盛りの中高年男生にはストレスフルで受難の時代といえます。 うつ病や自殺者数の増加と無関係ではないと思われます。

うつ病は心のSOSが身体に現れます。

うつ病は心のSOSが身体に現れます。

うつ病では
「気分が沈んで晴れ晴れしない」
「何となく憂うつ」
「笑えない」といった感情障害と、
「意欲がわかない」
「元気が出ない」
「何事にもおっくうで何もしたくない」
「人と話すのも億劫で、人と会いたくない」という意欲障害と、
「頭の回転が悪くなり理解力、判断力、決断力、集中力が低下した」
などの思考の渋滞や神活動の鈍化、さらに「今まで楽しんでやっていたことが楽しめない」といった興味の喪失などの精神症状が主体で、元気がなくなり口数も減って笑顔が消え、仕事の能率低下、ミスの増加などで周囲にも気付かれます。 「自分がつまらない存在で、生きている価値がない」などの考えが起こり自殺を考えるようになる場合もあります。 さらにこうした精神症状に 加えて倦怠感、吐き気、食欲不振、動悸、呼吸のしにくさ、頭痛、耳鳴り、めまいなど多彩な身体症状が同時多発的に起こるのが普通です。 このように、ありとあらゆる身体的自覚症状が発生するのがうつ病の特徴です。 体の病気と思い受診しても検査では異常が見当たらず、病院を転々としているケースもあります。 しかし、うつ病による身体症状はうつ病を治療しなければ改善されません。検査では異常がない、あるいは治療しても身体症状が良くならない場合は、うつ病ではないかと疑う必要があります。

現代社会はうつ病に罹りやすい環境

現代社会はうつ病に罹りやすい環境

うつ病は、几帳面な性格、生真面目な性格などうつ病になりやすい素因に、精神的過労、心理的葛藤、社会・経済的不安などの心因や身体疾患、身体的過労、出産、身体的発達過程などの身体因がストレスとなって発症すると想定されています。 つまり不安、ストレスにさらされると、情動にかかわる神経活動が活発になりセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質が過剰に放出されますが、長期化すると枯渇してしまい神経の伝達機構の調整不良が起こり、うつの諸症状が出てくると想定されています。近年の、長引く不況、企業における経営効率の追求、情報化による労働の質・内容の変化、終身雇用制の崩壊など労働環境に大きな変化がみられ、職場ストレスが増大しており 、「強い不安、悩み、ストレス」を持つ労働者の比率が急速に増加していますが、このことと近年のうつ病の増加には関連があるものと思われます。

さらに、うつ病の背景に社会不安障害、注意欠陥多動性障害などが隠れている場合があり、注目されています。社会不安障害とは、人前で何かするなどの社交的な場面で不安・緊張が異常に高まる為、そういう状況を避けるという、言わば病的な上がり症のことで、普通に人と接するだけでもストレスとなります。また、注意欠陥多動性障害では、注意集中が困難であったり優先順位がつけるのが苦手で、今やるべきことが適切に選べず物事の段取りがうまく出来ずに悩んだり、凡ミスを繰り返して叱責されたりしますが、それがストレスとなって、適応障害的にうつ状態をきたします。

うつ病は一人で悩まず気軽にご相談下さい。

うつ状態の治療には、調整不良に陥った神経活動を正常化するための薬物療法が必要ですが、どれも100%の効果を示すわけではないので適切な薬剤選択が重要です。また背景にも十分配慮して環境の調節、個人的なストレス解消法のアドバイスや認知の改善への指導なども必要となります。
また、家族や周囲の理解と支えも重要です。 うつ病は脳の病気であるという理解が必要です。病気だからこそ薬での治療が必要なのです。休職や休養を積極的にすすめることも大事です。
ご自身に関しては、うつ病の予防としてストレス対策は大事です。 日頃から頑張り過ぎてないかと自問自答してみることや、適当なストレス解消法を見つけておく、相談する人を見つけておくなど、ストレス対策を取るようにしましょう。 いずれにしても早期発見早期治療が重要ですので、心当たりの方は重症化しないよう、早めの専門医への受診をお勧めします。