呼吸器専門医インタビュー (川波医院)

呼吸器専門医

「タバコ病」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や睡眠時無呼吸症候群の治療を行う呼吸器専門医

川波 潔先生

2017/11/09

MEDICALIST
INTERVIEW
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川波医院
川波 潔 院長
Kiyoshi Kawanami

  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本抗加齢学会 専門医
  • 日本医師会 認定産業医
  • 肺がんCT検診認定医師
経歴
  • 平成2年 産業医科大学卒業、産業医科大学病院研修医 第一内科・第二内科
  • 平成3年 社会保険 筑豊病院 人工透析・消化器内科、産業医科大学病院 集中治療部・麻酔科
  • 平成4年 産業医科大学 大学院 生化学
  • 平成6年 九州大学 医学部 第一生化学
  • 平成8年 産業医科大学 呼吸器科 専修医
  • 平成9年 新日鐵(株)君津製鐵所 診療所医長・安全健康Grマネジャー専属産業医
  • 平成13年 新日鉄ソリューションズ(株)統括産業医、人事部 人事企画Grマネジャー
  • 平成15年 社会保険 筑豊病院 内科・循環器内科・呼吸器内科 医長 医局長
  • 平成18年 医療法人ことぶき会 川波医院 副院長
  • 平成19年 医療法人ことぶき会 川波医院 院長
  • 平成20年 医療法人ことぶき会 川波医院 理事長

「タバコ病」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

「タバコ病」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)について説明

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、肺や気管支に有害な空気が入り込み炎症を起こす病気です。以前は慢性気管支炎や肺気腫とも呼ばれていました。COPDになると、階段の昇り降りなどで息切れをしたり、慢性的な咳やたんが続いたりします。重症化すると呼吸不全が生じます。息苦しくなり日常生活に支障をきたします。自宅での酸素吸入が必要となり、呼吸不全になって死に至ることもあります。

COPDの合併症として糖尿病、心臓病、骨粗鬆症、抑うつなどを引き起こす場合もあります。これらの病気を合併していると経過が悪く、死亡率も高くなってしまいます。

そんな危険なCOPDですが、「タバコ病」と呼ばれ、喫煙が最大の危険因子です。 COPDになっても禁煙を行えば、呼吸機能の減少率は禁煙2年以内に、喫煙していない人の呼吸機能減少率とほぼ同じになることがわかっています。当院では禁煙外来も行っていますので、お悩みの方はお気軽にご相談下さい。

禁煙はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)治療の第一歩。禁煙外来とは。

2006年4月に禁煙外来は保険が適用されるようになりました。禁煙外来は禁煙したいとお考えの方と医師が一緒に治療方法を考え、患者さんに合わせた治療を行っていきます。

禁煙できない理由として、ニコチンに対する依存性が大きなウエイトを占めるのは確かですが、実は心因性の部分も大きいのです。そこで医師とカウンセリングを行ったり、禁煙補助剤ニコチンパッチを使用し、身体的・精神的なケアを行っていきます。

喫煙は私たちの身体を脅かすリスクがたくさん存在します。肺がんをはじめとする各種がん、慢性気管支炎などの呼吸器疾患、動脈硬化、心筋梗塞などの循環器疾患などが挙げられます。 妊婦に関しては低出生体重児、子宮内発育遅延、先天奇形などのリスクが生じてきます。

受動喫煙者が吸う煙草の煙が原因で未成年を含む能動喫煙者にもこのようなリスクが発生する可能性があることを忘れないでください。

ご本人やご家族の健康のために禁煙をお考えの方は一度、ご相談ください。

禁煙外来治療の流れ

初回問診  医師とのカウンセリング

まずは医師とカウンセリングを行い、治療内容を決定します。 そして問診を行います。内容としては

  • ニコチン依存度
  • 喫煙状況
  • 呼気中(吐き出す息)の一酸化炭素濃度の測定
  • 禁煙開始日の決定 禁煙誓約書への記入

を行います。その後、次回診察日の決定を行い、治療のための禁煙補助薬(ニコチンパッチ)の処方を受けます。

2回目問診 禁煙開始1週間後

禁煙開始日から1週間後に再診し、喫煙状況の問診を行います。そして呼気中の一酸化炭素の測定を行い、禁煙補助薬の追加処方を受けます。

3回目問診 禁煙開始2週間後

禁煙開始日から2週間後に再診し、呼気中の一酸化炭素濃度の測定を行い、出現した離脱症状の確認や対処法などのカウンセリングや治療を行います。禁煙開始から1,2週間が禁煙を成功させるかさせないか大きな分かれ目になってくるので、この期間は非常に重要な期間となります。

4回目問診 禁煙開始4週間後

禁煙開始日から4週間後に再診し、前回と同様に呼気中の一酸化炭素濃度の測定を行い、出現した離脱症状の確認や対処法などのカウンセリングや治療を行います。

5回目問診 禁煙開始 6or8 週間後

禁煙開始日から6週間後もしくは8週間後の再診が最後となり、治療が終了となります。禁煙に成功していれば、そのまま禁煙継続のための力が備わっています。 ※患者さんの都合により再診日が変動する可能性があります。

※保険で認められている通院回数は初診を含めて計5回となり、期間は約3か月になります。

睡眠時無呼吸症候群は放置していると重大な病気や命の危険にまでつながる恐れがあります。

睡眠時無呼吸症候群について

当院では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)だけでなく呼吸器専門医として睡眠時無呼吸症候群の治療も行っています。睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)とは読んで字のごとく睡眠時に無呼吸になる病気です。無呼吸とは10秒以上の呼吸停止と定義され、この無呼吸が1時間に5回以上または7時間の睡眠の中で30回以上ある方は睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

主な症状としては、いびき、昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などが挙げられます。この病気は生活習慣病と非常に密接な関係にあり、放置しておくと死につながるこもあります。電車のオーバーラン事故や車による交通事故の原因としてこの睡眠時無呼吸症候群が話題になっています。

睡眠時無呼吸症候群はしっかりと治療を行えば、無呼吸は改善され、生活習慣病や眠気などの症状もコントロールできます。最近、熟睡感がなかったり、昼間の眠気がつらかったりと心覚えがある方は気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の生活習慣病との関連性

体組成計により骨量を推定します。必要な方はDXA法を行います。血中・尿中NTX(Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド)を測定します。必要な方は高感 度PTH(副甲状腺ホルモン)、オステオカルシン、Dpyr(デオキシピリジノリン)、1α, 25-(OH)2 ビタミンDを測定します。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

呼吸器(シーパップ)による改善療法

睡眠時の呼吸を助けるCPAP(シーパップ)療法は、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに極めて有効な治療法の一つで、現在では最も多くの患者さんに行われている治療法です。この治療法は何らかの原因で発生する気道閉塞に対して行う対処療法のひとつで、鼻マスクを利用して空気を送り込み、圧力をかけ、気道を閉じないようにします。現在では最も有効な治療法と考えられていて、睡眠時に気道が閉じなくなるため、酸素不足を解消でき睡眠の質を向上させることができます。このシーパップ療法によって糖尿病、高血圧、肥満、高脂血症などの合併症を予防でき、シーパップ療法は使った翌朝から効果を実感できます。

生活習慣予防

睡眠時無呼吸症候群になる患者さんの中に肥満が原因の方が多く見受けられます。このような場合は減量することをおすすめします。食事制限のみの減量では効果が現れにくいので、定期的な運動を併せると効果的です。ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪燃焼効果が高く、おすすめします。また過度の喫煙や飲酒は睡眠時無呼吸を悪化させてしまうので、普段の生活習慣を見直して改善していきましょう。

うつ病治療

睡眠時無呼吸症候群により快適な睡眠を取ることができず、うつ病(精神疾患)を引き起こしてしまう患者さんがたまにおられます。カウンセリングや睡眠導入薬の服用などを行い、改善を図っていきます。気になる方は一度ご相談ください。

耳鼻科の紹介

睡眠時無呼吸症候群に対する手術療法は耳鼻科的手術がほとんどです。手術療法は鼻と口に大きく分けられます。のどを広げる手術や鼻づまり改善の手術を行ったりしますが、いずれの手術も必ずしも治療の効果を保障できるものではありませんので、事前にご相談ください。