内視鏡検査の専門医インタビュー (みゆきクリニック)

内視鏡検査

超音波内視鏡下せん刺細胞診(FNA)も外来で可能!高難度膵臓がんの早期発見を可能にする超音波内視鏡のスペシャリスト

辻野 武先生

2017/11/01

MEDICALIST
INTERVIEW
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みゆきクリニック
辻野 武 院長
Takeshi Tsujino

  • 医学博士
  • 日本内科学会認定医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates )
経歴
  • 1994年 東京慈恵会医科大学卒業
  • 2008年 東京大学大学院医学研究科博士過程修了
  • 1994年 日本赤十字社医療センター 内科 研修医
  • 1996年 日本赤十字社医療センター 第一消化器科 専修医
  • 1999年 日本赤十字社医療センター 第一消化器科 医師
  • 2007年 東京大学医学部附属病院 消化器内科 助教
  • 2010年 日本赤十字社医療センター 消化器内科 医師
  • 2011年 みゆきクリニック 医師
  • 2014年 University of California, Irvine, Medical Center 内視鏡フェロー
  • 2016年 みゆきクリニック 副院長
  • 2017年 現職
  • 日本医科大学 消化器内科 非常勤講師
  • 東京大学医学部附属病院 消化器内科 登録診療員

地域で親しまれる透析クリニックが最新の内視鏡診断・治療をメインにリニューアル!

みゆきクリニックの受付・待合室

みゆきクリニックは、40年間にわたり腎臓病の専門医である父辻野 壽が地域に親しまれる透析クリニックとして診療して参りました。2017年より私が院長を引き継ぎ、地域のかかりつけ医としての役割を果たしつつ、私の専門である消化器内科、内視鏡をメインとするクリニックへと新しく生まれ変わりました。

私はこれまで大学病院およびその関連病院において、消化器内科の中でも特に胆膵疾患(胆嚢、胆管、膵臓の病気)の内視鏡的診断・治療に携わってきました。また近年2年間はアメリカのカリフォルニア州立大学アーバイン校メディカルセンターに勤務し、超音波内視鏡を主とした最先端の内視鏡検査の技術修得と実績を積んで参りました。

私が実践しているのは、地域のクリニックという皆様にとって身近な場所で、超音波内視鏡をはじめとする最先端の良質な医療を受けていただくということです。そして来院される皆様の思いにしっかりと向き合い、わかりやすいていねいな説明で、病気を治療するだけでなく、患者さんの不安を取り除いていきたいと考えています。

わずか5mmの腫瘍を発見!胆膵疾患に抜群の威力を発揮する超音波内視鏡

超音波内視鏡。すい臓内に5mm大の腫りゅう(丸印)を認める。

胃カメラ、大腸カメラの別名を持つ上部・下部内視鏡についてはご存知の方も多いでしょう。また超音波検査(エコー)についても、病院やクリニックで手軽におこなえる検査の方法として知られ、実際に検査を受けた経験のある方も多いはずです。しかし超音波内視鏡と聞いて、すぐにどんなものか思い浮かべられる人はまだ少ないのではないでしょうか。

超音波内視鏡とは、内視鏡の先端に超音波検査機の機能を搭載した専用の内視鏡のことです。胃や十二指腸の中から超音波検査をおこなうことができ、大変高い精度で、これまで難しいとされてきた胆のう、胆管、膵臓やその他の臓器の画像検査が可能になりました。

体表(皮膚の上)からおこなう通常の腹部超音波検査は、比較的簡便に肝臓や胆のう、膵臓などを観察でき、クリニックや検診などでもおこなわれています。しかし通常の超音波検査では、胃や腸のガスや脂肪、骨などが邪魔になって胆管や膵臓の観察が不十分になることがあります。事実、検診でおこなわれた腹部超音波検査のコメント欄に、“膵臓の観察不十分”と記載されているのを目にするのはけっして少なくありません。

一方、超音波内視鏡は体の内側から検査をおこなうため、超音波の妨げとなる空気や脂肪の影響を受けることが少なく、しかも膵臓や胆のう、胆管などをより近くから観察できることから、超音波内視鏡で得られる画像は通常の超音波検査機よりもはるかに鮮明です。これにより超音波内視鏡による診断の精度は格段に上がり、CT以上の成果を挙げています。膵臓癌は早期診断が難しい癌ですが、1cm以下の小さい膵腫瘍では造影CTよりも超音波内視鏡の方が診断能力が優れていると報告されています。また我が国の膵癌診療ガイドラインにおいても、超音波内視鏡は膵癌診断に重要な検査法であると位置づけられています。このように超音波内視鏡は胆膵疾患の診断において、注目されている検査機器なのです。

しかし内視鏡を専門にする医師なら誰でも超音波内視鏡を使いこなせるというわけではありません。胃や十二指腸の内側から様々な臓器の検査をする超音波内視鏡は、通常の上部内視鏡とは全く違う技術と知識を必要とします。超音波内視鏡を用いて目標となる臓器を見落としなく全て観察するためには、それなりの手技の熟練を要します。また発見した病変をどのように診断し、次のステップをどうするかを決定するには、十分な知識と臨床経験が求められます。

手技の熟練と十分な臨床経験が必要な超音波内視鏡による診断

超音波内視鏡下せん刺吸引細胞診。すい臓内の腫りゅう(丸印)に細い針(矢印)を刺して、細胞を採取。

これほど高い性能を持つ超音波内視鏡ですが、国内では大学病院や地域の拠点病院の一部で導入されているだけで、医院・クリニックでの導入例はほとんどありません。その理由はいろいろと考えられますが、前述したように超音波内視鏡の手技と診断には熟練と経験を要し、自信を持って超音波内視鏡をおこなえる医師が不足しているのが一因と思われます。

内視鏡による消化器の診断・治療に長年取り組んで来た私は、この超音波内視鏡の技術をさらに向上させたいと考え、その分野では世界の最先端施設であるカリフォルニア州立大学アーバイン校メディカルセンター(以下、UCI)に赴き、超音波内視鏡の世界的権威であるKenneth Chang(ケネス チャン)教授に師事しました。Chang教授の元では、常に2、3名のEUS(超音波内視鏡のこと)フェローと呼ばれるアメリカ国外出身の医師が超音波内視鏡を学んでいます。しかし私の勤務時には半年以上の間、フェローが私一人であったため、マンツーマンで教授から指導を受けることができました。そして2年に及ぶUCIでの勤務で、1000件以上の超音波内視鏡検査を自ら行いました。さらには膵嚢胞に対する最先端の超音波内視鏡診断(超拡大内視鏡や極細内視鏡を用いての膵嚢胞内の観察)や世界初の超音波内視鏡での肝臓の血管内圧測定(門脈圧測定)などにたずさわることができました。このことはいうまでもなく内視鏡専門医として他では得られない貴重な体験でした。

超音波内視鏡下せん刺細胞診(EUS-FNA)による診断が可能です。

超音波内視鏡を行っている院長(右)とKenneth Chang(ケネス チャン)教授(左)。(カルフォルニア州立大学アーバイン校メディカルセンターにて)

超音波内視鏡の利点は、詳細な画像検査に引き続いて病変部から細胞を採取することができることです(超音波内視鏡下せん刺細胞診、EUS-FNAと言います)。具体的には、膵臓などにある病変(腫瘍)を超音波内視鏡で見ながら、内視鏡内に通した細い針で病変を刺して細胞を採取します。こうして得られた細胞を顕微鏡で検査し、良性、悪性などの質的な診断をします。この超音波内視鏡下せん刺細胞診の対象となる病気は多岐に渡り、肝臓、膵臓、胆嚢・胆管、腎臓・副腎などの腫瘍や消化管の粘膜下腫瘍、リンパ節、腹水などです。ただ膵臓の嚢胞に対する超音波内視鏡下せん刺細胞診に関しては、海外では積極的におこなわれていますが、日本ではほとんどおこなわれていません。

この超音波内視鏡下せん刺細胞診は比較的安全な検査とされていますが、日本では様々な理由から入院で行っている施設が多いです。私のアメリカでの臨床経験から、当院では市販されている最も細い針(予防接種の針よりも若干、太い程度です)を用いて、原則として外来でおこなっています。

上部・下部・超音波 すべての内視鏡で苦痛のない検査を。

当クリニックでは超音波内視鏡とともに、食道から十二指腸を検査する上部内視鏡、大腸と直腸を検査する下部内視鏡をおこなっています。私は超音波内視鏡を学びにアメリカのUCIに留学しましたが、実際には超音波内視鏡だけでなく、逆流性食道炎の内視鏡診断・治療、バレット食道に対する診断・治療、慢性胃炎・胃癌の内視鏡診断なども学ぶ機会を得ました(週1回のChang教授の外来の患者さんの多くが、逆流性食道炎とバレット食道の患者さんでした)。特にアメリカ人に多いバレット食道に対しては、共焦点レーザー内視鏡やvolmetric laser microscopy (VLE)を用いた最先端の内視鏡診断や内視鏡治療(ラジオ波焼灼療法など)をおこなっていました。逆流性食道炎やバレット食道は、この後、日本でも増えてくることが予想されます。

私が目指しているのは、これら有効な内視鏡を使って少しでも早い段階で病気を診断・治療することです。そのためにはちょっとした症状であっても見逃さず、スクリーニング的に内視鏡検査を受けていただくことが望ましいと考えています。また早期発見のためには、定期的な内視鏡検査が必要なこともあります。しかし内視鏡検査が苦しい、辛いと感じられていては、「また検査を受けよう」と思っていただける患者さんはいなくなってしまいます。私は内視鏡手技を磨き、様々な工夫をおこない、患者さんにできるだけ苦痛なく内視鏡検査や治療を受けていただけるよう、日々努力しております。

当クリニックでは、上部内視鏡では咽頭反射の少ない最新の経鼻内視鏡を用い、下部内視鏡では水と二酸化炭素を使った検査後にお腹の張りが少ない方法で、検査をおこなっています。また超音波内視鏡を含むすべての内視鏡検査において、患者さんの希望に応じて静脈注射による鎮静をおこなっています。当院で採用されている内視鏡の機器のすべては最新のもので、もちろん診断に有効なNBIや拡大内視鏡などの機能も備えています。ぜひ安心して当クリニックの内視鏡検査を受診ください。

クリニックの内視鏡検査室

CTでも見つからなかった神経内分泌腫瘍を発見!

胆管狭窄が見つかった70代女性の患者さんが、大学病院からの紹介で来院されました。腹部造影CTやMRIでは、胆管狭窄の原因が突き止められず、地域で唯一超音波内視鏡を導入している当クリニックに検査を依頼されたのです。早速、超音波内視鏡検査をしてみると、胆管狭窄の原因となるような明らかな腫瘍は見つかりませんでした。しかし膵臓内に5mm大の腫瘍が見つかりました。内視鏡下せん刺細胞診をおこなったところ、神経内分泌腫瘍と診断されました。神経内分泌腫瘍はまれな腫瘍です。その多くはゆっくりと進行しますが、なかには急激に進行し、様々な臓器に転移することもあります。CTでは見つけることができなかった腫瘍を超音波内視鏡によって見つけることができた一例です。