循環器専門医インタビュー (新川崎むらせ内科循環器内科)

循環器専門医

確かな診断技術で動悸・息切れに多角的にアプローチする循環器専門医

村瀬 達彦先生

2018/06/12

MEDICALIST
INTERVIEW
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新川崎むらせ内科循環器内科
村瀬 達彦 院長
Murase Tatsuhiko

  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本禁煙学会 認定指導医
  • 日本内科学会
  • 日本循環器学会
  • 日本禁煙学会
経歴
  • 東海大学医学部卒
  • 横浜労災病院 初期臨床研修医
  • 横浜労災病院 循環器内科
  • 川崎幸病院 循環器内科
  • 2018年4月 新川崎むらせ内科循環器内科開業

動悸・息切れとは

動悸・息切れを訴えて受診される方は、多くいらっしゃいます。特に、季節の変わり目などでは、気温の変化に身体の調子が追い付かず、持病のない方でも疲労感や動悸を感じることが多くなります。

動悸は、普段意識することのない心臓の拍動を、自覚する症状のことです。動悸と言っても感じ方は様々で、実際に脈が速くなっていたり、乱れている方もいますが、脈拍は正常にもかかわらず、ドキドキと脈を打っているのを感じる方もいます。通常、安静時の脈拍数は、成人で1分間に50~100回程度ですが、脈が速くなると動悸として感じます。また、心臓は収縮と拡張を繰り返して、規則的に血液を送り出していますが、脈が乱れて不整脈になると動悸を感じる場合があります。心臓や肺の異常が原因で起こる不整脈には、心筋梗塞や肺塞栓症など命に関わるものや、脳梗塞の原因となる心房細動などがあり、早期に発見して治療しなければならない動悸です。一方、検査をしても異常がなく、疲れ・ストレスなどが原因であったり、心因性の動悸の場合もあります。

息切れは、多くは呼吸器の病気ですが、心臓の機能が低下していても症状として息切れが起こります。心臓の機能が低下すると、送り出す血液の量(拍出量)が減少し、その結果、腎臓への血流量が減り、尿の量が少なくなることで、全身に水が溜まるようになります。特に、足や顔にむくみが出ますが、胸に水が溜まるようになると、呼吸しづらくなり息切れが起こります。急性心不全は、治療しないと日に日に悪くなるため、治療開始までの時間が非常に大事です。一方、動悸と同様、心臓や肺には異常が認められず、疲れやストレス、寝不足などが原因で起こる息切れもあります。

動悸・息切れに対するアプローチ

動悸や息切れを訴える方には、必要な検査を行います。病気が確定して、それに対する治療をすれば、症状の改善が期待できるわけですが、症状があるにもかかわらず、心臓や肺には異常がないという方もいます。むしろ、そういう方の方が多いかもしれません。しかし、「病気ではないから来なくて良い」ということでは、患者さんの症状が改善することはなく、満足度は上がらないと考えています。何が原因で動悸・息切れが起こっているのか、カウンセリングするだけで良くなる場合もあります。また、夜遅くまでお酒を飲んで寝不足になっている、疲れが溜まっているなどの場合には、生活習慣の改善を指導することも治療になります。その他、自費診療にはなりますが、プラセンタ注射も更年期などの症状に効果が期待できます。患者さんの訴えに対して、どんな治療法があるのか、どんなケアをしてあげれば症状を和らげることができるのか、いろいろな選択肢からアプローチしていくことが大事だと考えています。

動悸・息切れを診断する検査

動悸・息切れの原因を特定するには、さまざまな検査が必要ですが、心臓の病気の進行は早く、検査が後日の場合には、予約の日までに悪化してしまい、入院が必要になることも少なくありません。治療開始のタイミングが遅れないよう、なるべく受診当日に検査をして結果を出し、治療を開始できるシステムが必要です。当院では、現在、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図検査、心エコー検査、呼吸機能検査などが、受診当日に可能です。

心電図検査

心電図検査は、胸と四肢に電極を装着して電気の流れを測定し、心臓の動きを捉える検査です。4つの波形の乱れで診断しますが、症状が起きている時に検査をしないと、波形に変化が現れず診断することができません。症状があっても、検査の時に異常が捉えられない場合には、ホルタ―心電図を行います。携帯型の心電図記録器を胸に装着して日常生活を送り、いつ起こるかわからない不整脈などの症状を捉えます。それでも捉えられない場合には、ホルタ―心電図を繰り返し行ったり、症状のある時にクリニックに来てもらうなど、さまざまなアプローチで診断していきます。

胸部レントゲン検査

動悸・息切れで受診された場合、一般的に行われる検査のひとつです。心臓の形や大きさ、心臓や肺の血管、肺の状態などがわかります。

心エコー検査

超音波を心臓にあて、その跳ね返りを画像として捉える検査です。心臓や血管の構造、弁の動き、心臓の壁の厚みなどを見ることができます。心不全が原因で息切れが起こっているということが診断できる検査です。

エルゴメーター運動負荷心電図検査

実際に運動することで心臓に負荷をかけた状態で心電図検査をすることで、狭心症などの虚血性心疾患や運動誘発性の不整脈がないかを調べる検査です。動悸や息切れの原因が虚血性心疾患であった場合に診断に有用です。

動悸・息切れ外来の役割

本当に辛い息切れや動悸の場合には、多くの場合、救急車を呼んで病院に行くことになります。しかし、日常的な軽い動悸・息切れの場合には、病院に行くことを迷っていたり、またどの診療科を受診すれば良いかわからないといったことで、受診のタイミングが遅れる方は多いと思います。クリニックを受診するのは、ほおっておくと悪くなってしまう心臓や肺の病気を、早期に見つけて、入院に至る前に外来で治療することが目的です。そのためには、症状が軽いうちでも相談しやすく、動悸・息切れという症状からわかりやすい診療科で、その日の内に検査・診断できるというのが、動悸・息切れ外来の役割だと思っています。

動悸・息切れ外来受診のタイミング

安静にしていると日常生活には困らないけれど、いつも使っている階段を上った時に症状が出るようになったというような、軽い症状でも受診することが大事です。狭心症や心筋梗塞で救急外来に搬送された患者さんの中には、動悸や息切れの症状に気が付いていた方も少なくありません。また、症状が全く無い方でも、健康診断の心電図で心筋梗塞を指摘される方もいます。動悸や息切れに気が付くためには、普段から運動習慣を持つというのが大事です。いつものトレーニングで息切れするということがあれば、早期発見に繋がります。心臓の病気は刻一刻と変化していくものです。年齢や疲れのせいにしないで、症状に気が付いた時が、受診のタイミングです。 また、心臓の病気は家族性と言われています。心臓の病気をもつ家族がいる方は、症状がなくても気軽に相談してください。

動悸・息切れのリスクとコントロール

心臓の動きを悪くする原因として、生活習慣の乱れ、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、過量の飲酒などがあります。こうした基礎疾患や生活習慣がある方では、動悸・息切れの原因となる病気を発症するリスクが高くなります。血糖値や血圧のコントロール、減量、減塩や脂質を減らすなどの食事療法、運動習慣、禁煙を心がけ、少しでもリスクを少なくすることが大事です。特に、当院では禁煙外来も設けていますので、ニコチンパッチや飲み薬、生活指導なども合わせて診療を行うことができます。

地域全体の医療意識の向上のために

動悸・息切れは、命に関わる病気のサインの場合があります。予防注射や健診の時を利用したり、ご家族の付添いの時でも構いません。症状があっても無くても、気軽に健康のことを相談できる環境を目指しています。定期的な勉強会や無料の健康相談会も開催していきますので、健康な方も是非参加していただき、地域全体の医療意識の向上にお役立ちしたいと思っています。