内視鏡検査の専門医インタビュー (松坂クリニック)

内視鏡検査

技術と知識で消化器のがんの早期発見に尽力する内視鏡の専門医

松坂 紀幸先生

2018/04/23

MEDICALIST
INTERVIEW
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松坂クリニック
松坂 紀幸 院長
toshiyuki Matusaka

  • 日本内科学会認定医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化管学会胃腸科認定医
  • 日本消化管学会胃腸科専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 東区消化器病研究会世話人
経歴
  • 唐津赤十字病院
  • 九大病院
  • 白十字病院
  • 九州(厚生年金)病院
  • 下関市立市民病院
  • 浜の町病院
  • 千早病院

消化器のがんは早期発見と早期治療で治ることの多いがんです

消化器のがんとは

消化器とは、食事でとり込んだ食べ物の消化に関わる臓器のことで、食道から胃、十二指腸から始まる腸全体を指します。これらの消化器に生じるがんは、早期に発見し、早期に治療することで完治することも多いがんです。しかし、初期には自覚症状がないことも多いのが消化器のがんの特徴でもあります。

自覚症状がある場合はこんなものが多く見られます。

腹痛、胃痛、便秘、下痢、下血

これらの症状は、ある程度がんが大きくなってきた段階で起こることが多いものですので、気になる症状がある場合は、できるだけ早く受診して、内視鏡検査を受けましょう。

胃がんと大腸がんは患者さんが多いがんです

胃がんになる患者さんの数は、すべてのがん患者さんの中でも第2位で、大腸がんは同じく第1位です。消化器のがんはかかりやすいがんであるとも言えます。しかし、早期発見と早期治療で完治することも多いがんであると先に述べましたように、「治るがん」なのです。

しかし、がんで亡くなる患者さんの中でも、胃がんを原因としてなくなる患者さんは第3位、同じく大腸がんは第2位なのです。これは、ある程度進行した段階で見つかる患者さんが多いこと、その理由として、内視鏡検査をためらう患者さんが多いことが挙げられます。

消化器のがんの早期発見に内視鏡検査は欠かせません

内視鏡

内視鏡検査とは

内視鏡検査は大きく分けて2種類あり、胃の内視鏡検査と、大腸の内視鏡検査です。どちらも、細いスコープにカメラと検査機器を取り付けたごく細いスコープを、胃や大腸に挿入して、カメラの画像を見ながら行う検査です。

胃の内視鏡検査は内視鏡のスコープを、口か鼻から食道を通して胃と十二指腸へ挿入します。大腸内視鏡検査は肛門から挿入し、直腸から大腸へと挿入します。

内視鏡検査ではこんなこともできます

内視鏡検査は医療の分野の中でも技術革新が目覚ましく、たいへん鮮明な画像で胃の内部や大腸内部を観察できるため、小さな病変も見逃しにくいという有用な検査です。しかしそれだけではないのです。

内視鏡検査で使用するスコープには、カメラだけでなく、さまざまな検査機器を搭載しています。そのため、病変を見つけることにとどまらず、病変組織の組織採取もその場で行うことができます。また、病変を検査中に切除して、検査と同時に治療を行うこともできるのです。

このため、内視鏡検査は、消化器のがんの早期発見に欠かせないだけでなく、治療を迅速にできるというメリットもある、たいへん有用な検査方法です。

当院の内視鏡検査は急増中。専門医も熟練です

内視鏡検査室1

基幹病院にも匹敵する検査施行数

当クリニックは昨年新設移転し、より広く新しいクリニックとしてスタートしています。施設も設備も広く新しくしたため、対応できる検査数が増え、今では月間300~350例の検査、年間では3500~4000例を施行しています。

この検査施行数は地域の基幹病院に匹敵する数で、痛みのない検査、検査後の丁寧な説明を徹底した結果、患者さんからの信頼を得ることができたのだと考えております。また、内視鏡専門医にとって検査を数多くこなすことは熟練に直結します。患者さんの信頼に支えられて技術を磨くことができる、しあわせな環境を頂いております。

当クリニックは日本消化器内視鏡学会の指導施設認定を目指しています

日本全国の内視鏡専門医が所属する、日本消化器内視鏡学会の専門医を育成するための医療機関が指導施設と呼ばれるものです。在籍する専門医の技術の高さはもちろんのこと、在籍専門医の人数、検査施設の広さ、年間検査件数など、厳しい認定基準をクリアすることが求められます。

しかし、当クリニックはこの認定基準のうち数項目を既に満たしており、地域の皆様には確かな技術と安心を、日本全国には内視鏡専門を増やすお手伝いをできるよう、日々努めています。

当院の内視鏡はEMRだけでなく、ESDにも対応可能な最新機器です

内視鏡検査室2

EMRとESDとは

EMRは内視鏡的粘膜切除術を指し、ESDは内視鏡的粘膜下層剥離術を指します。どちらも早期のがんの治療として、内視鏡検査と同時に行うことのできる治療法です。内視鏡のスコープから専用の器具を出して病変を切除するのですが、EMRに比べてESDはより大きな病変に対応することのできる治療法です。

当クリニックは、これまでもEMRは行っておりましたが、設備上ESDは近隣の大きな病院に出向いて行って対応してきました。これが、新クリニックでは院内でどちらも行えるようになり、より幅広い患者さんに対応することが可能になっています。

今後も近隣病院との連携は続けていきます

もちろん、すべての患者さんの症例に院内で対応できるわけではありません。ESDを行えば入院が必要となり、入院施設のない当クリニックからは、治療後の近隣病院への入院が必要となります。

また、合併症が起きた場合には、やはり総合病院の方が対応しやすいでので、連携病院へ出向いて行うESDは今後も続けていきたいと考えています。患者さんごとに、年齢や治療部位、既往症などから治療の難易度は異なります。ひとりひとりの患者さんに向き合い、患者さんにとってより良い方法で治療に努めていきます。

嫌われやすい内視鏡検査を親しみやすく

内視鏡検査器具

内視鏡検査は嫌われもの

消化器のがんは治るがんであるにも関わらず、かかる患者さんの数も、亡くなる患者さんの数も上位に入っています。これは、内視鏡検査が嫌われ者であることに関係があります。内視鏡は長く「痛い、苦しい、恥ずかしい」と言われ、躊躇う患者さんがとても多い検査でした。当クリニックでは、このイメージを払しょくするためにいろいろな工夫をしています。

当クリニックの工夫①痛くない内視鏡

当クリニックでは、内視鏡検査の際、少量の鎮静剤を使用して、ほとんど眠った状態で痛みを感じずに受けられる工夫をしています。また、検査に使用するスコープもできる限り細いものを用いています。

当クリニックの工夫②恥ずかしくない内視鏡

女性の患者さんにとって大腸内視鏡という検査は、とてもハードルが高いものです。当クリニックには女性の内視鏡専門医が在籍しており、女性医師による内視鏡検査を受けられるようになっています。実際、当クリニックを受診する患者さんは50歳以下の若い方が多いのですが、さらに、男性よりも女性の方がやや多くご来院頂いています。

当クリニックの工夫③忙しい患者さんへ

健康が気になっても、気になる症状があっても「忙しくて受診は後回し」になってしまう患は、者さんのお話はよく聞きます。働く世代にとって、休日に受診し、検査を受けられることは大切なことです。

当クリニックでは、月に1度、日曜日に完全予約制の内視鏡検査の日を設けています。

松坂クリニック外観

最後に

院長 松坂 紀幸

丁寧な説明は「啓発活動」

当クリニックでは、検査を受けた患者さんへの丁寧な説明を徹底しています。検査中も、例えば大腸ポリープの切除を、方法から丁寧に患者さんにお話ししています。大腸がんのほとんどは大腸ポリープを原因としていることも、必ず言い添えています。

丁寧な説明は、目の前の患者さんの病気への理解を深め、安心を得ることであると同時に、患者さんからご家族やご友人に伝わる大切な情報源でもあるのです。医師の立場からは「啓発活動」であるとも捉えています。内視鏡検査の大切さと有用さが、少しずつでも広がっていき、がんで苦しむ人が減るようにと願っています。

消化器のがんにならないためには、早期発見と早期治療が大切です。自治体の定期検診は40代や50代から始まりますが、20~30歳代の若いうちに一度内視鏡検査を受けておくと、がんになりやすいリスクがわかります。このリスクを知っておくだけでも、がんの早期発見につながるのです。

気配りと細やかな声かけを心がけています

当クリニックもスタッフが増え、忙しく動き回っていますが、業務以上に「患者さんのお顔を見て、自分から声をかける」ことを大切にしています。患者さんは不安だから受診します。その不安や異変を言葉にできない患者さんも多くいるのは当たり前です。症状だけでなく、待ち時間が長い、空調が合わないなどにも、患者さんが感じていることをお聞きすることを大切にして、「温もりのあるかかりつけ医」を目指して、スタッフ一同努めていきたいと考えています。