小児科専門医インタビュー (Sunnyこどもクリニック)

小児科専門医

常に2歩、3歩先を考えるのが小児医療。親御さんとのコミュニケーションでベストの治療を。

中村 英明先生

2017/03/15

MEDICALIST
INTERVIEW
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Sunnyこどもクリニック
中村 英明 院長
Hideaki Nakamura

  • 日本小児科学会 小児科専門医
  • 日本小児循環器学会会員
  • 日本小児アレルギー学会会員
経歴

2001年 東海大学医学部卒業、以後研修医を経て2003年東海大学医学部付属病院小児科入局し、小児病棟、NICU病棟で勤務。2005年に秦野日本赤十字病院 小児科医員、2006年東海大学大磯病院小児科医員に。2008年東海大学医学部付属病院NICUに勤務。2010年神奈川県立こども医療センター 循環器科勤務。2012年東海大学医学部付属病院小児科助教就任、同小児病棟NICU病棟勤務。2013年伊勢原協同病院小児科医長就任。2016年Sunnyこどもクリニック 開院。現在も東海大学の小児科非常勤講師として循環器班に属し、学校心臓検診、伊勢原協同病院小児科心臓外来(水曜日)を担当。

小児循環器の専門領域を背景に幅広い診療に対応する小児クリニック

待合室とロゴ

当クリニックは2016年の9月に開院したばかり。東急田園都市線の梶が谷駅の目の前の医療モール7階にあり、開院から地域の皆様に温かく迎えられ、子どもたちの健康を守る拠点として医療を展開しています。私たち小児科クリニックに必要なことは、子どもたちはもちろん、親御さんにも安心して来院していただける環境を整えること。キッズスペースに子どもたちが楽しめるおもちゃや絵本を配置。梶ヶ谷の街が一望できる待合室は、インテリアも明るく開放的で、同伴の親御さんにもきっとリラックスしていただける空間になっていると思います。

また、当クリニックは、一般診察室と感染症室を分けて診察をおこなっていることも特長です。感染症室は、はしか、水疱瘡などの子どもに多い感染症からインフルエンザまで、出入り口から一般診察との動線を完全に分け、クリニック内での感染リスクを抑制しています。

私自身は小児科専門医として、子どもたちを対象とした幅広い診療に対応しています。その背景には小児循環器を専門に、東海大学医学部付属病院や伊勢原協同病院での小児病棟、NICU(新生児特定集中治療室)病棟などでの診療経験があります。そこで私が体験的に学んだのは、小児医療においては、2歩、3歩先を考えた治療をおこなわなければならないということ。お子さん、親御さんとのコミュニケーションを密に、より良い医療を実践していきます。

重度の先天性心奇形の診療経験から得た親御さんとの信頼関係の大切さ

中村院長

様々な病気や疾患について医師に直接相談することができる大人と違い、子どもたちは、体の不調を誰かに上手く伝えることができません。まだ言葉を話せない乳幼児ならなおのこと。だからこそ私は診療において親御さんとの連携を特に重要視しています。お子さんの病気の状況を十分に理解してもらい、協力して治療にあたってもらうためには、親御さんとの強い信頼関係を築くことがまず大切なのです。

私は、大学病院での勤務経験の中で、ある複雑な心奇形の新生児を担当したことがあります。小児循環器専門の小児科医として、そのお子さんを診察し、治療方針を立て、小児心臓外科医と共に治療にあたりました。その際、親御さんとのインフォームド・コンセントを徹底しました。薬剤による内科治療と手術による外科治療を併せて、そのお子さんに対するできる限りの治療をおこないました。入院治療でしたので、もちろん実際の治療をおこなうのは私たち医師や、医療スタッフですが、決して親御さんを置き去りにすることなく、「今起こっていること」「私たちがやろうとしていること」に関して、専門用語を極力使わず、わかりやすい言葉で説明していきました。親御さんもそんな私たちの姿勢に真剣に応じてくれました。しかしそんな必死の治療の甲斐もなく、そのお子さんは数ヶ月で亡くなってしまったのです。親御さんの落胆はいかばかりか。私たちも新しい命を救えなかったことがとても残念でした。

しかしその数年後、親御さんはまた新しい命を抱いて私たちの病院を訪れました。亡くなったお子さんの弟にあたる赤ちゃんです。しかもその赤ちゃんも軽度ながら先天性の心疾患があったのです。親御さんは、その治療を私たちに任せたいと、病院を訪れてくれたのでした。検査をおこなうと、そのお子さんに心疾患はあるものの、日常生活に支障のないレベルだとわかり、特段の治療はおこなわず、経過観察となりました。私たちと親御さんとの信頼関係が築けたことの一つの証しとして、私の貴重な体験となりました。この経験を現在のクリニックの診療にも活かしています。

お子さんの病気はお母さんのせい?そんな誤解を解いていきたい。

診察室の小物

お子さんの病気をお母さんのせいだと考える風潮は残念ながらいまだにあります。そんな間違った考えからお母さんが責められるなどということはあってはなりません。しかしそれよりも実際に病気のお子さんの治療をおこなって感じるのは、お母さん自身がお子さんの病気に関して、自分のせいだと思い込んでいるということです。先天性の疾患にせよ、感染症など生活の中で起こった病気にせよ、お子さんの病気がお母さんのせいということはありません。親御さんにそんな思い込みをまず払拭していただくべく、私は診察によって、お子さんの状況を把握し、しっかりと説明することにしているのです。

また、お子さんの病気でクリニックを訪れる際、やはり、付き添いはお母さんという場合がほとんどです。しかし重度の病気や、治療に対して家族全員の協力が必要な場合は、ご両親がいらっしゃるお子さんには、できるだけ両親そろってクリニックに来ていただき、説明する機会をいただけるようお願いしています。お父さんにもお子さんの状況をしっかりと理解していただくことはもちろんですが、お母さんがひとりで抱え込んでしまうことのないよう、ご家族と私たち全員でお子さんの治療に当たるのが当クリニックの方針なのです。

予防接種の対応をフレキシブルに

感染室専用出入り口

人の健康のために大切なのが生後数ヶ月から乳幼児期、少年期におこなう各種予防接種です。定期接種としてヒブ(インフルエンザ菌)、肺炎球菌、4種混合、BCG、麻疹・風疹(MR)、水痘、日本脳炎、2種混合があり、任意接種として、ロタウィルス、B型肝炎、おたふくかぜがあります。当クリニックでは14:00〜15:00に予防接種、乳幼児健診のみをおこなう時間帯を設けており、それ以外でも診療時間内なら予防接種、乳幼児検診を受け付けています。

乳幼児健診は大切なお子さんが健康に順調に育っているか、病気はないかなどを検査すると同時に、専門医師が子育てに関してお子さんにあったアドバイスをおこない、話し合う機会でもあります。当クリニックでは親御さんの心配や悩みに応えていけるよう、一人ひとりに十分な診察時間をとり、コミュニケーションを密にしています。予防接種についてやお子さんの成長・発達についての疑問などに具体的にお答えしていきます。

来院されるお子さんやご家族が「何を求めているか」を大切に

まだ、開院して間もない当クリニックですが、良いメンバーと出会うことができ、万全の体制で来院される皆さんをお待ちしています。受付スタッフが診察前に患者さんの状況のヒヤリングをおこないます。それは私の診察においての大切な情報源となります。個性的なメンバーがそろう当クリニックですが、明るく、温かく、元気がでる対応ができるのは全メンバー共通です。安心して何でも相談してください。

私たちがまず注目しているのは来院された方々が「私たちに何を求めているか」です。病気やケガの治療をおこなうだけでは私たちの仕事が完了したとは言えないのです。特に私たち小児科医は来院された皆さんから状況をお聞きし、診察した内容を、親御さんにしっかりと説明できることが大切です。仕事の8割は話すこと。そんな心構えで診療をおこなっています。

患者さんとお話をする中村院長

地域で気軽に相談できる子どものための「かかりつけクリニック」に

地元や出身大学が同じ神奈川県内であると言うことを除けば、私にとってこれまで縁もゆかりもなかったこの梶ヶ谷という街。しかし、開院から数ヶ月で、1300名を超える患者さんとそのご家族に出会い、この地域への愛着が増すとともに、医療で貢献していきたいという気持ちがさらに強くなってきました。地元のおもちゃ屋さんとのコラボでイベントを開催したり、春には地元のお祭りにも協力して参加イベントを計画しています。

私が医師になろうと思ったきっかけには2人の医師の存在があります。1人は外科医の祖父で、もう1人は私が子どものころに喘息でお世話になった小児科医の先生。その先生は子どもに対して本当にほがらかで、その姿に子ども心に憧れていました。私自身、子ども時代に喘息で辛い経験をしたことから、子どもたちにとって少しでも痛くない優しい治療をおこないたい。そんな思いで、これからも子どもたちにしっかりと目を合わせてこのクリニックでしかできない治療をおこなっていきたいと思います。