皮膚科専門医
標準治療から最新の治療法まで駆使し 満足度の高い治療を追求する皮膚科専門医
2018/11/28
やはぎ皮フ科クリニック
矢作 榮一郎 院長
Eiichiro Yahagi
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 経歴
- 四年制大学卒業後 一般企業勤務・社会人経験を経て
- 2006年 東海大学医学部卒業
- 東海大学医学部付属病院 臨床研修医
- 2008年 東海大学医学部付属病院 皮膚科 助手
- 2010年 東海大学医学部付属病院 皮膚科 助教
- 2012年 東海大学八王子病院 皮膚科 助教
- 2016年 東海大学八王子病院 皮膚科 講師 病棟医長
- 2017年 やはぎ皮フ科クリニック 開院 院長
バリア機能の破壊と免疫の暴走
アトピー性皮膚炎の病態や治療を理解する上で重要なキーワードは、「皮膚のバリア」と「免疫」です。皮膚には、乾燥を防いだり、外からの物質が容易に入らないようなバリア機能が備わっていますが、何かのきっかけで皮膚のバリアが壊れると、異物となるアレルゲンが侵入しやすい状態になります。バリア機能が壊れるとアレルゲンが侵入して、皮膚組織ではそれを排除するために免疫が発動されます。アトピー性皮膚炎は、免疫が暴走し、免疫に関わるヘルパーT細胞のうちのTh1とTh2のバランスが崩れてTh2側にシフトすることで、インターロイキン(IL)-4、IL-5、IL-13などの炎症性サイトカインが産生され、IgE抗体や好酸球が増えて炎症が起こるというのが病態です。
では、IL-4 、IL-13が増えると皮膚にどういうことが起こるのでしょうか。まず、表皮を構成している角化細胞の機能が落ち、フィラグリンというタンパク質や、抗菌ペプチドの産生が減少することで、皮膚の水分保持やバリア機能に影響を与えます。また、真皮の線維芽細胞を刺激することで、皮膚の線維化やリモデリングという機能の低下をひき起こします。同時に肥満細胞を活性化してヒスタミンを分泌させることで、かゆみが出るということになります。
こうしたアトピー性皮膚炎の発症メカニズムや病態から、アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚表面のバリアをしっかり整えるためのスキンケア、炎症を抑えるためのステロイドの外用、かゆみを和らげるための抗ヒスタミン薬の内服がメインになります。
まず皮膚科専門医を信じて標準治療を
ステロイド外用薬に対して、過去のメディア情報に惑わされ、恐怖心がある方が少なくありません。そのため、ステロイド外用薬を勝手に止めてリバウンドを繰り返している方、ずっと使い続けてステロイド皮膚炎などの副作用が出ている方、十分な量を使わずになかなか良くならない方など、まだまだ多くいらっしゃいます。日本皮膚科学会では、ステロイド外用薬の使い方について「プロアクティブ療法」を推奨しています。ステロイド外用薬を使用すると、皮膚の症状は比較的すぐによくなりますが、見えない皮膚の中には、まだ炎症細胞が残っています。プロアクティブ療法は、症状が良くなったからと言ってすぐに中止するのではなく、少ない回数で塗り続けるという方法です。塗る回数を減らすタイミングや塗る回数については、患者さんの症状から判断する必要がありますので、皮膚科専門医を信頼してお任せいただきたいと思います。
また、ステロイド外用薬は症状が強い時期には、塗る量も重要です。「フィンガーティップユニット」という考え方で、人差し指の第一関節まで約2.5センチを目安に、たっぷりつるつるになるまで塗ってください。
プロアクティブ療法で徐々にステロイド外用薬を減らした後は、タクロリムス軟膏を使います。ステロイド外用薬とは全く異なる作用で炎症を抑える薬で、皮膚の状態を維持していくのに非常に良い薬だと思います。
アトピー性皮膚炎は、ガイドラインの診断基準に従って診断されます。アトピー性皮膚炎と診断されれば、その治療は皮膚科専門医が研究を重ねて編み出した標準治療を行います。皮膚科専門医を信じて標準治療をお受け頂きたいと思います。
難治性の方や重症の方のための治療
標準治療をしても、なかなかコントロールが難しい方もいらっしゃいます。非常に症状が強く、紅皮症で真っ赤になり、夜中も痒くて眠れない、浸出液が出ているなど、本当に辛そうに診察室にお見えになります。こうしたQOLが著しく下がっている方には、シクロスポリンという薬を使います。シクロスポリンは、免疫を抑える薬で、元々臓器移植の拒絶反応を抑えるために使用されてきた薬ですが、2008年にアトピー性皮膚炎に対して保険が適用になりました。シクロスポリンは内服薬で、服用後3~4日すると効果が現れ始め、すみやかに症状が改善します。「かゆみで眠れないことが無くなった」 「日常生活が普通に送れるようになった」 「勉強に集中できるようになった」 「早くこの治療法に出会いたかった」などの声をいただき、非常に満足度の高い治療法だと思っています。血液検査でもアトピー性皮膚炎の炎症の程度の指標であるTARC値も下がってきます。
実際の治療方法は、4週間服用していただき効果が見られない場合には、更に4週間延長し8週間を1クールとして、休薬期間を4週間あけて治療を続けます。ただし、腎機能低下や高血圧などの副作用が現れる場合もあるので、効果と副作用の判断は難しく、専門医の元での治療が必要です。このシクロスポリンを使った治療法は、大学病院時代に多くの診療経験がありますので、今までの治療でコントロールが難しくお困りの方は、是非一度ご相談いただければと思います。
さらに進んだ新しい治療法への期待
今、最も新しい治療法として、2018年2月に製造販売が承認されたばかりの「デュピルマブ」があります。これはアトピー性皮膚炎に関わる炎症性サイトカインのIL-4とIL-13を標的とする分子標的薬で、IL-4とIL-13をブロックして根本的に炎症が起こらないようにする薬です。デュピルマブはまだ発売までには時間がありますが、デュピルマブのような生物学的製剤については、乾癬の患者さんに対して多くの治療経験があります。難治性のアトピー性皮膚炎に対して、デュピルマブの効果に非常に期待しているところです。
スキンケアでアレルギーの発症も少なくなる
アレルギーの発症について、近年、食物が腸を経由してアレルギーを起こすのではなく、皮膚を通して起こるのではないかと言う説が出ています。例えば、小さい子供さんの場合、皮膚が大人の約3分の1程度と非常に薄く、皮膚のバリアが壊れやすいため、よだれかぶれなどでも口のまわりに湿疹ができます。そこから卵やピーナッツなどのアレルゲンが入ることで、一気にアレルギーを発症するということです。小さい子供さんの時から、ちょっと湿疹が出来たらステロイドと保湿剤を塗って治し、治った後も保湿剤を塗って皮膚のバリアをしっかり整えることによって、アレルギーの発症自体も少なくなると考えています。
アトピー性皮膚炎は一生お付き合いする病気ではありますが、しっかりと治療を続けていけば、高いレベルでの日常生活を維持することは出来ると思うので、それを目標に治療していきます。そのためには、スキンケアが非常に重要で、当院では専門のスタッフが指導にあたっています。
皮膚科専門医によるニキビ治療
ニキビの治療は、ごく軽症の方から、瘢痕の残った重症の方まで、しっかりと診察をして、皮膚科専門医としての治療をしています。ニキビについても、日本皮膚科学会による標準治療が推奨されています。
軽症の場合には抗菌薬の塗り薬だけで治りますが、基本的には、皮膚の表面の角質を取ってニキビの栓を開け、中の膿やアクネ菌を排出させてニキビを治すという治療法で、いくつか推奨されている外用薬があります。
デュアック配合ゲル®は、アクネ菌に対して効果のある過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという抗生物質の配合剤です。炎症を抑える効果や角質を剥がす作用もある薬で、患者さんの満足度が高いと言う報告もあり、現在、メインで使用しています。
アダパレン(ディフェリンゲル®、エピデュオゲル®:アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合剤)は、角質を取り除いて、膿やアクネ菌を排出しやすくする薬です。若い時にニキビが出るのは仕方ありませんが、いかにきれいに治して瘢痕を残さないかが重要です。
その他、内服薬も併用することがありますが、漢方薬の黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、外用薬と併用して効果があるという報告があり、若い方のニキビに処方することがあります。
ニキビ治療のステップアップ
標準治療で患者さんの満足度が低い場合や、難治性のニキビ、瘢痕には、自費診療ではありますが、ご希望に添える範囲で治療を行っています。ニキビ治療のガイドラインでも、ケミカルピーリングは選択肢の一つとして推奨されています。当院でも、グリコール酸などで皮膚を剥がした後のイオン導入を行っています。患者さんの皮膚の状態を見ながら、オーダーメイドで薬剤の濃度を変えたり、トラネキサム酸やビタミンCを使用するなど、看護師が施術を行っているのが特徴です。また、大人の瘢痕に対するレーザートーニングは、真皮の下の膠原繊維をスイッチヤグレーザーで温めて刺激を与えて細胞を壊します。その後再生する過程で新しい細胞が出来て瘢痕を改善する治療法で、当院でも受けることができます。
いずれも標準治療を行って炎症が治まった後に、さらにステップアップして満足度を上げたいという患者さんに、治療の選択肢として提供しています。
アトピー性皮膚炎もニキビも、患者さんは増えているという印象で、皮膚科以外の診療科でも治療することはできます。しかし、「餅は餅屋」と言う言葉があるように、皮膚の病気は皮膚科専門医にご相談されることをおすすめします。標準治療の範囲で満足度を高められるような治療を模索して、患者さんと一緒に治療を進めていきましょう。