糖尿病の専門医インタビュー (南昌江内科クリニック)

糖尿病

自身も糖尿病を発症し、糖尿病と共に人生を送り、糖尿病患者の気持ちが分かる糖尿病専門医

南 昌江先生

2017/09/04

MEDICALIST
INTERVIEW
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南昌江内科クリニック
南 昌江 院長
Masae Minami

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本糖尿病学会専門医
経歴
  • 1988年 福岡大学医学部卒業、東京女子医科大学付属病院 内科入局/同 糖尿病センターにて研修
  • 1991年 九州大学第2内科 糖尿病研究室所属
  • 1992年 九州厚生年金病院 内科勤務
  • 1993年 福岡赤十字病院 内科勤務
  • 1998年 南昌江内科クリニック開業

糖尿病と向き合って有意義な人生を送る

糖尿病についての説明

21世紀の国民病となってしまった糖尿病ですが、皆さんはこの「糖尿病」にどんなイメージをお持ちでしょうか?多くの方は「贅沢病、恥ずかしい、人に言いたくない、怠け者のなる病気」などマイナスのイメージが強いのではないでしょうか。糖尿病には、自己免疫やウィルス感染が原因と言われる1型糖尿病と、現代の生活習慣(過食、運動不足、ストレス)が引き金となって発症する2型糖尿病があります。2型の治療の基本は食事と運動ですが、1型の場合はインスリン注射が欠かせません。放置したり、悪いコントロール状態が続けば、重大な合併症を引きおこします。糖尿病は正しくつきあえば怖い病気ではありません。血糖値さえ上手くコントロールして日々の生活を過ごせば、やれないことはありません。病気と向き合いながらも夢を実現された方もたくさんおられます。

国民病となった糖尿病

厚生労働省の調査では現在、わが国には糖尿病が強く疑われる人は950万人、予備軍は1,100万人いることが明らかになっています。1960年頃の調査では50万人以下と言われていましたから、これまでの間に驚異的に増加しています。糖尿病の疫学研究によれば、もともとアジア人は、糖尿病を発病し易い人種であるため、わが国のように戦後、急速に西欧文明生活をとりいれたことにより、糖尿病人口が急速に増加してしまったのです。つまり、自動車の急速な普及や電化製品の発達が運動不足をひきおこし、欧米型の食生活により動物性脂肪の割合が多くなり、その結果肥満をきたし、糖尿病や高血圧、高脂血症と言った生活習慣病を招いてしまったわけです。言い換えるとわが国の経済成長の結果として「国民病」となってしまったのです。

1型糖尿病と2型糖尿病

糖尿病は主に1型糖尿病(インスリン依存型)と2型糖尿病(インスリン非依存型)の2つに分けられます。1型は、血糖値を下げる働きのあるインスリンと言う膵臓から出るホルモンが分泌されなくなって発症します。幼児期や小児期に発症することが多いので昔は「小児糖尿病」とも言われていましたが、成人で発症することもあります。糖尿病全体の2~3%と非常に希な疾患で、治療は、一生涯インスリンの注射が必要です。2型は、遺伝的な素因に過食や運動不足、肥満、ストレスなどのさまざまな環境因子が原因となって発症します。糖尿病全体の95%以上がこのタイプです。治療は、食事療法や運動療法が中心となり、場合によっては薬物療法(経口薬またはインスリン)が必要になります。

放置すると知らない間に合併症に

どちらのタイプの糖尿病にも治療により血糖値を上手くコントロールすれば、決して恐ろしい病気ではありません。糖尿病で最も恐ろしいのは、つい病気を甘くみてしまい、放置したり、治療を中断してしまうことです。特に2型の場合、病気の進行がゆっくりしているため、はじめのうちは自覚症状がほとんどなく、症状が現れた時には、かなり進行しています。その際の症状は、のどが渇く、尿が多い、目が霞む、手足がしびれる、体重が減るなどです。症状の程度は必ずしも血糖値と比例しませんが、高血糖の状態が長く続くと、さまざまなところに合併症が現れてきます。その主なものが「三大合併症」と言われている1.糖尿病性神経障害、2.糖尿病性網膜症、3.糖尿病性腎症です。

  • 神経障害は、手足の感覚障害や痛み、下痢や便秘、インポテンツなどさまざまな症状があります。
  • 網膜症はひどくなると眼底出血をきたし失明する場合もあります。途中失明者の原因の2位になっています。
  • 腎症になると、むくみをきたし、尿が出なくなって尿毒症となり、人工透析をしなければ生命を維持することが出来なくなってしまいます。現在では、人工透析患者の第1位になっているほどです。 その他に多い合併症として心筋梗塞、狭心症、脳血管障害、壊疽など糖尿病による動脈硬化性の病気があります。

糖尿病は早期発見、早期治療が大切

早期発見、早期治療の重要性

今後、ますます糖尿病の患者さんが増え続ける可能性があります。それを予防するためには、早期発見、早期治療が必要です。会社の検診で尿糖を指摘された方や、「要精査」といわれた方は、自覚症状の有無にかかわらず専門医を受診して下さい。主婦の方は、保健所や医院での検診を積極的に受けるようにして下さい。特に妊娠中に尿糖を指摘された方や、巨大児を出産された方、肥満の方、家族に糖尿病の患者さんがおられる方は要注意です。そして、「糖尿病」または「糖尿病予備軍」と診断された場合は、直ちに専門の病院、医院で糖尿病の勉強(食事療法、運動療法を含む)を行い、正しい知識を身に付けましょう。早ければ早いほどその効果も早く現れます。一方、自覚症状がないからとほおっておくと、気づいた時には合併症が出現し手遅れになることもあります。

子供の2型糖尿病が増加

小児期に発症する糖尿病は前述のように1型(インスリン依存型)が多かったのですが、最近では肥満児の増加と共に生活習慣病としての2型糖尿病が増え続けています。原因は成人と同様です。特にファーストフードやスナック菓子、炭酸飲料を好んで食べ、塾やコンピューターゲームなどであまり体を動かさなくなってしまった結果、肥満や生活習慣病を招く結果になってしまうのです。小児期に身に付いた食生活は大人になってからなかなか改善できるものではありません。幼少児期から健康教育をもっと重視する必要があると思います。

糖尿病にならないために

現在健康な方でもいつ「国民病」にかかるかは分かりません。 糖尿病にならないためには…

  • 過食、偏食を避け、食事は腹7~8分目までに。
  • 健康体重を維持する(BMI21~22)。
  • 運動不足の是正(1日30分以上のウォーキングなど)。
  • この3つのことから習慣づけるよう心がけてください。「継続は力なり」です!

糖尿病と診断されたら

糖尿病は、食事療法や運動療法を中心とした治療を継続的に行い、長期間にわたって定期通院の必要な病気です。以前私が大病院で勤務していた頃、定期通院が面倒でついおろそかになったり、放置される患者さんを多く見受けました。数年後に自覚症状に気づいて受診された時には、すでに合併症が進行している状態でした。そのような患者さんを減らすために、「患者さんが安心して気持ちよく、治療が長続きできるクリニック」を作りました。院長である私自身が1型糖尿病で14歳の時からインスリン注射をしています。長い間病院に通院していますので「患者の立場に立った医療」を常に心がけています。

糖尿病と共に生きる患者さんの人生を考える

たくさんの糖尿病の患者さんと接していくうちに、「糖尿病と共に生きる患者さんの人生」を考えるようになりました。糖尿病があっても元気で明るく充実した人生を送っている患者さんはたくさんおられます。私はそのような方々から多くのパワーをいただき、いろんなことに挑戦することができました。 患者さんには糖尿病を通じて、スポーツや食の楽しみを味わっていただきたく、今回、運動教室や栄養教室(調理実習を含む)を新たに設置しました。「元気を発信するクリニック」をモットーにスタッフと共にさらに充実した糖尿病診療に取り組んでいきたいと思っています。

2017年8月から新たに医師を1名追加し、糖尿病臨床研究センターを新たに開設し、糖尿病専門クリニックとしてより適切な糖尿病の医療をご提供いたします。