喘息(咳)の専門医インタビュー (江北ファミリークリニック)

喘息(咳)

的確な診断と幅広い治療法で 長く引くせきを快方へ導く「せき外来」の専門医

杉村 久理先生

2017/04/14

MEDICALIST
INTERVIEW
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江北ファミリークリニック
杉村 久理 院長
Hisamichi Sugimura

  • 日本救急医学会専門医
  • 労働衛生コンサルタント
  • 日本産業衛生学会指導医
  • 日本プライマリ・ケア連合学会 指導医
  • 医学博士号
経歴
  • 産業医科大学医学部 卒業
  • 順天堂大学医学部公衆衛生学教室 研究員
  • McGill University Occupational Health 留学
  • 東京女子医科大学病院 救命救急センター勤務
  • 医療法人好和会コーワ病院(現 医療法人社団けいせい会 東京北部病院) 外科
  • 東京女子医科大学第二病院(現 東京女子医科大学東医療センター) 救急医療センター
  • 産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室
  • 株)アイ・ティ・フロンティア (産業医)
  • 医療法人ひかり会パーク病院 内科
  • 江北ファミリークリニック開業

救命救急医・産業医の経験を持つ医師が地域のプライマリ・ケアとせき外来に取り組むクリニック

江北ファミリークリニックは内科、アレルギー科、小児科を診療科目とする街のクリニックです。2014年の7月の開業以来、地域のお子さんから高齢者の方まで、幅広い患者さんに来院いただいています。3年目を向かえる現在、「ここに来ると安心する」といっていただける患者さんがいるほど、皆さまに親しまれる存在になってまいりました。私は救命救急医、産業医としての勤務経験を持ち、幅広い診療対応が可能です。患者さんがいつも最初に相談いただけるプライマリ・ケアをおこなう医療機関として、これからも地域に貢献していきたいと考えています。

また当クリニックはせきに関する総合的な診断と治療をおこなう「せき外来」としても機能しています。ぜんそくをはじめ、さまざまな原因で起こるせきに対して、患者さん一人ひとりの症状にあった治療をおこない、高い治療効果を上げています。

アレルギー、感染症、長引くせきの原因は?

当クリニックに来院する患者さんの約6割がせきを主訴とする患者さんです。しかし、一口にせきといってもその原因はさまざまです。そのため診断はいくつものポイントを検討しておこなっていかなければなりません。

近年多いのがアレルギー症状によるせきの患者さんです。せきぜんそくの他にアトピー性咳嗽もこれにあたり、住まいや学校、勤務先など日常生活を送る場所の状況によってせきが出る場合があります。ハウスダストと呼ばれるチリ、カビ、ダニやペットの毛などが混ざった目に見えないほど小さなホコリが原因であったり、花粉によるアレルギーも増えています。

また、せきにたんが絡む場合は、風邪やインフルエンザなどウイルスや細菌による感染症の可能性が高くなります。肺炎や気管支炎へと悪化する場合も多く、たんが黄色かったり、どろどろと粘りけがあったりして、これらの疾患が疑われる場合は、抗生物質を用いた早めの治療を必要とするケースも多いです。 またせきには肺や気管支に原因があるものばかりではなく、逆流性食道炎や副鼻腔炎によってせきが出る例もあります。患者さんに十分な問診、聴診、触診をおこなうと共に、呼吸機能検査、レントゲン、超音波診断装置などの検査機器を用いて総合的に判断し、疾患を鑑別していく必要があります。

未だにはっきりした定義ができていないぜんそく

長引くせきといって誰もが思い出すのがぜんそくです。しかし、ぜんそくはこれほど広く知られていながら現在でも明確な定義ができていない病気でもあります。それはぜんそくの原因が、アレルギーであったり、喫煙であったり、あるいは心因性であったり、さらには正確な原因がわからなかったりとさまざまで、確定的な診断が非常に難しい病気だからです。

子どものころにかかる小児ぜんそくは、その大半がアレルギー性と考えられていて、成長とともに症状がおさまっていき、小学校の卒業時には8割程度の子どもが回復します。

一方、年齢に関係なく発症する気管支ぜんそく、せきぜんそくは、さまざまな原因によって起こりますが、完全に治るということはほとんど無く、薬を使わなくても発作が起こらないという状態を継続することが目標となります。

小さな子どもや高齢者にぜんそくが起こった場合に影響が大きいことから、体力の弱い人に起こる病気だと誤解されがちです。しかし、スピードスケートや水泳などオリンピックメダリストのアスリートにもぜんそくの人がいるように、年齢や体力に全く関係なく起こる病気なのです。

ぜんそくは多大なストレスなどメンタルな原因でも起こる

また、ぜんそくには前述のとおりアレルギーや感染症ではなく心因性のものもあります。「せきが続くので」と当クリニックに来院される患者さんの中にも、検査結果から判断するとぜんそくなのに、通常のぜんそくの治療薬を使っても改善されないという患者さんがいらっしゃいます。そんな場合私は心因性のぜんそくを疑い、患者さんと深くコミュニケーションを取り、生活や仕事の上での不安などがないかもたずねるようにしています。実はせきの他にも夜よく眠れていない、新しい環境で不安があるなど、その人が感じている大きなストレスが原因でぜんそくの症状を引き起こしている場合もあるのです。

その患者さんに最も合った治療法を見つける「せき外来」

このように、せきは十人の患者さんがいれば十人の症状があるといえるほどさまざまです。当クリニックの目的はさまざまなせきの症状に関してその患者さんに最も合った治療法をいち早く見つけ、的確にそれを実践していくことにあります。

例えば気管支ぜんそくを治療する場合、その患者さんの重症度によって、治療薬を選定していきます。通常、気管支拡張剤とステロイド剤を合わせた吸入剤を使用しますが、患者さんの症状によって薬剤の種類や量を変えて治療します。この薬剤の組み合わせで治療効果が変わることがあり、ぜんそくがなかなか改善しなかった患者さんが当クリニックでの治療で症状が安定した例も少なくありません。そのためにも発作の状況や、薬の使用後の経過などを聞き、患者さんとの十分なコミュニケーションによって治療法を随時改善していく必要があるのです。

ステロイド剤については、感染症にかかりやすくなる、骨がもろくなる、太るなどの大きな副作用を心配される患者さんもいらっしゃいます。しかしこれらの副作用は注射薬や内服薬によるものが多く、ぜんそくの治療に使用するステロイド剤は吸入剤で呼吸器にしか影響せず、副作用は十分抑制されています。治療の際、不安を感じられる患者さんにはその内容をしっかり説明してご納得いただいた上で処方しています。患者さんが治療法をよく理解して治療に取り組んでいただくことが、何よりも効果的なのです。

発作がおさまった=治ったではない。ぜんそくの継続治療の必要性

また、ぜんそくの治療で重要なのが処方に従って必ず用法用量を守って薬を使用し、継続して治療をおこなうということです。発作が起きなくても予防的に薬を使用することで、ぜんそくの症状を抑え続ける必要があるのです。重症の場合、薬の投与により発作などの症状が治まると、3ヵ月ごとに、薬の量を減少させたり、種類をかえたりしながら治療をすすめていきます。ぜんそく治療の指標では、重症状態から治療によって発作が長期間見られない状況で投薬を止めるまでには最短でも半年ほどの治療が必要とされています。

ぜんそくの吸入剤の効果は高く、ある程度治療をすすめると発作が起こりにくくなり、患者さん本人も治ったかのように感じます。しかし、肺や気管支の中の炎症はそう簡単に消えるものではなく、薬の投与を止めると再発し、発作が長く続けばさらに炎症が重症化します。発作が止まったからといって自己判断で薬の投与を止めてしまうのはとても危険なことなのです。

待合室

心因性のぜんそくや不定愁訴にも有効な漢方薬

心因性のぜんそくには気管支拡張剤とステロイド剤を組み合わせた吸入剤が上手く効かない場合があります。また、ぜんそく以外の原因でもせきが出たり、胸苦しいなどの不定愁訴がある場合、当クリニックでは患者さんに合わせて漢方薬の処方をおこなう場合もあります。対症療法的な治療に有効な西洋医学の薬に対して、人が本来持っている自然治癒力の向上を促すのが漢方薬です。

例えば当クリニックでは、ストレスによってぜんそく症状が出ていた患者さんに半夏厚朴湯 (はんげこうぼくとう)という漢方薬を処方し、高い効果を上げた例があります。このように西洋医学の治療法ではなかなか効果を得られない症状に対して、漢方薬が使えるのも当クリニックの特長です。

私は、このクリニックを開業する前にはIT企業の産業医として勤務していました。労働衛生の分野では不定愁訴への対応や心因性によるさまざまな症状に対する診断と治療もおこなってきました。その経験は当クリニックでも大いに役立っています。メンタル面の治療では漢方薬だけではなく、抗うつ剤の処方や専門の精神科医への紹介もおこなっています。せきやぜんそくにはこの心因性を含め多様な原因と症状があります。長引くせきでお困りの方は、ぜひ当クリニックの「せき外来」で受診してみてください。