リハビリテーション科専門医インタビュー (くろつち福岡春日リハビリテーションクリニック)

リハビリテーション科専門医

脳卒中の後遺症とリハビリ ボトックス外来や装具外来など専門性を生かした治療

井手 昇先生

2017/06/15

MEDICALIST
INTERVIEW
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くろつち福岡春日リハビリテーションクリニック
井手 昇 医師
Noboru Ide

脳卒中の後遺症「痙縮」を注射で改善する「ボトックス外来・ボツリヌス療法」

ボツリヌス療法について

脳卒中の後遺症には、麻痺とは逆に手足が突っ張る痙縮という症状もあります。 痙縮とは筋肉が緊張し、手足が動かし辛かったり、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまう状態のことです。 手足が突っ張る痙縮は、手指を開こうとしても開きにくく握ったままとなり、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状があります。 手足が突っ張る痙縮による姿勢異常が長期間続くと、筋肉が固まってしまい関節の運動が制限され、日常生活に支障をきたすことになります。また、手足が突っ張る痙縮がリハビリテーションの障害となることもあるので、その治療が重要となります。

痙縮にはボツリヌス菌の毒素を筋肉に注射するボツリヌス療法という治療があります。 ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌス毒素)を成分とするボトックスという薬を筋肉内に注射する治療法です。 ボトックスには、筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があり、ボトックスを注射すると筋肉のつっぱりを緩和させることができます。

手足のつっぱりに有効なボツリヌス療法の効果・副作用

ボツリヌス療法の効果・副作用について

ボツリヌス療法によって次のような効果が期待できます。
【1】手足の筋肉がやわらかくなり、動かしやすくなる
【2】リハビリテーションが行いやすくなる
【3】関節が固まるのを防ぐ
【4】痛みの軽減
などの効果があります。
ボツリヌス療法後、リハビリテーションと組み合わせて継続することで効果が期待できます。
副作用として、
【1】注射部位がはれる、赤くなる
【2】痛みを感じる
【3】体がだるい
などが起こることがありますので、ボツリヌス療法の実施に関しては、医師の専門的な診察が必要となります。

ボツリヌス療法の治療法

ボツリヌス療法の治療法について

ボツリヌス療法は細い針で筋肉注射を行います。 治療時間は約15分〜30分程度です。 効果は、注射後2~3日目ぐらいから徐々にあらわれ、約3~4ヵ月間持続し、数週間で徐々に効果が消えてしまうので、治療を継続する場合は、年に数回ほど注射することになります。 ただし、効果の持続期間には個人差があり、医師の専門的な診察が必要なため、医師と相談をしながら治療計画を立てていきます。 また、理学療法士が手足のつっぱりが歩行やバランス、日常生活の動作にどのように影響するかを考え治療を進めます。

ボツリヌス療法をすることによって、患者さんの痛みをとったり、麻痺している手足が動きやすくなったりすることもあります。この治療は外来診療でできる比較的安全な治療法で積極的に行っていきたいと考えています。

装具外来など専門性を生かした治療で脳卒中の後遺症「麻痺」を改善

脳卒中の後遺症として麻痺がありますが、麻痺のために自分で歩けない人でも、装具をうまく利用すれば、自分で歩けるようになる方もいます。外科からリハビリテーション科に転科してすぐ、私の恩師である渡辺英夫先生に装具についてご指導いただき、その後回復期リハビリテーション病棟で働くことが多く、脳卒中の患者さんのリハビリテーションに関わることが多かったため、脳卒中の装具については力を入れてます。また今後は、嚥下障害に対すリハビリテーション、がんのリハビリテーションや認知症予防などにも力を入れていきたいと考えてます。

「頭のてっぺんから爪先まで診れる」良質な医療

消化器・一般外科医(日本外科学会臨床認定医)からリハビリテーションビリテーション専門医を取得したため、幅広い病気の知識をもとに障害のある患者さんの機能改善、社会復帰をお手伝いさせていただきたいと考えてます。

私は、消化器・一般外科医として手術に追われる日々を送っていました。
某国立病院での勤務で、重症患者さんの緊急手術を何例も行っていたころ、手術は成功しても、術後重症のため廃用症候群となり、寝たきりになったり、また気管切開術後のため、嚥下機能低下となり、口から食事をとることが出来なくなる患者さんもたくさんいました。
命は助かっても、患者さんのQOLは低く、元気に自宅に帰ることができず、施設に入所せざるを得ない方もいらっしゃいました。ある日私が食道裂孔ヘルニアの患者さんの緊急手術をしたことがありました。手術は成功しましたが、術後呼吸不全になり、やはり気管切開を行い、中心静脈栄養にて管理していました。
全身状態は落ち着いたのですが、廃用症候群にて寝たきりとなり、経口摂取が出来なくなりました。
そのころ私はリハビリテーションに対する知識があまりなく、術後カンファレンスで先輩から嚥下訓練をリハビリテーション部に依頼するように指導されました。それから、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションが開始され、歩行はもちろん、食事、会話もできるようになりました。その後もしばらく外科医として働きましたが、やはり医師として病気だけを診るより、病気を通して患者さんの生活までみるリハビリテーション科に転科することを決めました。
疾患は脳血管障害から整形疾患、がんまで幅広く見れるように勉強しているつもりです。