リウマチの専門医インタビュー (としま整形外科リウマチクリニック)

リウマチ

医療によるしっかりとした治療が回復への早道。薬物療法とリハビリとを併用した関節リウマチ治療

田中 潔先生

2017/09/22

MEDICALIST
INTERVIEW
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としま整形外科リウマチクリニック
田中 潔 院長
Tanaka Kiyoshi

  • 日本国医師
  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本リウマチ学会専門医
  • 日本体育協会公認スポーツドクター
  • 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
  • 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
経歴
  • 1983年5月 日本大学医学部卒 医師国家試験合格 日本大学医学部 整形外科講座入局以後 日本大学医学部付属板橋病院 駿河台日本大学病院 日本大学医学部付属稲取病院 横須賀市立市民病院 豊島区要町病院 国立立川病院(現在国立防災センター)にて整形外科の医療・医学の研鑽を積む
  • 1990年2月 整形外科専門医同年9月米国ボストンマサチューセッツ総合病院にてハーバード大学医学部整形外科のフェローとして、関節軟骨の変性による細胞生物学の研究に従事
  • 1990年2月 整形外科専門医同年9月米国ボストンマサチューセッツ総合病院にてハーバード大学医学部整形外科のフェローとして、関節軟骨の変性による細胞生物学の研究に従事
  • 1995年 日本大学エベレスト登山隊学術調査員
  • 1999年9月 高知市医療法人瑞洋会田中整形外科病院整形外科部長、副院長を歴任、同時に専務理事として病院運営に預る。同時に東京都中野区慈生会病院 総合東京病院整形外科非常勤勤務
  • 2015年11月 としま整形外科リウマチクリニックを開設

「動かして治す運動療法」を実施。患者さんの生活の質の向上をめざす

田中潔院長

当クリニックの特長は、広く運動療法を取り入れた治療をおこなっているということです。筋力の強化、関節可動域の改善、歩行機能の改善および日常生活機能の改善を目指す治療をおこなっています。当クリニックには運動器リハビリテーションの経験を有する私とともに、優れた理学療法士2名が勤務しており、十分な設備とスペースを確保し、運動器リハビリテーション料(II)の施設基準を満たして、リハビリテーション療法を実施しています。
また関節の超音波検査やMRIなどによる画像診断を駆使して関節痛、関節炎の症状の中から関節リウマチを含めた総合的な診断をおこない、ここの患者さんに合わせた的確な治療をおこなっています。
さらに、整形外科としての豊富な経験を駆使して、神経ブロックや内服薬などによる痛みの緩和、コントロールにも高い治療効果を上げています。

リウマチ性疾患と関節リウマチとは。

田中潔院長

リウマチ性疾患とは、一般にリウマチと呼ばれている関節リウマチを含むリウマチ性の疾患すべてを指し、関節だけでなく骨や筋肉、内臓などにも影響する200種類もの疾患の総称です。その原因は、1.免疫異常によるもの、2.細菌やウィルス感染によるもの、3.代謝異常によるもの、4.外傷や加齢に伴う骨や軟骨の変形によるもの、5.ストレスによる心因性の疼痛など、大別するだけでも多様で、原因の発見と診断が難しい病気の一つです。近年では免疫異常による膠原病とのとらえ方が広まっており、内科的治療も進んでいます。しかしリウマチ性疾患の検査結果や症状の出方は個人差が大きく、原因の多様さも相まって、診断に対する治療に思うような効果が得られない場合も多いのです。
特に関節リウマチは、痛みなどの症状が出ていながら、血液検査などの生化学的検査にはリウマチの兆候がなかなか現れないことも多く、また逆に、生化学検査的にはリウマチの原因となる抗体が多く見つかっていても、症状が出ないということも実例として多くあるのです。

関節炎、関節痛における関節リウマチとその他の疾患の見分け方は?

田中潔院長

関節リウマチは痛む部位が左右対称に現れることが最もわかりやすい特徴です。例えば手首が痛む場合も、右手首だけではなく、同様に左手首にも症状が現れた場合、関節リウマチの可能性が高くなります。外的要因(同時にひねる、ぶつけるなど)がなければ、関節リウマチも想定しての診察をおこなっていきます。しかし、関節痛、関節炎には変形性関節症、反応性関節障害など、関節リウマチの他にもさまざまな疾患があり、特に変形性関節症の症状は関節リウマチによく似ており、それぞれの可能性を検査によってひとつずつ排除していく必要があります。
検査には、レントゲン、超音波検査機、MRIなどを使用し、リウマチの抗体の有無を確認するために血液検査もおこなっていきます。さらに関節リウマチに関する経験豊富な整形外科医による問診、触診が有効です。 関節リウマチには、明らかな関節の変形や腫れが起こっている場合もあれば、初期には外観的には問題なく、腫れも見当たらないが患者さんは痛みを感じていらっしゃると言う場合もあります。この状態で関節リウマチを発見するのは難しく、血液検査でも兆候が現れない場合もあります。正確な診断のためにはいち早く専門医に相談されることをおすすめします。

関節リウマチに対する一般的な治療法は?

院内風景

関節リウマチは、自己の免疫機能の過剰な反応により、関節の組織が破壊されていく病気です。これにより、関節痛、関節炎がおこり、長期にわたれば関節の変形や損傷もおこってきます。この関節リウマチに対しておこなわれる治療は、免疫抑制剤によって免疫機能を抑えることと、抗炎症剤、消炎鎮痛剤などによって、炎症を鎮めることです。
この免疫抑制剤にはメトトレキサートという抗がん剤と同じ成分のものが使用されており、がん治療の1/1000程度の量で関節リウマチに有効です。膠原病などの内科的疾病にも使用されていて、これがゴールデンスタンダードとされています。抗炎症剤、消炎鎮痛剤に関しては、痛みがひどい場合には関節に直接注射する場合もありますが、日本には世界的に見ても優れた貼付剤があり、十分痛み抑えられる場合もあります。
関節リウマチは前述のとおり関節の変形、損傷が進行する疾患です。異常を感じたら決して放置せず、早期の診断、早期治療が大切です。

田中潔院長

個人差の大きい関節リウマチの治療に豊富な経験で対応

医療には多くの症例(エビデンス)に基づいたエビデンスメディスン(標準治療)をまず実施することが必要です。しかし、前述のとおり関節リウマチは非常に個人による差が大きい疾患です。テーラーメイドメディスン(個別治療)もおこなっていかなければ、患者さんの症状に即した治療とは言えません。患者さんの個性は本当にさまざまで、社会的、経済的背景や、生まれ育った環境、仕事や学業の状況などでも疾患や症状は変わってきます。
検査結果をもとに、患者さんとよく話し、患者さんが納得できるかたちで治療を進めて行くことが、症状を緩和させ、寛解、回復につながる最短ルートです。

関節リウマチにもリハビリテーションによる治療を実施

田中潔院長

リウマチにリハビリテーションというと、驚かれる方も多いですが、リハビリは、免疫機能を向上させることがわかっており、専門の医師と理学療法士による正式なリハビリテーションは、関節リウマチにも大きな効果があります。また関節リウマチだけでなく、整形外科を訪れる方々のさまざまな疾患に対する治療にもリハビリテーションは有効で、急性期ではなく慢性期の疼痛コントロールに顕著な結果が出ています。
リハビリテーションは、炎症に対応して、血液の循環を良くし、体の緊張を低下させ、骨格、筋肉をコントロールすることで体を支える組織を強固にしていきます。
当クリニックでは、私の指導のもと、豊富な経験を有する理学療法士がリハビリテーションによる治療にあたっています。当クリニックではしっかりと筋骨格系のチェックをしてリハビリをおこなった患者さんの8〜9割が運動機能において改善しています。
また高齢者の場合、入院中は設備があるためリハビリがおこなえても、退院後はリハビリができなくて、再び運動機能が衰えてしまう。そんな方が多いのも現実です。当クリニックでは退院後もリハビリを続けられる街の医療機関として、多くの方々の健康に寄与していきたいと考えています。本人はあまり意識していらっしゃいませんが、初めての来院時と比べて明らかにしっかりとした足取りになった80代の女性など、年齢にかかわらずリハビリの効果は現れています。

患者さんそれぞれに合った治療法を見つけていくということ。

関節リウマチ=免疫抑制剤の処方では治療が上手くいかない症例には私自身が何度も出会っています。
例えば、内科で関節リウマチをと診断され、免疫抑制剤による治療をおこなっていたが、関節痛に改善が見られないばかりか、体全体の不調を訴える患者さんがいました。私は各種検査の結果や、患者さんの問診・触診の結果から、免疫抑制剤の使用を取りやめ、漢方薬の処方をおこないました。これにより、この患者さんの関節の痛みは緩和され、体調も回復し、日常生活を支障なくおくれる状態になりました。
高齢の患者さんに関しては、免疫抑制剤による副作用が大きく出る場合も多く、最近ではバイオ製剤を使うと改善される場合も出てきました。これらの治療薬、治療法の選択には、多くの症例を見てきた経験が生きてきます。関節リウマチには検査の結果だけで判断せず、総合的な診断が必要です。そしてこの診断を受けて効果的な薬剤を使用し、適切なリハビリテーションを併用した治療をおこなっていくことがなによりも有効なのです。