前立腺
大学病院での経験と連携を活かし、安心・安全な前立腺がんの治療を提供する泌尿器科専門医
2017/09/14
- 経歴
- 昭和53年 西南学院中学校卒業
- 昭和56年 ラ・サール高校卒業
- 昭和63年 防衛医科大学校 卒業 防衛医大病院研修医
- 平成2年 九州大学泌尿器科入局
- 平成4年 九州大学大学院外科系専攻(第二病理)
- 平成12年 九州大学病院泌尿器科助手(現助教)
- 平成14年 ニューヨーク大学医学部細胞生物学部門研究員
- 平成16年 九州大学病院泌尿器科
- 平成18年 済生会福岡総合病院泌尿器科主任部長
- 平成21年 福岡赤十字病院泌尿器科部長
- 平成29年 後藤けんクリニック開業
近年急増している前立腺がん
前立腺は膀胱のすぐ下・直腸の前にあり精液の一部をつくる栗の実の形をした尿道を取り囲んでいる男性特有の臓器で、前立腺がんは、男性だけにある前立腺に発生するがんのことです。 前立腺がんは高齢になるとともに増加し、特に70歳以上の方に多く発症が見られます。 また、近年、欧米化された食生活によって前立腺がんが急増しています。高カロリー、高脂肪、動物性たんぱく質及び乳製品の摂りすぎなど、食生活が少なからず前立腺がんに関係していると考えられています。 前立腺がんは治療することも大事ですが、食生活を見直し、バランスの取れた食事をすることも大切です。偏った食生活はがんや生活習慣病の原因になります。
がんの進行に関しては比較的ゆっくりで、寿命に影響を及ぼさないと考えられる前立腺がんもあり、治療の必要がないこともあります。
中には比較的進行が早いがんもあり、様々な症状や障害を引き起こすこともあり、当院ではがんのタイプや患者さんの年齢、その他の疾患や患者さんの希望を考慮して治療計画を立てます。 大事なのは治療することだけでなく、患者さんのQOL(Quality of Life=生活の質)を考えて治療を進めていくことだと考えています。
初期症状が少なく見逃しやすい前立腺がん
前立腺がんは初期症状が少なく、見逃しやすいがんです。 前立腺がんは初期の段階では、ほとんど症状が現れないケースが多いため、何か症状がでた場合は、多くの患者さんが進行がんの状態で発見されます。 ある程度がんが進行した段階や他に転移した場合に症状が現れることが多々あります。特に前立腺がんは比較的進行がゆっくりなため、排尿障害もいつものことと思い、長期的に放置してしまう危険性もあります。 前立腺癌は尿に関する症状が現れることが多いです。
前立腺がんの症状としては
- 排尿障害(残尿感、頻尿、排尿困難、尿勢低下、尿意切迫感、夜間頻尿、尿線途絶)
- 微熱が続く
- 全身の倦怠感
- 血尿
- 下肢のむくみ
- 骨転移に伴う骨の痛み
- 骨転移に伴う骨折
- 骨転移に伴う手足の麻痺
前立腺がんのタイプによって適切な治療を
転移があるがんにはホルモン治療を。転移のないがんには放射線治療や手術療法、ホルモン治療など適切に組み合わせたり、単独で行っています。
・ホルモン治療
前立腺はアンドロゲン(男性ホルモン)の影響を受けて増殖します。 同様に前立腺がん細胞もアンドロゲンの影響を受けるため、アンドロゲンの働きや分泌をブロックして、前立腺がん細胞の増殖を抑えるための治療をホルモン治療と言います。 アンドロゲンの分泌を抑えれば、前立腺がんの進行を抑制できます。この特性を利用した治療方法がホルモン治療です。「内分泌療法」とも呼ばれています。・放射線治療
放射線治療には体の外から前立腺に向けて放射線を照射する「外照射療法」と、放射線を発する物質を前立線の中に埋め込み、体内から放射線を患部にあてる「組織内照射療法(小線源療法)」があります。 外照射療法は周囲の臓器(直腸や膀胱)への照射量を減らす(治療範囲をコンピューターで前立腺の形に合わせる)三次元原体照射や、IMRT(強度変調放射線治療)があります。 組織内照射療法(小線源療法)は、前立腺に放射線の小線源を埋め込み、放射線を前立腺に照射し、周辺にあるがん細胞を死滅させる低線量率永久挿入組織内照射法と、針を一時的に前立腺内に刺入し、高エネルギーの放射線を前立腺内に照射する高線量率組織内照射法があります。タイプのいい癌に関しては即時に治療せずに経過観察で様子を見ることもあります。 前立腺がんは比較的ゆっくりと進行するため、早期に発見できれば特に治療しなくても余命と同じように人生を送れることがあります。 前立腺癌は血液を採取するだけで済むPSA検査の普及によって早期に発見できることが増えてきました。PSA検査とはスクリーニング検査のひとつで、前立腺がんの可能性がある患者さんを見つけるための検査です。採血のみの検査で前立線がんの早期発見に繋がるので、治療の選択肢が増えることがPSA検査のメリットです。 特に前立腺癌は高齢者に多いため、年齢や病状によっては無理に手術せずに経過観察の方が健康に過ごせる場合もあります。 しかし、何もせずに放置するわけではなく、腫瘍マーカーを確認しながら定期的にPSA検査を行って数値の変動を確認する必要があります。
患者様とご家族の立場に立ったきめ細かい医療を提供してまいります
昭和63年に医師となって以来、九州大学病院、済生会福岡総合病院、福岡赤十字病院などで29年間前立腺がんや膀胱がんなどの泌尿器がん、頻尿や尿失禁などの排尿障害、尿管結石に代表される尿路結石症などを中心とした泌尿器科診療を行ってきました。 これまでの長い勤務医生活で慌ただしくも充実した日々の診療業務を送ることができましたが、私にとって大きな転機となったのは、福岡赤十字病院に勤務していた平成23年に東日本大震災における日本赤十字社救護班の班長として現地で活動させていただいたことでした。このとき被災地でつらい思いをしている方々を前にして、自分が医者として何ができるかということを改めて真剣に考える機会となりました。それ以降、救護活動や救急医療の訓練や講習をはじめ、がん緩和ケアチームとしての活動、院内における患者サービスの仕事など、泌尿器科診療以外のことでも「患者さんのためになること」であればそれまで以上に積極的に関わっていきました。このことが現在の自分にとっての医療に対する基本的な考え方となっています。
前立腺ガンには特有の症状はありませんが、前立腺肥大症と併存することも多く、前立腺肥大症の症状で見つかることもあります。診断には、前立腺腫瘍マーカー(PSA、前立腺特異抗原)が特に有効で、採血(血液検査)で早期発見出来るがんですので、50歳以上の方は一度は検査をお受けになるよう、お勧めします。