不妊治療の専門医インタビュー (横浜HARTクリニック)

不妊治療

時代とともに変化する不妊治療、それぞれに合った治療スタイルを提供するプライベートクリニック

後藤 哲也先生

2016/09/20

MEDICALIST
INTERVIEW
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横浜HARTクリニック
後藤 哲也 院長
Tetsuya Goto

  • 産婦人科専門医
  • 生殖医療専門医

受精率低下の現実

インタビュー時の後藤先生

体外受精は本来、卵管が詰まっていて精子が卵まで届かないという方のために、身体の外で卵子と精子を出合わせるという目的で始められました。卵管の問題だけであれば、きちんと体外受精を行うことで、80%以上のカップルは妊娠することができると思います。
しかし、現在は精子に問題がなく卵管も詰まっていないのに妊娠できないという方々が、治療のステップアップとして体外受精へ進むことが多くなってきました。そういう方々の一番の原因はやはり晩婚化による女性の年齢にあると考えられます。

女性の社会での活躍やライフスタイルの多様化により、結婚、出産年齢が遅くなるのは当然の傾向であるとは思いますが、ヒトとしての生物学的な生殖年齢は昔も今も変わらず、できれば35歳までには出産を考えるのが適当です。

なぜ女性の年齢がそれほど妊娠の可能性に影響するかというと、それは卵子の数と質のためです。
男性では日々新しく精子が作られていますが、女性の場合は生まれた時に卵子の数が決まっています。最初は何十万個とあるのですが、年齢とともにだんだんと減っていき、30代後半からは数の減少が加速するだけでなく1個1個の卵子の質も低下します。そうなると、どの生理周期にもいい卵子が育つとは限らなくなり、いい卵子が育つ周期に出会うまでに時間がかかるようになります。
そのような30代後半に体外受精を始めると、いつも良い卵子が得られるわけではなく、治療あたりの妊娠率は低下します。良い卵子と精子が得られなければ、どんなに医師や培養士の技術が高くても、結果を出すことはできません。従って、良い卵子に出会えるまである程度通っていただく必要があり、1年を目処にこういったチャンスを見逃さないように治療をしていくことが大切です。

個人クリニックとしての役割

体外受精の様子

不妊症は緊急性のある病気ではない(命に関わる病気ではない)と考えられたり、体外受精を行うためには高度な設備や専任スタッフが必要になったりで、総合病院ではあまり積極的に治療が行われていません。
しかし、体外受精では、良い卵子を得るためにベストな時期があり、日々の診療でもキメの細かさが非常に重要で結果を左右すると考えています。

そのような丁寧な診療を行うには、不妊症に特化して、迅速な診療方針の決定と行動ができる個人クリニックが適しています。日本には600近い体外受精登録施設がありますが、実際に治療の多くを実施しているのが個人クリニックです。

患者さんも、「この周期に良い卵子が育つかもしれない」という真剣な気持ちで1周期1周期治療に向き合っています。例えば、明日採卵日という時に台風が来そうなら、前日からクリニック近くのホテルに宿泊されるでしょうし、スタッフも同様です。クリニックとしては、採卵すべき日に採卵できるようなクリニックの運営システムが必要です。大切な卵子、精子、受精卵をお預かりする培養部スタッフは基本365日毎日出勤しています。現状、当院が採卵を行わないのは、年末年始の点検を兼ねた1週間だけです。

このような診療理念でクリニックを運営するには、保険診療ではなく自費診療で行う必要があります。設定した治療費には、患者さんそれぞれとゆっくりと話せる時間、設備投資、スタッフの教育なども含まれます。クリニックごとに異なる費用は、それぞれのクリニックのポリシーが反映されていますので、ご自分達に合うクリニックを見つけることも治療を継続する大きな因子です。

はじめに接するのは医師以外のスタッフ

横浜HARTクリニックの受付

不妊治療は1年間を目安としてその期間どれだけ頑張れるかが重要です。通い続けていただくには、治療面だけでなく接遇面も大きく影響してきます。患者さんがはじめに接するのは医師ではなく、受付スタッフや看護師です。

当院では、その場だけの事務的な対応をせず、患者さん一人一人を「縦に見る」ように指導をしています。今日はどなたが来院されるのか、その方々が今周期はどういう治療をされているのかをしっかり把握して臨むという意味です。各部署でマニュアルを作成して、患者さんに「寄り添う」診療が徹底されるよう、機会あるごとにスタッフと意見交換をしています。また、院内には御意見箱を設置し、いただいたご意見は回答と共にファイルに入れて、クリニックの待合室に置いています。

横浜HARTクリニックの待合室

不妊に悩む方々へ

治療を根気よく続けていくことは精神的にも大変なものがあります。当院には毎月30組くらいの新しいご夫婦が来院されます。通院を続けていただければ40%くらいの方は妊娠して産科に移られていると思いますが、いい精子といい卵子が出会うまでには時間がかかることもありますので、そこをしっかりとご理解いただきたいと思います。

また、不妊治療では、クリニックの実績をどのように評価するかは複雑です。1治療周期ごとの妊娠率よりは、来院された方々がどのような治療を受けて、そのうちの何人が妊娠したのかという「患者さんあたり」の妊娠率の方が現実的だと思います。ホームページなどを見るときには、常に「分母は何か」を見て欲しいと思います。短期間通院してうまくいかなかったからといって、転院を繰り返していると時間だけが過ぎてしまいますので、ある程度話を聞いてここにしようと決めたら、1年を目標に通院してみて下さい。

不妊治療を専門にしていない産婦人科に行くと、お産をされる方など色々な方がいる中で「まだ若いのだから、もうしばらく頑張ったら」という感じに対応されることもあるようです。不妊治療とはこのようなものだと思ってしまい、足が遠のいた結果何年も経ってしまったという方もいらっしゃいますので、最初から専門のクリニックに相談されることをお勧めします。

どの時期にクリニックに行けば良いか、という問いに答えはありません。「そろそろ行った方がいいかな」とご夫婦で話が出た時に、まずは話を聞きに来て欲しいと思います。悩みをお聞きして、正しい情報をお伝えし、それぞれのご夫婦に最適なテイラーメイドの治療をご提示することが私達の使命だと思っています。