糖尿病専門医インタビュー (川越豊田町クリニック)

糖尿病専門医

食事・運動療法が基本の糖尿病治療。薬剤療法は選択肢を提示し患者さんの意志を大切に!

東海林 忍先生

2017/07/28

MEDICALIST
INTERVIEW
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川越豊田町クリニック
東海林 忍 院長
Shinobu shoji

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本糖尿病学会糖尿病専門医
  • 日本医師会認定産業医
経歴
平成14年3月 日本大学医学部医学科 卒業,平成14年5月 日本大学医学部付属板橋病院 内科 研修医,平成16年4月 日本大学医学部専修医(旧第三内科)糖尿病・代謝/消化器内科,平成18年6月 板橋区医師会病院 医員,平成19年6月 日本大学医学部専修医 内科学系糖尿病代謝内科学分野,平成23年7月 内科学系糖尿病代謝内科学分野 助手,平成25年4月 内科学系糖尿病代謝内科学分野 助教,平成27年11月 川越豊田町クリニック 開設

「治す」ことを第一目標に、患者さんの日常生活を改善へと導くクリニック

「川越豊田町クリニック」は、2015年11月に一般内科と糖尿病内科を標榜するクリニックとして開業しました。私たちが目指すのは、一人ひとりの患者さんに合わせた治療をおこなうということ。徒歩20分、車なら8~9分ほどと、最寄りの川越駅からは少し離れていますが、周囲は閑静な住宅街で医療施設が少なかった状況から、安心して相談できるかかりつけ医ができたと、地域の皆さまか喜んでいただいています。

当クリニックの特徴は、糖尿病に関する専門治療が行えることと、一般内科として風邪や下痢・食あたりなど、日常的に起こる幅広い疾患に対応できることです。患者さんが「何科にかかれば良いのかわからない」と思われる症状に対しても気軽に相談いただき、地域の医療拠点として、お子さんから高齢者の方までの「プライマリケア」を担当していきたいと考えています。

今や国民病といえる糖尿病。定期的な健康診断・人間ドックで自身のリスクを知っておく

糖尿病は食事によって血液中に増加したブドウ糖(血糖)を体に取り込むインスリンの働きが悪くなり、高血糖が続いてしまう病気です。その結果、血管や神経に障害が生じ、様々な合併症を起こすとても恐ろしい病気です。近年の日本の糖尿病患者は増加傾向にあり、平成24年の厚生労働省の国民健康・栄養調査結果では、実に950万人の患者さんがいて、さらにその予備軍1100万人いるといわれています。糖尿病は今や国民病で、誰にとっても注意すべき身近な病気となってしまっているのです。

ご存知の方も多いと思いますが、糖尿病は生活習慣病の一つで、体重、BMIの変化、血糖値の上昇など、健康診断にあらわれる異常は、ご自身が糖尿病になってしまうリスクを知る上でとても重要です。勤務先や地域で受けられる健康診断の結果に注意し、異常の指摘があった場合は、体調や自覚症状の有無に関係なく、専門医に相談し、ご自身の状況、糖尿病になってしまうリスクについて知り、生活習慣の改善、治療に取り組んでいきましょう。

こんな症状が出たら注意!隠れ糖尿病が進行して重度のへと移行してしまうプロセス

このように糖尿病にならないようにするためには、まず定期的な健康診断で自分の状況をよく把握しておくことが大切です。しかし近年、健診では見つかりにくい「隠れ糖尿病」の患者さんが多くなっています。この隠れ糖尿病とは、空腹時の血糖値は正常でも、食後の血糖値が上昇してしまう軽症の糖尿病のこと。病院や健康診断での採血でわかるのは、多くの場合空腹時の血糖値です。しかし空腹時の血糖値に異常が現れるのは、糖尿病がかなり進行してから。軽症の場合は食後2~3時間程度で血糖値が上昇することが多く、健診では見つりにくい場合もあるのです。

健診で異常が見つからなくてもこんな方やこんなときには専門医の受診をおすすめします。

  • <こんな方>
  • 〇 ご家族が糖尿病の方
  • 〇 急に体重が増減した方
  • 〇 以前肥満だった方
  • 〇 ずっとやせ気味の方
  • <こんなとき>
  • 〇 食べ過ぎたとき
  • 〇 清涼飲料水を飲み過ぎたとき
  • 〇 尿の臭いや泡がきになるとき

肥満の方が糖尿病に注意するのはよくいわれることですが、実はやせ気味の方にも糖尿病の患者さんはいます。

糖尿病はすい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなり、血中から体中の細胞へ糖を取り出して送ることができなくなる病気です。日常的に食べ過ぎたり、高カロリーなものを取り過ぎることによって起こるので、初期には肥満になり、病状が進行するとやせてくるのが一般的です。しかしやせ形の人にはエネルギーを過剰摂取しても太りにくい人もいて、肥満の予兆を見ることなくそのまま糖尿病になってしまう人もいるのです。

注意すべきは「疲れやすい、だるい」「のどが乾きやすい」「就寝時に何度もトイレにいきたくなる」「尿が泡立つ、臭う」などの自覚症状が現れたときです。食事の量を変えていないのに急にやせてしまった時などは特に注意が必要です。健診で異常が無くても、早急に専門医に相談し、糖尿病に関する精密な検査を受けましょう。

食事療法、運動療法で生活習慣を改善し、血糖値のコントロールを!

当クリニックには、健診や人間ドックで異常を指摘された患者さんや、何らかの自覚症状によって「糖尿病になってしまったのでは」と心配して来られる患者さんがいらっしゃいます。そんな患者さんに対して当クリニックでは患者さんの状況を把握するために血液検査と心電図検査をおこない、患者さんそれぞれにマッチした治療法を進めていきます。

境界型糖尿病、隠れ糖尿病など、血糖値がまだそれほど高くない軽度の症状の場合は食事療法、運動療法からスタートします。また重症の場合でもすぐに薬剤治療が必要なほど病状が進行している場合を除いて基本はやはり食事療法、運動療法です。当クリニックでは管理栄養士が患者さんへの栄養指導をおこない、私が患者さんの合併症などの状態を見ながらその方にあった運動を指導していきます。
糖尿病は一度なってしまうと薬を飲めば治るという病気ではありません。血糖値を上手くコントロールして、糖尿病と上手に生活していくことに自信を持つことが大切です。

クリニック外観

患者さんの意志に応じた薬物療法を提案します。

食事療法・運動療法だけでは効果が見られない場合や、糖尿病の症状がかなり進行してしまった場合には、薬物療法も治療に取り入れていきます。

当クリニックでの治療は「患者さんの意志を尊重し十分相談して進める」ことをモットーとしています。それは薬物療法においても同様で、患者さんの状況に応じて私からいくつかの治療法に関して十分な説明をおこない、メリットやリスクを承知いただいた上で、患者さんご自身に治療法を選択いただくことにしているのです。

糖尿病の薬物療法には、インスリンを使用する場合、その他の経口剤を使用する場合があります。経口剤にもすい臓の働きを良くする薬、インスリンの効果をよくする薬、糖の吸収を抑える薬、などがあり、患者さんの症状やすい臓の機能よってその選択肢は変わってきます。食事療法・運動療法にもいえることですが、患者さんがしっかりと自分の意志をもって治療に向かうには、その治療法に納得していることが必要です。どんな薬剤を用い、どんな治療をおこなっていくのか。医師が一方的に決めるのではなく、患者さんと私とでしっかり相談して治療を進めていくのが当クリニックのスタイルなのです。

合併症への対応に必要な医療連携

糖尿病には、3大合併症と呼ばれる、神経障害、網膜症、腎症があります。また合併症の有無によって、運動療法はおこなえない場合もあります。

神経障害は高血糖状態が続くことにより手足の血行が悪くなることによって起こります。しびれや感覚が鈍ることからはじまり、悪化すると壊疽を起こして下肢を切断することもあり得ます。

網膜症はこれも血行障害によって起こる症状で、眼底の血管が詰まることで視力が低下し、最悪の場合失明します。

腎症は血液を濾過する働きをする腎臓が高血糖によってダメージを受けることによって起こり、症状が進行すると人工透析が必要になります。

このほかにも動脈硬化、心筋梗塞などを起こす血管系、肺炎、肺結核などの呼吸器系、インポテンツ、排尿障害、膀胱炎などの泌尿器系など糖尿病には多様な合併症が存在します。

当クリニックで糖尿病が見つかった場合にまず検査いただきたいのが網膜症についてです。近隣の眼科と密に連携していますので、早急な検査と経過観察、あるいは継続的な治療をおこなってください。また、人工透析、循環器などの専門医療機関ともスムーズな連携が可能です。当クリニックを中心に糖尿病の総合的な治療を受けていただけます。

完全な回復は難しいといわれている糖尿病ですが、当クリニックでは患者さんの病気を「治す」ことを目標にしています。私たちは食事療法、運動療法、薬剤療法など、あらゆる手段を用いて少しでも患者さんが健康な日常生活を取り戻せるよう、患者さんと共に歩んでいきたいと考えています。