ペインクリニック専門医インタビュー (みつはたペインクリニック)

ペインクリニック専門医

患者さん一人ひとりの身体的状況やライフスタイルを考えて、QOL(生活の質)の維持と向上を

光畑 裕正先生

2019/01/18

MEDICALIST
INTERVIEW
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みつはたペインクリニック
光畑 裕正 院長
Hirimasa Mitsuhata

  • 昭和 51年 5月 医籍登録(230127号)
  • 昭和 54年 7月 麻酔標傍医(2373号)
  • 昭和 57年 1月 日本麻酔学会指導医(906号)
  • 昭和 58年 3月 医学博士(秋田大学博乙第33号)
  • 平成 60年 10月 日本救急医学会専門医(337号)
  • 平成 2年 1月 日本ペインクリニック学会専門医(90003号)
  • 平成 2年 12月 日本集中治療医学会専門医(900058号)
  • 平成 3年 4月 臨床修練指導医(医師法第17条,1987年法律29号)(1364号)
経歴
  • 昭和 51年 3月 秋田大学医学部医学科卒業
  • 昭和 51年 4月 秋田大学医学部麻酔学講座助手
  • 昭和 58年 5月 米国メイヨークリニック免疫学教室 Research Fellow
  • 昭和 58年 11月 米国ベイラー医科大学生化学免疫学教室 Research Associate
  • 昭和 60年 2月 秋田大学医学部付属病院集中治療部講師
  • 平成 1年 4月 秋田県厚生連平鹿総合病院麻酔科・ペインクリニック科長
  • 平成 3年 4月 自治医科大学医学部麻酔科学講座 講師
  • 平成 9年 4月 順天堂大学医学部麻酔科学講座 講師
  • 平成 12年 7月 順天堂大学医学部ペインクリニック研究室 講師
  • 平成 14年 3月 順天堂大学医学部助教授(ペインクリニック研究室、大学院医学研究科外科系疼痛制御学担当)
  • 平成 14年 5月 東京都江東高齢者医療センター ペインクリニック・麻酔科科長
  • 平成 19年 3月 順天堂大学大学院医学研究科 外科系疼痛制御学 教授
    順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授
    順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター 麻酔科・ペインクリニック科長
  • 平成 29年 5月 みつはたペインクリニック 院長

痛みへの治療はQOLの維持と向上のため

検査

痛みの治療にあたっては、専門的な知識と技術をもとに、症状や身体所見から痛みの原因を診断し、適切な検査や治療を行います。
ペインクリニックでは、患者さん一人ひとりの身体的状況やライフスタイルを考えて、痛みを軽減することによりQOL(生活の質)の維持と向上を最終目標に治療内容を選択していきます。運動器に関する痛み(腰痛、肩の痛み、膝の痛みなど)、頭痛、肩こり、頚や上肢の痛み(頚椎症性神経根症)をペインクリニックで治療しています。

主観的感覚である「痛み」の鑑別判断

検査

痛みは急性痛と慢性痛に分けることができます。急性痛とは、怪我などの外傷による痛みで時間と伴に組織損傷が治るに従って軽減し、傷が治ったときには痛みも消失します。言い換えれば、時間と伴に痛みが治るものです。一方、慢性痛とは、正常な組織治癒期間、通常は3ヶ月間を超えて痛みが持続するものを言います。ペインクリニックでは、急性痛も慢性痛も治療できますが、多くの人が苦しんでいる慢性痛の治療を得意としています。痛みが何時まで経っても軽快しない時には、当クリニックにご相談ください。当クリニックの特徴としては、神経ブロック、西洋薬、漢方薬を用いて、各々の患者さんに最も適した治療法を選択しています。

痛みとは「組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害をあらわす言葉をつかって述べられる不快な感覚・情動体験である」との定義が世界疼痛学会の定義です。痛みは常に主観的であり、痛みは疑いなく体の一部分またはいくつかの部位での感覚であるが、しかしまた常に不快な感覚であり、それゆえまた情動的な経験である。もし患者さんがこのような経験を痛みとみなすか、または組織損傷により起こる痛みと同じであると訴えるなら、痛みとして扱わなければならないのです。レントゲン写真やその他の検査で異常がないので、「痛いはずはない」と言うような医師もいるかもしれませんが、世界疼痛学会の痛みの定義からすると間違っています。

痛みの中で最も治療に抵抗する痛みが神経障害性疼痛です。特徴的な症状が、アロディニアと称される痛みです。アロディニアとは、通常では痛みをおこすことのない刺激により痛みを感じる感覚です。すなわち、正常な皮膚に接触、軽い圧力、中等度の冷たさや暖かさにより痛みが誘発される状態を言います。

アロディニアがある患者さんは、神経障害性疼痛であるので、治療は困難を極めることがあります。神経障害性疼痛は専門医でなくては、治療が難しい病気です。ペインクリニックは、神経障害性疼痛を的確に診断・治療できる診療科です。このような痛みに苦しんでいる患者さんは、当クリニックにご相談ください。

日本人に多い腰痛の原因と治療

診察室

腰痛の全国規模の調査によると、「治療を受けるほどの腰痛」を感じたことがある人は、男性で54.1%、女性で51.1%に達しているとのことです(整形外科学会)。 軽度の腰痛も含めると、もっと数が増えるでしょう。全ての年齢層にわたって腰痛は頻度の高い病気ですが、高齢者の慢性腰下肢痛の原因では腰部脊柱管狭窄症が最も多く、ほとんどの症例で急性の痛み(侵害受容性疼痛)と慢性の痛み(神経障害性疼痛)が混在しています。
急性の痛みであれば短期間の鎮痛薬の投与と安静で改善することが多いですが、慢性的な痛みであれば、鎮痛薬を漫然と長期間にわたり使用しても改善することはありません。腰部脊柱管狭窄症の初期症状としては、動くことによりそれらの症状が改善する腰痛と朝起きた時の腰が固まった感じが現れることが多く、疾病の進行とともに腰痛、殿部から大腿にかけての痛み、ふくらはぎの不快感、こむらかえし、下肢のしびれと痛みが出現してきます。運動障害は目立つ症状ではありませんが、多くは長時間の立位や歩行により出現し神経学的間欠的跛行となる。治療として保存的治療と外科的治療がありますが、基本的には保存的治療が一次的です。保存的治療は薬物療法と定期的な硬膜外ブロックや超音波治療などを行います。


また、腰痛の原因としては、レントゲン写真やMRIでは診断できない、仙腸関節症があります。
仙腸関節症では、腰痛と伴に、「座ると痛みが強くなる」、「上向けに寝るのがつらい」、「股関節の部位に痛みがある」、「大腿部の外側に痛みがある」などがあります。診察で仙腸関節痛が疑われたら、後仙腸靱帯ブロックを併用して薬物治療を行います。
また、『冷え』で痛みや痺れが強くなることが、腰痛の患者さんでは多く見受けられます。冷えを改善する薬は、漢方が最も有効です。

頭痛とペインクリニック

クリニック

頭痛は多くの人が経験する痛みです。市販薬で治している人がほとんどだと思います。一時的な頭痛はそれでも良いと思いますが、慢性的な頭痛は、市販薬では治すことが難しいことが多いです。慢性頭痛としては片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経痛・自律神経性頭痛などがあり、慢性頭痛は生活の質を大きく低下させ、高度の障害を惹き起こす深刻な疾患とされています。一次性頭痛の診断では二次性頭痛(器質的異常)の除外が必須であり、特に高齢者では慎重に除外診断を行う必要があります。緊張型頭痛は一次性頭痛の中で最も一般的な頭痛であり、様々な調査で一般集団における生涯有病率は30~78% の範囲と報告されています。頭痛の中では最も多い頭痛で、肩こりや頚こりが原因で起こる頭痛(緊張型頭痛)です。近年、PCやスマホを長時間使用することが多くなっており、以前に増して増加しています。緊張型頭痛の診断では、触診による頭蓋周囲(前頭筋、側頭筋、咬筋、翼突筋、胸鎖乳突筋、板状筋および僧帽筋)の圧痛の増強は最も重要な異常所見です。目の奥の痛みや吐き気を伴うことがしばしばあります。適切な治療を行えば頭痛から開放されることは良くあります。毎日鎮痛薬を飲まなければならない状態が、当クリニックで治療をしたら一月に2~3回だけ鎮痛薬をのむ程度に改善した患者さんが多くいます。

頭痛の治療には、肩こりと頚こりの治療をトリガーポイント注射(神経ブロックの1種)を用いて行い、頭痛の部位や誘引(天気が悪い時に悪くなる、寝不足の時に酷くなるなど)に対して的確な漢方を処方することで対処できます。頭痛に対しては漢方が非常に効果的です。「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」(日本神経学会・日本頭痛学会)でも頭痛に有効な漢方薬として、呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散、葛根湯(葛根加朮附)、五苓散が示されています。めまいを伴うときの頭痛や精神的なストレスによりおこる頭痛など様々な病態の頭痛に上述以外にも適した漢方があります。

頭痛で苦しんでいる患者さん、肩こりや頚こりが治らない患者さんは、是非当クリニックにご相談ください。クリニックで肩こりを治療できるのですか質問される患者さんがいますが、ペインクリニックはあらゆる痛みに対して治療手段を持っていますので、肩こりでも的確に治療することができます。また漢方は保険を使えるのですかとのご質問がありますが、もちろん健康保険で漢方のエキス剤を処方することができます。当クリニックでは、痛みに対する漢方治療を得意としています。

患者さん一人一人に合った治療法を目指して

クリニック

神経障害性疼痛を含む慢性痛の治療は、エビデンスに基づいた薬理学治療が薦められています。治療方法は、患者さんの希望に沿って進めます。病気により神経ブロックが最も適しているときは、注射を進めますが、注射が嫌なときは薬物療法を行います。
当クリニックのモットーは「患者さんにとって一番いい治療法を選ぶ」という事です。治療法は注射による神経ブロック療法や薬物療法、レーザーを使った光線療法などありますが、よくお話を聞き、患者さんの体の状況やライフスタイルなどを考慮したオーダーメイド治療を行います。
基本は西洋医学的ペインクリニックの治療ですが、更に必要に応じて漢方を併用するところが特徴です。

院長

原因が分からない痛みにこそ、来院を

原因が分からなくて痛い、原因を取り除いたはずなのに痛いなど、どんな痛みにも対応します。

今まで痛みの原因が分からなかった、20年来の古傷が寒くなると痛む、という患者さんが漢方薬を処方したら症状が治ったというケースもあります。

当クリニックでは、色々な病院で検査をしたけれど痛みの原因が分からなかったという患者さんがたくさんいらっしゃいます。中には「精神的な問題では」「自分で痛みを作っているのでは」と医師に言われ、自分の痛みは治らないと思い込んでいる方もいらっしゃいます。そのような患者さんでも的確な治療により、痛みを緩和することができますし、実際痛みが緩和した多くの患者さんがいらっしゃいます。

私は患者さんと同じ目線に立ちたいという思いもあって、普段から白衣を着ていません。診療に対して続けて行きたいスタンスは「町内のおじさん」。あのおじさんは話を聞いてくれるから相談してみよう、そんな存在になりたいと思っています。どんな患者さんでも、痛みがあれば一度相談にいらしてください。