頭痛
女性に多い「片頭痛」の付き合い方と危険な頭痛のサイン
2016/09/20
つぐ脳神経外科・頭痛クリニック
継 淳 院長
Atsushi Tsugu
- 日本脳神経外科学会専門医認定
- 日本頭痛学会専門医認定
- 日本頭痛学会指導医認定
- 日本がん治療認定医認定
開業のきっかけ
大学病院時代は脳神経外科で主に脳腫瘍を専門に25年間、メスを持って仕事をしてきました。
そんな傍ら、頭痛治療の権威でもある小田原の間中先生のもとで外来を担当させていただいたことがこの「頭痛クリニック」を開くきっかけとなりました。
間中先生が患者さんと接するお姿やお話をすぐ側で聞き、私自身も頭痛の患者さんを診ていく中で、これから先のイメージを持つことができたのです。
生活に支障のある片頭痛
当院は「頭痛クリニック」と掲げていることもあって、患者さんの6割が頭痛の患者さんです。
後の4割がしびれ、めまい、物忘れを気にしてこられる方がいらっしゃいます。
頭痛は大きく分けて、片頭痛や緊張型頭痛のような『はっきりとした原因がない慢性的な頭痛(一次性頭痛)』と、他の病気が要因になって起こる頭痛(二次性頭痛)』に分けられます。中でも肩こりや首こりなどから起きる“緊張型頭痛”の方が現代病として割合的には多いのですが、当院を受診されるのは圧倒的に片頭痛の患者さんが多いです。
片頭痛の方は昔から一定数いらっしゃいますが、緊張型頭痛と違って症状がきつく「仕事ができない」「家事ができない」「学校を休んでしまう」など生活に支障が出てしまい困っている方が多くいらっしゃいます。それから特徴的なのは、片頭痛は女性に多い傾向があることです。その原因の一つに女性ホルモンが大きく関わっています。
一方緊張型頭痛は肩が凝って頭が痛いけど夕方同僚と飲みに行ったら治ったというケースもありますが、片頭痛の場合はアルコールを入れたら余計悪くなってしまいます。そのような片頭痛の方のほとんどが自己流で市販薬を飲んでいると思いますが、自分の知識をブラッシュアップするという意味でも一度専門クリニックに相談してもらえればと思います。「片頭痛なんて病気じゃない」と病院に行かない方が多いのですが、少し見方を変えて薬を見直してもらうと随分と変ってくることもあると思います。最近は責任のある仕事を持っていて、会社を休めず無理して薬を飲んで紛らわしている方が多く、そういう方が薬物乱用頭痛に陥ってしまうこともあります。そうなる前にしっかり相談していただければ、しっかりとした対処をすることできます。頭痛はうまく付き合うことが大切なのです。これは月経痛と同じで自分の体の状態に耳を傾けてうまく付き合っていくことが一番重要なのです。
「頭痛日記」で自分の体を知ってもらう
当院では、頭痛日記をつけることをお勧めしています。日記をつけ始めると、「私は生理の3日前になると頭痛が起きていて、生理が始まったら治る」などという自分の体のサイクルが見えてきます。
人によってはその日の天気を書く方がいて「私の頭痛は雨でなく曇りの日に来る」ということがわかったりするケースもあります。片頭痛脳タイプの方はとても繊細で感受性が高い方が多いので、それは逆に考えると頭痛がくるタイミングがご自身でわかるすごく良い能力でもあるわけです。
その他には、「自分は夜更かしすると頭痛になる」、「寝だめしてしまうと逆に頭痛になる」というパターンもあります。頭痛日記は、これらを見ながら一ヶ月、二ヶ月経過を追って話ができその方にあったアドバイスもできます。頭痛交換日記みたいなものですね。
小・中学生の片頭痛
一方子供の頭痛は結構深刻です。このような多感な時期は片頭痛の卵のような人も多く、だんだん片頭痛になってしまうこともあるのですが、その中に紛れ込んでいるのが「自律神経失調症」のような頭痛です。起立性調節障害という一つの概念のものです。
こちらは、診断してガイドライン通りの治療をしてもなかなか良くならないことがあります。このため試行錯誤しながら診断しています。
そういった子は朝が辛くて起きることができず、そのようなことが午前中まで続き、昼過ぎに楽になって夜には正常に戻る、そんなことを繰り替えてしていくうちに夜型人間(フクロウ型人間)になってしまい、結局不登校を招いてしまいます。
そういったことで環境に潰されてしまい悪化してしまうというケースもあります。お子さんは、学校・クラブ・家庭など色々なコミュニティーに属しているので、なかなか言い出しづらいということもあると思います。そういったことを周りの人が気づいてあげて欲しいと思います。実際にすぐに治るような病気ではないので、ご家族も根気強く付き合っていく必要があります。
頭痛の種類でわかる病気のサイン
朝の頭痛で言うと、片頭痛や緊張型頭痛の他にも原因がある場合があります。モーニングヘディックとも言うのですが、その原因の1つが脳腫瘍。起き抜けに辛い、頭痛で目が覚めたというパターンです。
それともうひとつ、大人に良くある朝頭が重いという症状ですが、これは薬の飲み過ぎ「薬物乱用頭痛」が考えられます。朝型の頭痛、頭痛で目が覚める方は何らかのサインだと思いますので、このような症状が続く場合はぜひ相談に来て欲しいと思います。
クリニックでMRI検査をうけられるメリット
最近来院された患者さんのことです。自覚症状があり、他の病院でCT検査を受け異常はないと診断され日常生活に戻ったが、眩暈は取れたけれど痺れが取れないということでこちらにご相談に来られた方がいました。脳梗塞の初期はCTではわからないので撮ってみましょうと実際に診てみたら、脳梗塞が見つかりました。また、日頃頭が痛いというお子さんが、たまたま時間ができたのでとりあえず検査をしてみたら、脳腫瘍が見つかりすぐに手術することになったということもありました。
このようなケースは稀かもしれませんが、気になる時に検査を受け、すぐに結果を知ることができることがクリニックの最大のメリットだと思います。通常大学病院では、よっぽどの理由がなければMRI検査を受診当日にすぐ受けることができません。交渉して受けられることになっても、一週間先などになってしまい、理由があって検査を受けたいのにもかかわらず、その間モヤモヤしながら生活することを余儀なくされてしまいます。
開業当時、周囲からはCTでも良いのではないか、という話もありましたが、放射線被曝のことや診れる内容も異なるので、絶対にMRIを導入しようと思っていました。
開業医として頭痛を診ること
頭痛患者さんを診ていますと、時に他の病気が要因で起こる頭痛(二次性頭痛)の患者が見つかります。今では自分がやっていることは間違っていないと自信を持っていますが、一時期はこうして病気を見つけて厚木市立病院や東海大学病院に患者さんを送ったりをしている中で、自分は病気を見つけているだけではないか?と悩む時期もありました。
それは大学病院にいた頃、そのような患者さんが送られてきた時に「開業医は見つけるばかりでアフターケアもないのか」と自分自身が思っていましたから、余計に無責任かも知れないと感じたのです。ですが、今はそれぞれの役割があるからこそ、患者さんにとって最良の医療を提供できるのだと気づき今ではそれを全うしたいと思っています。すなわち、病気を早期発見して早期治療を受けさせることや、急性期治療が落ち着いた後の通院加療を継続し健康な体を取り戻すこと、病気にかからないように予防していくことが自分の役割だと思っています。
今まではメスを持って6、7時間患者さんの手術をして、次の日に患者さんの麻酔が覚めてお礼を言われることもありましたが、開業した今、自分が診断したことで患者さんから「すごく良くなった」「びっくりしました」とその場で聞くことができ、これまでの大学病院では味わえなかった喜びを感じています。開業医のメリットは、患者さんがよくなった時に「ありがとう」と直に言ってもらえることだと思います。そこが開業した今の生きがいです。このくらいなら平気だと頑張らず、自分ひとりだけで悩まずに、まずは相談に来て欲しいと思います。