歯周病の専門医インタビュー (武井歯科医院)

歯周病

歯周病治療を軸に、患者様の歯をいかに保存するかを考える歯周病専門医

武井 宣暁先生

2017/08/01

MEDICALIST
INTERVIEW
57

  • シェア
  • シェア
  • LINEで送る

武井歯科医院
武井 宣暁 院長
Noriaki Takei

  • 日本歯周病学会 歯周病専門医
  • 日本臨床歯周病学会 会員
  • アメリカ歯周病学会 インターナショナルメンバー
  • ITI(International Team for Implantology)メンバー
経歴
  • 平成12年 土佐高等学校 卒業、九州大学歯学部 入学
  • 平成18年 九州大学歯学部 卒業、九州大学病院口腔総合診療科および船越歯科歯周病研究所に臨床研修医として勤務
  • 平成19年 船越歯科歯周病研究所 勤務
  • 平成23年 日本歯周病学会 歯周病認定医 取得
  • 平成25年 日本歯周病学会 歯周病専門医 取得
  • 平成29年 船越歯科歯周病研究所 退職、武井歯科医院 開業

成人の約8割がかかっているといわれる「歯周病」

成人の約8割がかかっているといわれる「歯周病」

歯周病について皆様はどういう疾患と思われているでしょうか。 歯ぐきが腫れる?血が出る?歯がグラグラして抜ける?なんとなく歯周病に対してのイメージがあると思います。 最近ではCMでも謳われているのでご存知でしょう。 成人の約8割が歯周病と言われています。 歯周病の原因は、お口の中に存在する細菌です。 歯の周りに細菌が住み着いたプラーク(歯垢)や歯石ができることで細菌が繁殖し、産生する毒素で歯ぐきを腫らしたり、歯の周りの骨を破壊していくのです。 他にも喫煙などの生活習慣や全身疾患との関わりがありますが、主な原因は先ほどのプラークや歯石です。 それをいかに取ってお口の中を清潔に保てるかにかかっています。 そのためには、日々の歯磨きが非常に大切になってきます。

プラークは患者さん自身の歯磨きで、歯石を私たちプロの手でどれだけ除去できるかで結果が大きく変わってきます。 しかし歯石は歯ぐきのなかや奥底に頑固にくっついていることがあり、歯石取りをしただけで全部取れるとは限りません。 何回か歯石取りをしてもまだ歯周ポケットが深く残っている場合には、歯ぐきを切開して歯石を取る歯周外科手術を行うことがあります。 そのなかでも歯ぐきを切除して歯周ポケットを除去するフラップ手術や、骨移植やエムドゲインを用いて歯周組織の再生を行う歯周組織再生療法があります。 フラップ手術は歯ぐきが元の状態より下がってしまい、歯と歯の間にすきまができやすかったり、歯の根っこが出やすいため知覚過敏でしみやすくなります。

一方、歯周組織再生療法は極力歯ぐきが下がらないように切開を行い、骨が溶けている部位に骨移植材やエムドゲインを用いて再生をはかります。通常フラップ手術では1週間で縫った糸を取るのですが、歯周組織再生療法は2週間から3週間ほど縫った糸を取らず安静な状態を保ちます。 時間はかかりますが、歯周病により破壊された骨が再生してくると、元の健康な歯ぐきに近い状態に治すことができます。 また、状態によってはどうしても抜歯せざるを得ない場合もあります。

なくなった部位に歯を作る方法としては、両隣の歯を削って被せもので橋渡しをするブリッジや、部分入れ歯などがありますが、現在はインプラント治療が第一選択になってきています。 隣の歯にダメージを与えずに歯を作ることができますし、虫歯になることもありません。 自分の歯のようにしっかりと噛むことができ、生活の質も向上することでしょう。 ただし、歯周病を治さずにインプラント治療をしてしまいますと、インプラントも歯周病菌に侵されて骨がとけてしまうことがあります。 ですから、私たち歯周病専門医は天然歯を歯周病治療したのちにインプラント治療を行うよう心がけています。 時間をかけてでも、天然歯やインプラントの長期的な予後を獲得する方が患者さんにとってメリットが大きいと考えています。

自覚症状がない歯周病。気付いた時には悪化した状態

自覚症状がない歯周病。気付いた時には悪化した状態

歯周病は「沈黙の病気(Silent disease)」とも呼ばれています。 初期には自覚症状がなく進行し、症状が出たときには手遅れになっているため、そんな呼び名がついているのです。 先ほどもご説明した通り、成人の約8割が歯周病に罹っています。 そのほとんどは自覚症状がないのです。 歯周病の恐ろしさは自分で気づきにくく、気づいたときにはもう遅い、というところなのです。 また、二次的に人体に悪影響を与えることがあり、早産や心疾患、糖尿病の悪化など全身疾患との関わりも否定できません。 歯周病は一週間や一ヶ月で急に進むことはまれです。 そのため定期的なチェックと歯石取りを受け、原因となるプラークや歯石をコントロールすることでお口の中を清潔に保つことが何よりの治療です。 つまり予防に勝る治療はないということです。 口は健康の入り口です。おいしく食事ができると健康になります。 笑顔が素敵な方は魅力的だと思います。 自分は大丈夫、と思っているあなたも歯周病かもしれません。 全身の健康とも関わりがある歯周病が進まないうちに、早めのチェックをされることをお薦めします。

歯は大事な資産

歯周病が進行してしまうと、重度の場合、歯を喪失してしまいます。一般的には磨きにくい奥歯が悪くなってしまうケースが多いのですが、奥歯がなくなると、治療しないと前歯にも負担がかかり、前歯もいずれ喪失することになりかねません。 そうなると若くして部分入れ歯や総入れ歯になる方もいらっしゃいます。 自分に自信を持てなくなったり、後ろ向きな考えになってしまう方を多く見てきました。 治療をして、健康な口腔内環境を取り戻した患者さんの表情は明るく、おいしく食事ができますと言われます。 患者さんにとってのメリットは、何より自分の歯で噛むことができること、思い切り笑えること、前向きな気持ちになれることです。 大げさかもしれませんが、歯科治療は人生を変えることができると思っています。

また、治療をすることで全身疾患が好転する場合もあるようです。 心疾患や糖尿病との関係も否定できませんので、健康を守るためにも歯周病治療により口腔内細菌のコントロールをすることは重要です。 歯をできるだけ長く残すためには、歯周病だけでなく、虫歯や咬む力のコントロールも必要です。 もし歯がなくなると治療が必要になりますが、一説によると歯の資産価値は一本35~50万円と言われています。 先ほどお話ししたインプラント治療は全国的に見て一本あたり平均35~40万円と言われます。 それを考えると妥当な金額な訳ですね。 つまり全部歯がある方は約1000万円の資産をお口の中に持っていることになります。 ご自分の資産をないがしろにすることがないよう、ぜひ定期的な歯科検診を受けて頂きたいと思います。

治療して終わり、ではなく継続的なメインテナンスで歯周病の再発予防

当院は歯周病専門医ですので、他院との違いはやはり歯周病においては、歯周基本治療後の歯周外科治療やメインテナンスということになりますね。 最近は増えてきていると思いますが、開業医の先生で歯周外科手術を日常的にされていらっしゃる先生はまだ少ないのではないでしょうか。 最初は歯磨き指導や歯石取りを歯周基本治療として行うのですが、その後の歯周外科手術では歯ぐきに切開を入れて剥離し、根面についた肉芽組織や歯石をきれいに除去し、場合によっては骨移植や歯周組織再生療法(エムドゲイン)といった再生治療を行う場合もあります。 歯ぐきを健康な状態にしたら、それを維持するためにメインテナンスが必要になります。 治療して終わり、ではなく継続的なメインテナンスは歯周病の再発予防につながります。 歯周病の重症度に応じてその期間も変わってきますので、ご自分の歯で長くお食事ができるよう、メインテナンスは必ずしていただきたいと思います。

歯周病治療に関して、歯石取りに必要な超音波スケーラーは全てのユニットに装備されています。 超音波スケーラーは歯の表面についた細菌のバイオフィルムを破壊したり、歯石を砕いて除去します。 振動と注水によるキャビテーション効果により、歯周病の原因を除去するわけです。 もちろん手用スケーラーも多種にわたり揃えておりますので、部位によって使い分けしています。また、歯周病に限らず、使用した器具はオートクレーブにより滅菌しています。 オートクレーブで細菌やウイルスがない状態にして常に清潔な器具を用いることにしています。 昨今、歯科医院の器具が滅菌されず使い回しされているとの報道がありますが、院内感染はあってはならないことだと思います。 私は自信を持って病院の器具を自分の家族を治療するときに使えると断言できますので、安心してご来院下さい。