禁煙外来の専門医インタビュー (千代クリニック)

禁煙外来

ニコチン依存症は治療が必要な病気です。個人の意志だけでは禁煙達成は困難なもの。禁煙外来では、医師が心身共にサポートし、禁煙に導きます。

平山 祐義先生

2018/02/02

MEDICALIST
INTERVIEW
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千代クリニック
平山 祐義 院長
Sukeyoshi Hirayama

  • 医師国家資格免許
  • 日本内科学会認定専門医
  • 日本循環器学会認定専門医
  • 日本温泉気候物理医学会認定専門医
経歴
  • 昭和32年 北九州市八幡西区生まれ
  • 昭和59年 福岡大学医学部を卒業
  • 昭和59年 産業医科大学で臨床研修
  • 平成5年 NTT北九州病院健康管理課へ派遣出向
  • 平成6年 九州大学生体防御医学研究所附属病院気候内科へ入局
  • 平成17年 福岡青洲会病院内科へ勤務
  • 平成18年 千代クリニック 開院

タバコの煙はこんなに危険!

禁煙外来について説明

当クリニックには禁煙外来が設けてあります。タバコはどうして危険なのか、どうして禁煙が続かないのか、禁煙治療とはどんなことをするのかをご説明しましょう。

タバコの煙に含まれる化学物質は4000種類以上です。その中には200種類以上の有害物質、発がん性物質が50種類以上含まれています。さらに、タバコは吸う煙よりも外に流れる煙に有害物質が多く含まれますので、喫煙者本人よりも周囲の人の方が危険にさらされることもわかっています。

主な有害物質を見てみましょう。

・一酸化炭素

一酸化炭素は、血液中で酸素を運搬するヘモグロビンという物質ととても結びつきやすく、そのため、全身に酸素が届かなくなり、酸素不足の状態になります。この状態を一酸化炭素中毒といい、石油ストーブの不完全燃焼などで知られています。この一酸化炭素によって、喫煙者は慢性的に全身が酸欠状態にあると言えます。

・ニコチン

毒物に分類される化学物質で、強い依存性があります。脳の中枢神経に作用して心地よい感覚を生じさせるため、禁煙が続かない原因となります。また、血管を収縮させて血圧を上げる働きもあり、子どもが摂取すると死に至ることもある、強い毒性です。

・タール

タバコに含まれる発がん性物質の中でも量が多く、べたつくために体内で喉や肺によく付着し、がんを誘発してしまいます。

・アセトン

ペンキの除去やネイルの除光液に多く含まれ、プラスチックなどの素材を溶かす溶剤として使われます。揮発性が高く、蒸発して滞留したアセトンは引火力も強く危険です。

・ヒ素

強い毒性を持っている物質で、農薬、害虫やネズミの駆除剤、木材の防腐剤として利用されてきました。

・カドミウム

金属の一種で、電池や顔料の原料として利用されていますが、公害として有名なイタイイタイ病の原因物質でもあります。

喫煙が及ぼす様々な病気

・喘息

気道で炎症が起こり、狭くなったり、咳や痰が出たり、呼吸に困難が伴う病気が喘息です。タバコは気道への強い刺激となりますから、喘息を誘発するだけでなく、悪化させてしまいます。また、喫煙者本人だけでなく、周囲の人の症状も誘発し、悪化させる原因となります。

・高血圧、動脈硬化

タバコにはニコチンなど、血管を収取させ、血圧を上げる働きをする物質が含まれています。また、一酸化炭素による酸素欠乏状態も、血管に負担をかけることになります。このため、喫煙者は非喫煙者よりも血圧が高くなりやすく、高血圧によって負担がかかり続けた血管は傷ついて、動脈硬化に進行します。

・心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中

心臓の血管が詰まる心筋梗塞、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳卒中は、いずれも動脈硬化を原因とすることの多い病気です。発症時の命の危険も大きく、助かっても後遺症が強く残ることが多い、恐ろしい病気です。

・肺がん

日本のがん死亡者を部位別に見ると、肺がんは男性で1位、女性は2位を占めています。さらに、タバコによる肺がん発症リスクは、3~5倍とされ、タバコによる悪影響は無視できないものとなっています。

・COPD(慢性閉塞性肺疾患)

気道の深い部分、気管支で炎症が起こり、気道が狭くなり、咳や痰を伴って呼吸困難が起こります。さらに、肺の中で酸素と二酸化炭素の交換を行う器官を肺胞といいますが、これが減っていく症状を併発する病気がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。COPDにかかる患者さんの9割ほどが喫煙者です。

禁煙したいのに続かないのは、ニコチンの依存性が原因です

喫煙者にとって禁煙が難しいものであるのは、意志の問題ではありません。先に述べたように、タバコに含まれるニコチンには強い依存性があります。タバコを吸ってニコチンを体内に取り込むと、快感を生じさせるドーパミンという物質が脳内に作られます。ドーパミンによって生じる快感や満足感は、喫煙を習慣化させてしまう、とても強い力があるのです。

ですから、禁煙外来で医師のアドバイスと禁煙治療薬の助けを得て行う禁煙は、自分一人で行う禁煙よりもはるかに楽に続けることができるでしょう。

禁煙外来では薬を使った治療も行います

禁煙治療では薬の力も借りて、禁煙を行います。禁煙治療で使う薬を禁煙補助薬と言い、喫煙することで得られる快感や満足感を抑制する働きがあります。脳に作用してニコチン依存症を改善し、禁煙をより楽に継続できるよう、サポートしてくれる薬です。

禁煙外来の治療の流れ

①初診

・ニコチン依存度チェック

喫煙本数や、これまでの禁煙歴、禁煙した時の気持ちや体調の変化などをアンケート形式で回答し、依存度をチェックします。

・呼気中の一酸化炭素濃度の測定

一酸化炭素はタバコに含まれる有害物質の中でも毒性が強い物質です。呼吸で吐く息の中に含まれる一酸化炭素の量は、喫煙本数に応じて増えていき、禁煙すると減りますので、禁煙が進む中で、体への影響がよくわかる数値です。

・「禁煙宣言書」作成

禁煙を開始する日を決めて、文書にサインします。

・禁煙のアドバイス

ニコチンの依存性の説明と禁断症状、対処法などをアドバイスします。禁煙を一人で行っても続かない大きな理由が、このニコチン依存症です。禁煙外来で行う禁煙は、医師から具体的なアドバイスを受けることができ、禁煙継続できる確率が大幅にアップします。ぜひ活用してください。

・禁煙補助薬の処方

依存性のあるニコチンが切れた時に起こる、イライラや頭痛などの離脱症状を緩和して、禁煙を継続しやすくしてくれる薬です。当クリニックでは、貼るタイプと飲み薬の2種類を患者さんに合わせて処方しています。

②2回目以降の診察

・禁煙状況や体調のチェック

患者さんの体調のチェックや、禁煙できているかどうかをお聞きします。

・呼気中の一酸化炭素濃度の測定

禁煙を始めると、呼気中の一酸化炭素濃度はすぐに変化が現れます。6時間後には呼気中の一酸化炭素量は半分になり、48時間継続すれば、喫煙していない人と同程度の量まで下がります。禁煙の効果がいち早く実感できる検査です。

・禁煙が辛いときのアドバイス

もう二度とタバコが吸えないと考えてしまってつらくなる患者さんが多く見かけられます。「二度と」ではなく、「今日だけ」という気楽さで禁煙を積み重ねていくと続けられることが多いようです。他にも、禁煙によるニコチンの離脱症状を、より楽に乗り切る方法などもアドバイスします。

禁煙治療は3回目の通院の頃から楽になります

初回の受診後は、2週間後に2回目、1ヶ月後に3回目の診察にご来院頂きます。3回目の受診日の頃には、禁煙の効果を時間する患者さんが多く見られます。こんな変化が起こります。

  • ・咳や痰が減った
  • ・息切れすることが減った
  • ・食べ物がおいしくなった、食欲が出てきた
  • ・肩こりが楽になった
  • ・肌の調子が良くなった

この頃には、1ヶ月禁煙を続けてこられたという自信が生じて、禁煙により一層前向きに取り組む患者さんが増えます。

禁煙治療は健康保険の適用も受けられます

禁煙治療は初回の受診から12週間、計5回診察で行いますが、健康保険の適用を受けて治療を受けることができます。健康保険の適用を受けるには、以下のような条件があります。

  • ・直ちに禁煙する意志を文書で表明すること
  • ・ニコチン依存度チェックで、ニコチン依存症の診断が下りること
  • ・「1日の喫煙本数×喫煙年数」が200を超えること

上の条件を満たす患者さんは、保険適用で禁煙治療を受けられます。

禁煙を続けていくために

禁煙が続けられないという方は、ぜひ当院へおいでください。おひとりで行う禁煙が続かないのは、タバコに含まれるニコチンの依存性によるものなのです。医師のアドバイスとサポートを受けて行う禁煙治療は、きっともっと楽に、長く、続けられることでしょう。

当クリニックでの禁煙治療を終えた患者さんでも、時々弱気になることがあるでしょう。そんなときは、タバコの害はもちろんのこと、禁煙しているときに得られたメリットを思い出してみましょう。どうして禁煙しようと決心したのか、その理由を思い出すことも効果的です。万が一、もう一度喫煙してしまっても、またすぐに禁煙してみましょう。12週間も禁煙できた患者さんなら、きっと継続できるはずです。

禁煙のお悩みは、ぜひ当クリニック、禁煙外来までご相談ください。