内視鏡検査
誰もが気軽に検査を受けられる環境で質の高い検査を実施。近年増える大腸がんの早期発見・早期治療に尽力する「大腸内視鏡検査」の専門医
2017/04/13
- 経歴
- 1997年、北里大学医学部を卒業し日本大学医学部第3内科学教室へ入局。
内科医として、日本大学医学部付属練馬光が丘病院内科、横須賀私立市民病院消化器科、駿河台日本大学病院内科、川口市立医療センター内科にて、消化器官や肝・胆・膵の疾患および生活習慣病の診療に携わる。のち、内視鏡を自らの専門分野とし、松島病院大腸肛門病センター・松島クリニックで検査を積む。
3年にわたる修練を経て、2010年に自らの医院となる「なかじょう内科」を西武池袋線ひばりヶ丘駅前に開院した。
患者が検査を受けやすい環境づくりや診療フローの確立にも積極的に取り組み、現在、大腸内視鏡検査の症例数はのべ1万件以上を数える。
研鑽のなかで専門分野へ。国内トップレベルのクリニックで技術を修練した内視鏡専門医
私が内視鏡を専門にし、大腸内視鏡検査に注力してきたきっかけは、ふたつあります。まずは北里大学医学部時代。もう20年以上が経ちますが、当時、憧れていたのが救急外科医で、先生に救急医療についていろいろと尋ねていた時期がありました。そのとき言われたのが自分の専門をまず持つべきということ。このアドバイスが心の中に残りました。結果的には、勉強を重ねるうちに、診断技術の奥深さに感銘を受け、外科医から内科医をめざすようになるのですが、将来は何がしかの専門を、という意識を常に持つように。そこから、内科医となり研鑽を積み感じたのが、より患者さんの健康に寄り添える診療技術を磨きたいということ。日本大学医学部付属練馬光が丘病院などの大学病院とその関連総合病院で診療に携わり丁度10年。節目の時期で、医師として今後極めていくべき分野はと考えた時、思い至ったのが内視鏡でした。
そうして、当院開院まで技術を磨いたのが神奈川県にある松島病院大腸肛門病センターです。大腸内視鏡検査症例数において日本一を誇るクリニックであり、約3年にわたる修練の日々は私の基盤となっています。
また、同院では、質の高い検査はもとより、如何に患者さんに負担がない検査を行うか?も重要視していて、当院でも積極的に取り組んできました。
現在、開院して7年が経ち、年間の平均症例数は約1,800件を数えます。多くの患者さんが内視鏡検査で来院され、ありがたく感じるとともに、これからも一層の責任を持ち注力していきたいと思っています。
“苦手な検査”を相談しやすく、受けやすく
一般的に食道・胃・十二指腸を診る上部内視鏡、そして大腸内視鏡にしても、内視鏡は“つらい”というイメージがある検査だと思われます。特に大腸内視鏡においては特にその傾向があるようで、加えてどのクリニックに行けばいいのか?と、わからない方も少なくないようです。当院はそういったイメージを払拭し、できるだけ患者さんが気軽に検査を受けられるような環境づくりを行っています。
さまざまな方々が往来する駅前にクリニックを構えたのもその理由からで、またより多くの方に少しでも内視鏡は大切な検査だと知っていただけるよう、一般内科診療も実施しながら、患者さん誰しもが気軽に相談できるようにしています。
この気軽で、かつスムーズに検査を受けられる土壌づくりというのは、内視鏡検査において非常に重要であると私は考えます。なぜなら大腸がんをはじめ、大腸の病気は、近年で増加傾向にあるからです。
知っておきたい大腸の病気とがんの知識
まずがん以外の腸の病気のお話からすれば、患者さんが増えているのが「炎症性腸疾患」。このなかにいくつかの病気がありますが、代表的なのは非特異的炎症腸疾患というグループの「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」。特に後者は増加傾向にあり、若い方では20代の患者さんも見られます。長い間下痢や血便がつづく難病です。
そして、大腸がん。がんのなかでも死亡率は高く、男性は肺がん、胃がんに次ぎ第3位、女性は第1位です。年間罹患数も増加傾向にあり、なかでも、大腸の「結腸(S状結腸)」という部位に発症する結腸がんが多い。ただ、女性の死亡率の高さについては、性別によるものではなく、進行した状態で発見されやすいということ。内視鏡の受診率が男性よりも少ない傾向にあることを鑑みれば、おそらく家事や育児などでなかなか検査を受ける機会がなかったり、または苦手意識の強さから躊躇してしまう方も少なくないのではと推測されます。
しかし一方で、大腸がんそして非特異的炎症腸疾患も、残念ながら原因はまだ解明されていない病気です。食の欧米化により、普段の食事が高脂肪食や高たんぱく食、または低繊維食傾向になり、欧米人に比べ長い日本人の腸に悪影響を与えていると指摘されていますが・・・、しかし、例えば胃がんのピロリ菌除去のように、食事の改善がリスク低下に確実につながることが明らかなわけではありませんし、また、現代において肉料理や欧米食を一切控えるというのも非現実的。だからこそ、検査が重要になるのです。
大腸ポリープと大腸がんの関係は?
大腸内視鏡のお話の前に説明しておきたいのが、大腸がんはさまざまながんのなかで唯一、がん発症以前に発見・治療できるがんだということ。どういうことかといえば、大腸がんは、腸内に発症した大腸ポリープががん化した状態。つまり、大腸ポリープ=大腸がんの可能性で、ポリープの段階で切除すればがんは発症せず、また発症したとしても早期であればほぼ完治が可能だからです。ただ、あらゆるケースですぐ切除すればよいということではありませんが、大腸ポリープの多くはゆくゆくがん化する「大腸腺腫」ですから、見つかった場合、総じて注意が必要となります。
大腸がんになるまでにはタイムリミットがある
大腸腺腫ががん化する過程を見ると、腺腫は徐々に成長しあるタイミングで遺伝子変異などが起こりがんに至ります。
つまり、「腺腫の成長=がんリスクの高まり」であり、5㎜以下の腺腫でがんが見られることはほぼなく、発見されるのは主に10㎜以上。逆算すれば、“5㎜の猶予”があるわけですが、腺腫の成長速度は年間およそ1㎜ないし2㎜であり、進行速度が遅い場合、がん発症までには約5年を要します。腺腫が内視鏡で発見された場合、この期間内で切除することが肝心です。
このお話からわかるように、がんになるかどうかは予測がつき、一度受診すれば次のスケジュールを立てることができます。そういった意味では、患者さんにとって、大腸内視鏡は実は受けやすい検査でもあるのです。
一人ひとりの大腸環境を読み解く、専門医の検査テクニック
検査の流れを説明すると、「食事制限と下剤の服用」→「大腸洗浄液の服用」→「内視鏡検査」となります。よく下剤とその次の洗浄液を一緒のものと思われている方もいるようですが別もので、洗浄液は内視鏡で確認しやすくするために飲んでいただく薬。腸に留まっている便を洗い流す役割があります。下剤は検査前日に自宅で、洗浄液は自宅または検査当日の院内で服用していただきます。
患者さんにとって負担、苦痛を伴わない検査を突き詰めていくと、最終的に立ちふさがるのがこの洗浄液の存在です。粉末状の薬を水に溶かして、約2ℓ服用していただくのが一般的ですが、服用がつらいという声がままあり、ぜんぶ飲むことができず検査を受けられなかったというケースもあると耳にします。しかし、「如何に腸を綺麗な状態にしておくか」は、検査精度に直結することですから、当院では、さまざまな工夫を行っています。例えば、下剤の増量が問題ないようであれば多めの量を服用してもらう、あるいは浣腸や水による腸内洗浄を行うなど、洗浄液の服用量を減らしても、最適な検査環境が整えられるようにしています。また、洗浄液にしても、手軽に服用できる錠剤タイプや服用量が少なくてすむ原液タイプなど、最近はさまざまな種類がありますので、患者さんの状態や要望に合わせて適宜ご提案しています。
検査時の当院の特色では、「適した内視鏡の選択」、「鎮静剤の使用」、「内視鏡の挿入スピード」です。
適した内視鏡というのは、患者さんの腸に最適なサイズの内視鏡を用いること。事前診察で患者さんのステータス、例えば痩せ型か肥満体か、排便回数はどのくらいか、腹部の手術経験の有無などを総合的に鑑み、腸の長さが通常よりも長いか否か、または腸が癒着していないか否かを判断して、適した内視鏡を選択していきます。こういった取り組みは大きな特色といってもいいと思いますね。
次に鎮静剤の使用。患者さんの不安や苦痛を感じにくくするためのもので、“こんなにスムーズな検査だったのか”と、驚かれる方もいらっしゃいます。ただ、これは検査時のみのメリットを考えてのことではありません。やはり患者さんの意識が大腸内視鏡の受診率に大きく関わりますので、「これなら定期的に受けられる」という意識を持っていただくためにも使用しています。そして、挿入スピード。これは負担軽減にもつながることですが、より正確に診断を行うために求められる技術です。挿入が遅くなればなるほど、患者さんの負担も大きくなる。そしてその大きさに反比例して診断時間は短くなってしまう。検査自体は、挿入からおおよそ10分〜15分が目安となりますが、挿入時間の差分を診断にあて、ヒダの裏側など観察しにくい部分もしっかりと診ていく。ここに専門医ならではの技術があります。
受けようと思う一人ひとりの意識が大腸がんを撲滅していく
今、大腸内視鏡に興味があったり、検討されている方がいるとすれば、おそらく会社や市区町村で実施されている大腸がん検診を受けた方であると思います。そして、内視鏡検査は任意ですから、なかには受けるかどうしようかと考えている方もいるかもしれません。
そこでお伝えしたいのが検診で行われる便潜血検査はあくまでも大腸がんのリスク判定であるということ。腺腫ないしがんがある状態で排便すると患部がこすれ出血しやすいので、2日間の便を採取してもらい判定するのが便潜血ですが、陰性×陰性でもまれに大腸がんである場合はありますし、陽性×陽性でも痔などによる影響で、大腸腺腫やがんがないことも。なので、大腸の病気にはっきり診断をつけ、がんの有無を知るには内視鏡が不可欠です。大腸がん検診の対象になる40歳以上の方、または大腸がんを患った親族がいらっしゃる方は、ぜひ便潜血検査を機会に内視鏡を受診するという意識を持っていただきたいと思います。
そういった意識が広まれば、がんになる患者さんは減少し、またたとえがんであっても完治しやすい状態で治療を受けられる。途中でもお話ししましたが・・・、大腸がんは腺腫の状態で治療でき早期であるほど完治しやすい病気ですから、患者さん一人ひとりの意識で罹患数や死亡率を減少できるがんです。私ども専門医も受けやすい検査環境の確立に日々取り組んでいます。ぜひご相談ください。