内視鏡検査の専門医インタビュー (湘南いしぐろクリニック)

内視鏡検査

検査を身近なものに。「痛くない、こわくない、手技の差が出る内視鏡検査」

石黒 智也先生

2016/09/06

MEDICALIST
INTERVIEW
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湘南いしぐろクリニック
石黒 智也 院長
ishiguro tomoya

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • がん治療認定医
  • ピロリ菌感染症認定医
  • 日本消化管学会暫定専門医

手技の面白さに惹かれて

院長 石黒 智也

様々な診療科がある中で消化器を選んだ理由は、消化器という分野は様々な臓器があり病気の数も多く、そこを勉強することで守備範囲が拡がりより多くの患者を見ることができるのではないかと思ったからなのですが、初めて内視鏡検査を担当した時に少し変わりました。内視鏡という手技の面白さに惹かれたのです。

これまで、医者というものはただ外来をやって薬を出すだけのイメージでしたが、画面を見ながらカメラを進めていくという自分の技術が直結し結果が出るこの分野に大変興味を持ち、やりがいを感じるようになりました。それから、10年以上内視鏡を専門に検査を行っています。
大学病院時代から胃カメラでいうと3万件以上、大腸カメラは2万件以上行っています。一番忙しい時期は一人で1日40件くらいはこなすこともありました。

自分が考える最高の医療を提供したい

湘南いしぐろクリニックの受付

内視鏡専門のクリニックを立ち上げたきっかけとしては大きく2つの理由がありました。一つは、「受診のしやすさ」です。病院だと色々と手順を踏まないといけないことがあり、受診、検査予約、検査、結果を聞くまで時間も日数もかかります。胃が痛いと言って病院で検査の予約をしても、実際に受けられるのが一ヶ月後などになってしまう場合があります。スピードが大事なことを知っているので、それでは患者さんのためにならないと考えました。

自分でやれば検査時間なども含めて完結までスピーディに視ることができ、できる人数も増え、時間も自由に設定ができます。ですから、会社帰りに内視鏡を受けて帰るということも可能になります。それともう一つの理由は「最新の機器を使うことができるから」です。

医者になってから10年以上が経ちますが、思っている以上に機械は急激に変わってきています。
「より細く」「より柔らかく」「詳細な画像」を実現できる高性能なカメラが日々出てくる中で、そういった機械を使うことが患者さんの負担軽減や、診断にも良いのですが、病院にいると簡単に手に入れることができないのが現実です。

昔はバリウム検査で異常があったら胃カメラ検査を行う、という流れでしたが現在は胃カメラで随分色々なことがわかるようになりました。実際は、胃カメラは怖いからバリウムを選択される方もいるのですが、実際は技術のある人間が行うと、バリウムよりも辛くない検査が実現できます。

自覚症状がないから、辛そうだから、という理由で敬遠されがちな大腸検査

湘南いしぐろクリニックの診察室

当院には男女両方の方が来ますが、積極的に検査を受ける人は男性の方が多く、予防のために来る女性はまだまだ少ないのが現状です。「痛そう」「恥ずかしい」などやはり抵抗があるからだと思うのですが、便検査で異常が出たけど放っておいた、結果に異常が出たけど間違いかもしれないので便検査をもう一度受けたい、という人がいます。これは非常に意味がないことです。実際には病気があるのに、二回目の検査で万が一異常が出なかったらもっと不幸な結果になりますから。

日本人の女性で一番死亡率が高いのは大腸癌です。乳がんよりも多いという理由は、このような理由から検査を受けていないからなのだと思います。「便が全く出なくてお腹が張る」「血便で初めて検査を受ける」方が多いのですが、もしそれが癌だった場合、その段階では手遅れであることが多いのです。

癌になる前の腺腫であれば、検査で取ってしまうこともできますし、大腸癌でも初期であれば取って治ることもありますが、それ以上進んでしまうと腸を切る必要があります。困ったことにその初期段階ではほぼお腹の症状がないので、それを発見するには検査をしないとわからないのです。自覚症状があってからでは遅い、ということです。脅しをかけるわけではないのですが、そういった方を何人も見てきましたので、30歳を超えて大腸カメラを一回も受けたことがない人は(時々30代でも大腸癌を見つけてしまう場合もあります)自覚症状が何もなくても、一度は検査を受けて欲しいと思います。

技術と経験がモノを言う職人技。辛くないと実際に感じてもらいたい

内視鏡検査の様子

一回受けてもらえれば、「こんなに楽に受けられるんだ」と思ってもらえると思います。大腸カメラは胃カメラより難しく、技術と経験が必要です。女の人だと難しい、小柄な人や痩せている人ほど痛みが出やすい、太った人は内臓脂肪が多くて腸が動きやすいなどの様々な経験値から、大腸スコープを入れて10秒でその人の腸の形がわかります。

大腸は何箇所かビスのようなもので止められていて、そこにブラブラと腸がぶら下がっているイメージです。腸は自由に動くことができるので、それを無理に引っ張るから痛みを感じるのです。
厳密に言うと腸自体はそもそも感覚神経がなく、痛みを感じないのですが、無理に腸を押すとによって外側にぶつかり痛みが伝わります。つまり、腸の曲がり角、今カメラがどの辺りにあるかを分かっていて、腸が伸びないように内視鏡を入れる技術と感覚が非常に重要です。

そのような感覚を養うためには、内視鏡に常に触れているということも大切です。野球選手と一緒で素振りをしていないと感覚が鈍ります。私の場合、10年以上一週間触らないことはほとんどありませんでした。これまでに一度、2か月触らないことがあったのですが、その時は正直焦ってしまいました。それくらい繊細なものだと思います。

日本人は我慢強いから「痛い」と言わない方が多いのですが、一瞬のぐっとこらえる顔でわかります。

内視鏡検査室

検査をより身近なものに感じて欲しい

このように、辛いと思っていた検査がこんなに楽にできた、ということを多くの人にわかってもらい「内視鏡検査」の敷居を下げていきたいというのが願いです。現状健診では内視鏡は一緒にやらないことが多いのですが、それは内視鏡という技術が必要な検査に対してのマンパワーが足りないからなのですが、将来的にはそれをスタンダードにして、自覚症状が出たから精密検査ではなく、検査が気軽に受けられる身近なものにしていきたいと思っています。