乳がんの専門医インタビュー (ひろ乳腺クリニック)

乳がん

乳がん予防の取り組み、早期発見のための丁寧な乳がん検診、目立たない傷で行う手術を中心とした最善の乳がん医療を通じて、女性の未来を守る乳腺専門医

山口 博志先生

2017/11/09

MEDICALIST
INTERVIEW
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ひろ乳腺クリニック
山口 博志 院長
Hiroshi Yamaguchi

  • 日本外科学会外科専門医
  • 日本乳癌学会乳腺専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医・暫定教育医
  • 精度管理中央委員会認定検診マンモグラフィー読影試験評価AS
経歴
  • 1997年 島根医科大学医学部卒
  • 1998年 九州大学医学部付属病院 第二外科(消化器・総合外科)
  • 1999年 広島赤十字・原爆病院 外科
  • 2003年 九州大学大学院医学系学府博士課程卒
  • 2005年 独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター・乳腺科
  • 2008年 済生会唐津病院・外科医長
  • 2010年 独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター・乳腺科
  • 2011年 済生会福岡総合病院 乳腺外科部長
  • 2015年 ひろ乳腺クリニック 院長

女性のがんで最も多い乳がん

女性のがんで最も多い乳がんについて説明

現在は、女性の約3人に1人ががんになると言われています 。その中で1番多いのが乳がんです。検診の重要性が叫ばれていますが、残念ながら福岡県女性の検診受診率は30%と低く、全国平均の34%を下回っているのが現状です。

一般的には、乳がんでの死亡率減少を目的に40歳以上は定期的な検診を受けるように推奨されています。 ただ、日本の乳がんの現状を見ると、30代から増え始め、30代後半から急激に増えて40代・50代がピークとなっています。早期発見のためにも少なくとも30代後半になったら、定期的な検診を意識してほしいと思います。気になることがあれば、いつでも気軽に相談をしてください。

乳がんの早期発見の重要性

乳がんを早期に発見することができれば、例えば、手術で乳房を全摘出しなくて済んだり、抗がん剤のようなすごく辛い治療をしなくて済んだりと、体力的にも精神的にも治療の負担が少なくて済むというのが重要な違いです。それほど乳がんを早期発見することは重要なのです。しこりの大きさで言うと、2㎝を超える前に見つけられたら早期発見。定期的に検診をしている人は1㎝以内、自分で定期的に胸を触ってセルフチェックをしている人は2㎝以内、一方、全く何もしていない人は、3㎝を超えて見つかることが多いという調査結果もでています。

検診の方法はマンモグラフィー検診が基本になり、自治体の公費負担の対象外にはなりますが、超音波検査を併用すると、40代では早期乳がんの発見率が1.5倍に増加するのでおすすめです。マンモグラフィーは痛い・被曝が心配という考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、乳房を板に挟む数秒間は確かに多少の痛みは伴いますが、我慢できる範囲内であることがほとんどです。生理前を避けた方が痛みは少ないです。X線撮影ですので被爆はしますが、被爆量は海外に飛行機で移動する間に受ける自然放射線とそれほど変わらない程度ですから、健康への悪影響はあまり考えなくていいでしょう。

乳がんにならないために、日頃から気を付けた方が良いこと

乳がんにならないために、日頃から気を付けた方が良いことについて

乳がんが増えてくる働き盛り、子育て世代はホルモンバランスが大きく変化する時期。更年期症状とも重なることが多いです。更年期症状がひどい場合、女性ホルモンを補う治療をしますが、多くの乳がんは体内の女性ホルモンをエサにして大きくなるため、乳がんのリスクも高めてしまいます。また、現在、乳がんを患っていてホルモン治療を行っている場合には、女性ホルモンを抑えているため、副作用的に、ホットフラッシュ (多汗) やのぼせなどの更年期症状が出ることも少なくありません。

30代~50代といえば、これまでのライフスタイルで積み重なった影響が、身体の変化へと生じてくる時期です。働き盛りの年代ですから、責任ある仕事でバリバリ働いていたり、結婚や出産で環境が変わったりと、仕事も生活も忙しい人が多いです。それが積み重なって、20代ではさほど感じなかった体力的、精神的な疲れを感じるようになったり、体の不調が少しずつで始めるのです。乳がんが増え始めるのも30代からです。

私は乳腺が専門ですから、乳がんにならないように、という点でおすすめしたいのは食生活の改善です。

  • 動物性の脂肪分を取り過ぎること
  • お酒を頻繁に飲むこと
  • タバコを吸うこと

これがあると乳がんになるリスクが高まると言われています。外食が多い人は自然と動物性の脂肪を多く摂ったり、お酒を飲む機会も増えるでしょうから、野菜をなるべく多く食べるとか、量を飲み過ぎないようにするなど、食べるものに気をつけてほしいと思います。あとは適度な運動をすることです。

積極的に摂ったほうがいい食べ物としては大豆をおすすめしています。 豆腐や納豆、豆乳などの大豆製品は意識して食べてほしいと思います。 大豆に含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモン・エストロゲンと同じような働きをするとして注目されてきました。 女性周期を整え、将来の更年期に備える意味でも、大豆を意識して食べることは有用です。 大豆イソフラボンに含まれる「ダイゼイン」という成分が、腸内細菌の力で「エクオール」という成分になると、より女性ホルモン・エストロゲンに似た働きをすると言われています。

当院では働き盛りの女性の皆さんには、乳がんだけでなく、様々な婦人科系疾患に罹らないように、正しい食生活を送る事をアドバイスしています。 働き盛りの女性の皆さんには、まずは乳がんに罹らないために、頑張り過ぎず、生活を見直すことを行うことが大事です。更年期のさまざまな不調を和らげる手段として、医薬品以外にも選択肢があることも知っておいてほしいですね。

追求するのは患者さんの幸福度

乳がんを治療しても患者さんが幸せになれなければ、何の意味もない。女性の未来を守るために何よりも大切なことは、乳がんを未然に防ぐこと(予防)と身体や心への負担が大きな治療を受けなくてすむ段階での早期発見ではないかと私は考えています。

その為にも、女性が気軽に安心して乳がん検診に来ていただける場所を用意し、私のこれまでの様々な経験から、乳がん予防の取り組み、早期発見のための丁寧な乳がん検診、目立たない傷で行う手術を中心とした最善の乳がん医療を通じて、女性の未来を守るための乳腺クリニックをスタッフと一緒に創り上げていきます。 また、当院では私が手術まで行っていますので、初診から術後の定期的経過観察まで当院で受けることができます。担当医が頻繁に変わることがなく、患者さんの心身の負担も減るかと思います。

私は、日本乳癌学会が発行している乳癌診療ガイドラインの薬物療法の委員だった為、患者さんへ症状や治療内容などに関して分かりやすく説明することできます。 医療の専門用語などはどうしても分かり辛い内容が多く、患者さんもよく理解できないまま治療を受けたり、乳がんの治療が無事に終わっても不明点を残したまま、結局セカンドオピニオンで他院へ相談に行ったりされる方もいらっしゃいますので、私は患者さんがきちんと理解し納得して治療を受けられるように心がけています。

乳がんにかかる危険性は人それぞれ違うと予測されますので、その人に応じた乳がん検診を意識的に行っていくことが大切です。一般的には40歳を過ぎたら定期的なマンモグラフィー検診が勧められていますが、ご家族のなかに乳がんや卵巣がんになった人がいるかたは、より早期からの定期的な検診を行うことも予防の観点からは大事です。自覚症状がないときこそ、年に1度、自分のため、周りの大切な人のために、気軽に当院へ乳がん検診にお越し下さい。スタッフ一同、おもてなしの心でお待ちしております。