消化器内視鏡専門医インタビュー (横浜内科おなかクリニック)

消化器内視鏡専門医

地域の健康に貢献する内視鏡専門医

山田 晃弘先生

2018/12/19

MEDICALIST
INTERVIEW
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横浜内科おなかクリニック
山田 晃弘 院長

  • 総合内科専門医
  • 消化器内視鏡専門医
  • 消化器病専門医
  • 日本ヘリコバクター学会認定医
  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本消化管学会
  • 日本食道学会
  • 日本ヘリコバクター学会
  • 日本アレルギー学会
経歴
  • 2005年 新潟大学医学部卒 虎の門病院 初期研修医
  • 2007年 国立国際医療研究センター 後期研修医
  • 2010年 虎の門病院 消化器内科 医員
  • 2016年 センター南駅前内科おなかクリニック 副院長
    医療法人社団おなか会 おなかクリニック 非常勤

ピロリ菌を除菌しても胃がんのリスクがゼロになるわけでは無い

受付

胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)感染との関係が明らかになり、ピロリ菌の除菌が保険適応になって以来、胃がんリスク検査をきっかけに除菌された方も多くいらっしゃると思います。ピロリ菌を除菌することは、胃がんの予防効果があると同時に、胃・十二指腸潰瘍や胃MALTリンパ腫などの病気の発症の抑制にも効果があります。ここでひとつ大事なのは、ピロリ菌を除菌することで、胃がんの発症リスクが3分の1に低下するという報告はありますが、完全に胃がんのリスクがゼロになるわけでは無いという点です。では、何故除菌したのに、胃がんになる可能性があるのでしょうか。
ピロリ菌感染は、幼小児期に経口的に感染するのではないかと言われています。幼小児期にピロリ菌に感染すると慢性的に胃の炎症が進行し、徐々に萎縮性胃炎が出来ていきます。この萎縮性胃炎が胃がんの発生母地と考えられています。除菌したとしても、この萎縮性胃炎がもとの未感染の胃に完全に戻るわけではないため、除菌後も胃がんのリスクは残ります。
また、ピロリ菌が元々いない方からは、ほとんど胃がんが出来ないことがわかっています。胃がんリスク検診で行われるABCD分類は、ピロリ菌感染と萎縮性胃炎の有無を調べる検査です。A群はピロリ菌に感染していないため胃がんのリスクはほとんどないと考えられますが、B、C、D群になった方は、精密検査として内視鏡検査を受けていただき、自分の胃の中の状態を知ることが大事です。また、除菌された方も、毎年定期的に胃内視鏡検査を継続して受けていただきたいと思います。毎年、胃内視鏡検査を受けていただくで、胃がんの早期発見、早期治療が可能となります。

ピロリ菌検査と胃内視鏡検査

検査

最初からピロリ菌検査のみを保険で受けることはできません。胃内視鏡検査を先にうけることが決められています。胃内視鏡検査で、ピロリ菌感染胃炎があること、および胃がんや他の病気のチェックをしたのちに、ピロリ菌検査をおこなうことが可能です。ピロリ菌の感染診断には様々ありますが、信頼性の高い検査法として尿素呼気試験や便中抗原測定が挙げられます。尿素呼気試験は、検査時間が30分程度で呼気を調べるだけの検査なので侵襲もなく、信頼性も高いため当院ではよくおこなっております。その後、ピロリ菌除菌と言う流れになります。

内視鏡検査でわかること

診察室

上部内視鏡検査では、食道、胃および十二指腸まで観察することができます。それにより、食道がんや逆流性食道炎などの食道の病変、胃潰瘍や胃がん、胃のポリープと言った胃の病変、十二指腸潰瘍など、上部消化管の病気を発見することができます。胃のポリープはほとんどの場合が良性ですが、良性か悪性かは、大きさや性状と言った見た目で判断できるため、良性と判断した場合には取る必要はありません。また悪性を疑うポリープに関しては、組織を採って調べることになります。
下部内視鏡検査では、肛門から直腸、大腸全体、小腸の一部などを観察することができます。胃のポリープとは異なり、大腸ポリープに関しては、切除をすすめすることが多いです。しかし、明らかに良性のポリープであると判断される場合には、敢えて切除することはおこないません。大腸内視鏡検査を受ける間隔は、大腸癌の手術をした場合には、毎年受けることをおすすめします。また、ポリープを切除した場合には、切除したポリープの結果によって、主治医と相談することをおすすめします。ポリープが無い場合や、ポリープを全て切除した状態になった場合でも、翌年にもう1回受けることが望ましいと思っています。非常に丁寧に内視鏡検査をしたとしても、発見できないポリープが1~2割あるとも言われています。2年連続で内視鏡検査を受けていただき、新たなポリープが見つからなければ、主治医と相談の上で検査の間隔を空けても良いと思います。

苦痛の少ない内視鏡検査をするために

クリニック

上部内視鏡検査は、以前と比べて苦痛が少なくなっています。その理由としては、検査の方法に選択肢が増えたということだと思います。当院でも、経口内視鏡と経鼻内視鏡をお選びいただくことが出来ます。経鼻内視鏡の検査時の苦痛は経口内視鏡に比較すると少ないと思います。経口内視鏡と比べ若干画質はおちるものの、以前と比べて随分良くなっており検査に支障をきたすほどではありません。また、組織を採取するなどの機能は、経口内視鏡とまったく変わりありませんので、安心してお受け頂くことができます。
苦痛の少ない検査をお受け頂くために、患者さんのご希望に応じて鎮静剤を使うこともできます。患者さんの体調や薬の量にもよりますが、ぼーっとするような感じで少し意識が残った状態で検査を受けられる方もいれば、すっかり眠ってしまい、いつの間にか終わってしまったという方もいます。ただし、鎮静剤を使用することには、メリットとデメリットの両面があるため、注意が必要です。鎮静剤のメリットとしては、何より検査の苦痛が非常に抑えられ、咽頭反射も少なくなり検査がおこないやすくなることです。一方、デメリットとしては呼吸の指示に応じることが出来ないため、食道と胃のつなぎ目や胃の襞など息を吸うと広がって見やすい部位の観察が難しくなることです。可能であれば、応答が出来る程度の鎮静が望ましいと考えています。また、もう一点、鎮静剤を使うデメリットとして、呼吸抑制のリスクがあるということです。当院では、患者さんの状態に応じて適切な薬剤や量を調節して使用しています。
過去の検査が辛くて受ける勇気がないかたや、検査が初めてで不安な方には、鎮静剤を使用するメリットは大きいと思います。当日車の運転の必要がある方などは、鎮静剤を使用することができませんが、是非負担の少ない状態で、検査を受けていただきたいと思っています。

院長

長いお付き合いをしていただける喜び

虎の門病院をはじめとして、多くの病院で内視鏡検査に長く携わってきましたが、件数の多さは誇れるひとつです。その中で、以前検査から早期がんを発見した患者さんに、病院が変わっても受診していただけることは、医師冥利に尽きると言うものです。クリニックの開業にあたり、このたまプラーザという場所を選んだのも、虎の門病院の患者さんが引き続き通いやすい場所であるということもあります。
当院では、内視鏡検査から、必要があればポリペクトミーやEMR(内視鏡的粘膜切除術)も施術しています。リスクの高い方や、入院が必要な場合には近隣の信頼できる医療機関にご紹介します。是非一度、内視鏡検査をお受け頂き、ご自分の今の状態を知るお手伝いが出来ればと思います。