整形外科専門医インタビュー (朝霞あおば台整形外科)

整形外科専門医

腰痛に対して、薬物療法・運動療法・注射はもちろん、徒手療法や東洋医学まで駆使して治療を行っています。

横部 旬哉先生

2018/11/22

MEDICALIST
INTERVIEW
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朝霞あおば台整形外科
横部 旬哉 院長
Junya Yokobe

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本関節運動的アプローチ(AKA)医学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 麻酔科標榜医
経歴
  • 埼玉県朝霞市出身
  • 2001年 防衛医大卒業
  • 2001年-2003年 防衛医大病院・自衛隊中央病院にて初期研修
  • 2003年-2005年 陸上自衛隊 北部方面衛生隊・自衛隊札幌病院 整形外科
  • 2005年-2007年 防衛医大 整形外科
  • 2007年-2009年 自衛隊仙台病院 整形外科
  • 2009年-2010年 自衛隊中央病院 整形外科
  • 2010年-2014年 慈恵医大大学院(ペインクリニック)
  • 2014年-2016年 自衛隊札幌病院 整形外科部長
  • 2016年-2018年 自衛隊富士病院 整形外科部長
  • 2018年9月 朝霞あおば台整形外科 院長

医療の道を志すキッカケ

幼少時や学生時代にケガをした事もあって、その頃から整形外科というものに興味は持っていました。
元々、格闘技はやるのも見るのも好きでしたから、リングドクターのようなスポーツに関わる仕事に就きたいという、憧れのようなものがあったのは確かです。大学入学後はレスリングに取り組むのですが、そこで整形外科医への道をハッキリ意識するようになりました。

仙腸関節障害

腰痛には様々な原因がありますが、腰痛の約85%は、レントゲンやMRIなどの画像での診断が困難であるため、原因を特定するのが難しく、「非特異的腰痛」と呼ばれています。非特異的腰痛の多くは、実は仙腸関節という部位が原因であったり、筋膜などの結合組織から生じています。腰痛の診療に力を入れておりますが、特に仙腸関節障害に関して深く堀り下げてご説明したいと思います。

仙腸関節は、脊椎と骨盤を繋ぐ関節で、骨盤を形成する仙骨(せんこつ)と腸骨(ちょうこつ)の間に位置しています。脊椎の根元にあって、ビルの免震装置のような働きをすることで、上半身の重みや負荷を吸収する働きを果たしています。他の多くの関節と違って可動範囲は2~3mm程度しかありません。この関節に動きの制限や、ひっかかり、ずれなどが生じて腰痛などの症状を呈するのが仙腸関節(機能)障害です。

症状と発生原因

仙腸関節障害の主な症状としては、腰痛や殿部痛、下肢の痛み・しびれなどの症状があります。下肢の痛みやしびれは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、坐骨神経痛などに類似しておりますので非常に紛らわしいですが、範囲が異なりますので鑑別することは通常可能です。

その他に、イスに長時間座れない、仰向けに寝られない、歩き始めに痛みが出るが徐々におさまる、といった症状が特徴的です。仙腸関節は、体幹・骨盤・下肢をつなぐ歯車の働きをしますので、足が出しづらい、下肢が突っ張る、フラつく、といった症状を訴える患者様もまれにいらっしゃいます。

デスクワークの方や、無理な姿勢でソファーなどに長時間座り続ける方、中腰や前かがみでの動作を繰り返したり重いものを持ち運びされる方などに多く、日常生活や仕事などでの習慣が影響することが少なくありません。

診断の方法

ほとんどが機能異常ですから、レントゲン、MRI、CTなどの静止画像では仙腸関節障害の診断は通常できません。
仙腸関節障害かどうかは、症状と診察時の所見を総合するとある程度推定することができますが、最終的な決め手は、仙腸関節に対する治療をして症状が改善するかどうかで判断します。

①仙腸関節ブロック
麻酔薬やステロイドを用いて、仙腸関節の内部や周囲を覆う靭帯部分に注射をします。注射は超音波をみながら行う場合もあります。注射時の痛みを心配される方も多くいらっしゃいますが、チクッとする程度でそれ程痛い注射ではありません。
②仙腸関節の徒手療法
仙骨と腸骨を手で触れて、仙腸関節の数mm程度の微妙な動きを改善させる治療です。動きが悪い状態(機能障害)が持続すると炎症を伴うことが多いですが、動きが改善されるに従い炎症も軽減することが多いです。1回の治療で効果がでる方と、数回行い徐々に改善する方など治療効果は個人差があります。
③その他
骨盤ベルトは痛みが激しい時や作業を行う際に骨盤に装着して、仙腸関節を安定化させるために使いますが、長期間の装着は避け、なるべく一時的な使用に限定しています。
中腰や前かがみでの作業をなるべく避ける、座位や立位ともに長時間同じ姿勢を続けない、20-30分毎に立ちあがって腰を動かしたり伸ばしたりする、といったことが予防方法となります。

東洋医学・漢方

東洋医学的なアプローチも積極的に取り入れています。経穴(ツボ)やトリガーポイントに打つ鍼治療や、漢方薬の服用、吸角(吸い玉)、刺絡療法などを行っています。
東洋医学では、痛みやしびれは、気血の巡りが悪いことが原因であると考えています(「不痛即通」といいます)。冷えをとって温めたり血流を改善させること、交感神経の過緊張を改善させることを目的に、東洋医学的な治療を取り入れていります。

●鍼治療
経穴と呼ばれるツボやトリガーポイントを鍼で刺激します。
●漢方薬
冷えをとって温めたり、血流改善を目的として漢方薬を処方することがあります。
●吸角(吸い玉)
カップを皮膚に付けて吸引することにより、筋肉を緩ませたり、血流を改善させることができます。
●刺絡(シラク)療法
細い鍼を刺して、微量の出血をさせることで、血の巡りを良くしようとするものです。凝りや痛み、しびれなどの症状の軽減が期待できます。

保存療法

仙腸関節障害に特化した直接的な治療方法ではありませんが、当院で取り組んでいるその他の保存療法についてもご紹介します。

●fascia(ハイドロ)リリース
痛みや凝りなどのある部位の筋間(筋膜)に注射することにより、筋肉の柔軟性や動きを改善させる方法がfascia(ハイドロ)リリースです。
fasciaは筋膜を始めとする、結合組織全般を指します。
●パワープレート
振動するプレートの上に乗り、下半身全体でバランスを取りながら姿勢を保つことで、筋肉へのストレッチ効果や筋力アップ、リラクゼーション効果を狙うのがパワープレートという機械の目的です。
ケガのリハビリテーションだけでなく、高齢者の方の「サルコペニア」や「フレイル」の予防などにも効果が期待できるリハビリです。

患者様へのメッセージ

通常行う西洋医学としての治療法と、漢方や鍼などの東洋医学の治療法とを、上手に組み合わせることによって、治療の選択肢は無限に広がってゆきます。患者様には「諦める事なく、どんなことでもご相談下さい」とお伝えしたいと思います。当院では「道は拓ける」を合言葉としています。