産婦人科専門医インタビュー (藤産婦人科)

産婦人科専門医

出産だけでなく、産後の母親やその周りの人たちの幸せを考え活動する産婦人科専門医

藤 伸裕先生

2017/11/15

MEDICALIST
INTERVIEW
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藤産婦人科
藤 伸裕 院長
Nobuhiro Toh

  • 日本産婦人科学会専門医
  • 日本産婦人科医会
  • 母体保護法指定医
経歴
  • 昭和31年生まれ 福岡県糟屋郡篠栗町出身
  • 福岡市立田島小学校〜篠栗町立篠栗小学校、福岡教育大付属福岡中学校、福岡県立福岡高校卒業
  • 昭和58年九州大学医学部卒業
  • 九州大学医学部付属病院
  • 九州がんセンター
  • 国立中津病院
  • 宮崎県立宮崎病院
  • 北九州市立門司病院
  • 九州労災病院
  • 千早病院

児童虐待、その他の問題の防止に向けて

児童虐待、その他の問題の防止について取材

私は、母子保健の向上のための活動に努めております。母子保健はすべての子どもが健やかに成長していくうえでの健康づくりの出発点であり、次世代を担う子ども達を健やかに育てるための基盤となります。

その活動の中で、児童虐待、家庭内暴力、いじめ、自殺、少子高齢化などの問題を解決できたら、と行政へ働きかけています。

危険因子は、若年・高齢妊娠、母のメンタルヘルスの問題、シングルマザー、貧困、社会的孤立状態などで、児童虐待だけでなく、少子化、自殺、虐待、DV、いじめなどにも関わっています。これらの因子を取り除き、育てやすい環境を作ることが急務です。産まない方、産めない方への支援も大切ですが、少子化対策のためには、今産んでいる方に、もう一人産んでもらうことが、即効性のある方法と考えます。

①妊婦(+その家族)に、母子手帳に嬉しい気持ち、幸せな気持ちを書いてもらう。

母子手帳発行の際に強く勧めてください。新しく生まれてくる子どもを楽しみに、肯定的に受け入れる気持ちが育つので、児童虐待の一次予防につながります。

②小学校高学年で自分が喜びと祝福に包まれて誕生したことを教える。

母子手帳を読ませることで気持ちが伝わります。命の大切さを知り、自分の誕生に自信を持つことで、次の世代に対しても同様に、思いやりのある行動をとるようになります。自殺、いじめ、虐待、DV、若年妊娠などを防ぎ、少子化対策にもつながります。中学生や高校生の時期には、幸せな妊娠生活やその後の育児が難しいことを、感じてもらうことで、若年妊娠、シングルマザーなどの危険因子を減らせます。

③12-16歳の時期に性についての知識を習得させる。

現在、積極的勧奨はされていませんが、子宮頸がん予防ワクチン接種の際などが良いきっかけになります。この時期の子どもたちに、性感染と妊娠について正しい知識を伝えましょう。また、妊娠出産適齢期は、概ね24‐35歳であることも伝えると良いでしょう。思春期やその後において責任ある行動がとれるようになります。

④切れ目のない支援をお願いします。

メンタルヘルスの問題解決が難しいのは、医療機関の関わりが途切れてしまうことです。妊娠期から出産までは産婦人科、その後は、小児科や内科の医師が母子を診ます。情報の連続性がありません。また、産後うつに積極的な精神科医は少なく、その対応は難しいのです。そこで、妊娠期からのケア・サポート事業が始まり、行政の役割がとても大切なものとなりました。ただ、各市町において対応はさまざまです。情報を集めるだけではなく、その有効活用していただきたいと思いす。粕屋医師会のホームページには、妊婦のメンタルヘルス、産後うつ、マタニティブルーに関して診察していただける精神科の医療機関が紹介されていますので、ご利用ください。

お母さんたちからの要望(育てやすい環境作り、育てにくさの改善)

お母さんたちからの要望(育てやすい環境作り、育てにくさの改善)について説明

①妊婦健診他の補助拡充

褥婦は、産褥期には新生児のこと、母体の心身の変化などが心配になります。産婦人科、小児科や精神科を早期に受診することで、メンタルヘルスを保つことが可能です。容易に受診できるよう補助をして欲しい。

②社会的孤立を防ぎたい

  • ・子どもを連れて出かけるのはとても面倒です。タクシーや福祉バスなどを利用しやすくして欲しい。(タクシー券を付けて欲しい。妊婦や子連れが利用しやすいよう、タクシー会社に何かお願いできないか?)
  • ・公民館など、途中で一涼み、一休み、雨宿りできる場所があると、買い物も楽しくなるし、人と話す機会も得られる。
  • ・レストランなど飲食店の入り口に、「子連れでどうぞ」などの札が下がっている、シールが貼ってあるなどすれば入りやすい。他のお客さんも子どもがいることが分かって入店するので、トラブルになりにくい。
  • ・ベビーシッターや話し相手になってくれる方が、たとえ週1回でも訪ねてくれると心強い。

③教育に関して(小学校単位で)

  • ・義務教育も無償にして欲しい。給食費や副教材費など減らして欲しい。
  • ・放課後教室や学童保育の時間に、教員OBや塾講師などに補習してもらえないか。
  • ・英語のネイティブスピーカーと話しができる教室があるといい。

④コミュニティの活用

  • ・老人と子どもで農作物を育て、収穫祭などを行う。子どもたちは、社会性を身に着け、収穫の喜びを味わい、ゲームやスマホ以外の経験ができる。老人も子どもたちと触れ合うことで元気が出ます。
  • ・老人や時間のある方に次のようなことをしていただき、子どもの個性を伸ばし、また、その他の方に学びの場を提供する。
  • ・音楽室でピアノなどを弾いて、いっしょに歌ったり、踊ったり、楽器演奏をする。
  • ・美術室で絵を描いたり、彫刻をしたり、書道を楽しむ。
  • ・作法室で、お茶の作法などを学ぶ。
  • ・お裁縫や料理を習う。

福岡県「子育て応援の店」推進事業により、登録店が増えることで、子育て応援の意識が高まっていくと思われます。 篠栗町では、母親学級、パパママ学級、親子サロン、読み聴かせ会、その他の行事予定を毎月発行し、情報提供をしています。オアシス篠栗の大広間を母子に開放し、文字通りオアシスとして利用できるようになっています。九大の演習林は、教授の許可を得て、入林届を書けば、散歩などに利用いただけるようになりました。

これから大人になっていく皆さんへ

現状、学校の教育だけではお子さんの成長と共に必要な知識が不足しているかと考えています。 そこでお子さんに知っておいてほしいことを記載しますので、是非この内容をお子さんへ見せてあげてください。とても大切なことです。

子宮頸がん予防には、ワクチンと子宮頸がん検診、どちらも必要!

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で起こります。HPVは性交渉の経験がある女性の80%以上が感染すると言われています。

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因になるHPVの侵入を防ぐ働きがあります。約70%の子宮頸がんを防げますが、ワクチンで全ての頸がんを防げるわけではありません。パートナーができたら、必ず、子宮頸がん検診も受けましょう。

性感染症について

性交渉を介してうつる病気ですが、それ以外の理由でも感染する可能性のある病気です。淋病、梅毒、エイズ、クラミジア、ヘルペス、尖圭コンジローマなどがあります。これらの病気の中には、薬の治療で治るものもありますが、治りにくくて、みなさんや、その子供たち、パートナーにも悪影響を及ぼすものもあります。

妊娠について

性交渉によって精子と卵子がでアウト、妊娠し、赤ちゃんが生まれることになります。新しい命が芽生えることは素晴らしいことです。生まれてくる赤ちゃんが、ご家族みんなから笑顔で迎えられることは、とても幸せなことです。しかし、みなさんが大人になる前や準備が整わないうちに妊娠すると、出産や育児がうまく行かないことがあります。自分と生まれてくる子供の将来の事をよく考えて行動することが大切です。

避妊と感染予防について

自分の心と体を大切にしましょう。いつか将来、大事な人と家庭を持つことになるでしょうが、その時のために慎重に行動し、健康な心身を保ちましょう。 性感染症をできるだけ防ぎ、望まない妊娠をしないためには、性交渉の時にきちんと最初からコンドームを使用することが必要です。性犯罪に巻き込まれた時や、やむなく避妊に失敗した時には、緊急避妊のために、適応のある薬を内服するという手段がありますが、48時間以内(遅くとも72時間以内)に産婦人科を受診することが必要です。

思春期や性に関する疑問について

いろんなことで考え込んだり、悩んだりすることがあるでしょう。相談できる人はいますか? 家族、先輩、友達などと話したりすることも大切ですが、話しにくいこともあるかもしれません。学校の養護の先生、町の保健師さん、保健所、電話相談窓口にも相談に乗ってくれる人たちがいます。また、専門の知識のある産婦人科の先生も相談に乗ってくれます。困ったことは早めに相談しましょう。