小児歯科専門医インタビュー (立川もりのはいしゃさん)

小児歯科専門医

歯の健康を通じてお子さまの成長をサポートするスペシャリストが、小児歯科専門医です。

上原 奈緒子先生

2019/04/12

MEDICALIST
INTERVIEW
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立川もりのはいしゃさん
上原 奈緒子 院長
Naoko Uehara

  • 歯学博士(小児歯科学)
  • 日本小児歯科学会認定小児歯科専門医
  • 日本小児歯科学会所属
  • 日本歯科医師会所属
  • 東京都歯科医師会所属
  • 立川市歯科医師会所属
経歴
  • 2005年 公立大学法人九州歯科大学卒業
  • 2005年~ 国立大学法人東京医科歯科大学 歯科医師臨床研修医
  • 2007年 国立大学法人東京医科歯科大学 歯科医師臨床研修修了
  • 2011年 国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科修了
  • 2011年~ 国立大学法人東京医科歯科大学 歯学部小児歯科医員
  • 2015年~ 国立大学法人東京医科歯科大学 小児歯科非常勤講師
  • 2016年 立川もりのはいしゃさん開院

医療の道に進むきっかけ

身近に医療関係者がいたわけではないのですが、幼い頃から医療者への憧れはありました。幼稚園のお誕生日会で、将来は看護師になりたいと言ったことを覚えています。もちろん子どもの頃のことですし、キャビン・アテンダントや雑誌の編集者などいろいろな職業に憧れました。ただ、小さいこどもが好きでしたので、子どもに関わる仕事がしたいという気持ちは強かったと記憶しています。また、私が子どもの頃は、女性のキャリアが注目された時代でもありましたから、資格を持って仕事を続けられるという意味でも医療職に魅力を感じました。

小児歯科を選択するに至る経緯

もともと障害や病気のある子どもに関わる仕事がしたいと考えていたこともあり、歯学部に進学してからは、障害者歯科をやりたいと思う気持ちが強くなりました。大学卒業後、東京医科歯科大学歯学部附属病院の研修医になったのですが、研修先の障害者施設で、小児歯科専門医指導医の先生にご指導戴いたことは、小児歯科医を目指す大きなきっかけとなりました。小児歯科は子どもの日常への関わり方が大きく、大人になるまで成長を見守り続けられるというところにも惹かれ、小児歯科の道に進むことを決めました。

小児歯科専門クリニックを開業するまで

東京医科歯科大学の小児歯科の大学院を修了した後、大学病院で小児歯科診療に従事し、小児歯科専門医の資格を取得しました。私が勤めていた東京医科歯科大学歯学部附属病院は、御茶ノ水にあるのですが、立川周辺から通院される患者さんが沢山いました。子どもがかなり多い地域であるのにも関わらず、都心部と違い小児歯科専門医がとても少なく、立川市内でも小児歯科専門医は2人の先生だけでした。開業するなら立川でしようと考え、念願叶って2016年12月に立川南口に小児歯科専門クリニックを開院しました。

小児歯科専門医としてお子さまに安全かつ的確な治療方法を提供しています。

クリニックの患者さんは、初診時に未就学児であるお子さまが圧倒的に多く、お子さまの不安や恐怖心を取り除き、スムーズな治療が進められるよう心がけています。治療の際の対応は、お子さまの年齢や性格、口腔内の状態、保護者の方の希望などを考慮し、お子さまごとに変えていますが、初診時には主に以下の2つの対応方法について説明を行っています。

  • ①もりのお散歩コース

    小さなお子さまは、未知のものへの恐怖心を少なからず抱いています。このコースは、治療を始める前に楽しくお話をしながら、お子さまの協力状態を引き出すトレーニングを行います。まずは、実際に使用する道具を見せたり、触って遊んでもらったり、歯医者さんに慣れてもらうところからスタートです。環境に慣れてきたら、比較的簡単に行える治療を行い、お子さまの様子を観察しながら治療をステップアップさせていきます。通院回数は多くなってしまいますが、お子さまのペースを尊重しながら、ゆっくりとトレーニングを進めることができます。しかし、低年齢のお子さまにはトレーニングの効果が得られない場合も多く、むし歯の進行とトレーニングの効果状況を見極めることが重要となります。

  • ②もりのトロッココース

    一方、痛みがある、腫れている、けがをして歯が欠けてしまったなど緊急性がある場合、お子さまが泣いたり、動いたりしても、安全かつ速やかに治療を行います。また、治療することの利益が、お子さまの身体を抑制する不利益を上回ると考えられる場合に、保護者の方と相談をした上で治療を行うことができます。そのため、お子さまの不意な動きによる怪我を防ぐために、また正確な治療を行うために、レストレーナーという抑制具を使うことがあります。レストレーナーの使用は、偶発事故からお子さまを守り、安全かつ確実な治療を行うためのものであり、大抵のお子さんが治療経験と共に、使用の必要がなくなります。

医療安全性への取組み

小児歯科医療を提供する上で、何より重要なことは、お子さまの安全を守ることだと思います。当院では、歯科治療中の患者さんの医療安全のために以下のものを用意しています。一般の歯科医院では馴染みの薄いものもありますが、お子さまの治療の安全上必要なものとなりますので、保護者の方にはご説明を行った上で使用しています。

  • ①ラバーダム防湿

    お子さまの歯の治療の際には、ラバーダムというゴム製のマスクを歯に装着します。これは治療する歯だけを出して、その周りをゴムで覆う装置です。歯科治療は、切削する器具や鋭利な器具を使いますから、お子さまの口の中や舌、唇などを傷付けない目的で使用しています。また、口の中に水や薬が入るのを防ぐ、あるいは、治療している歯に唾液や血液が混入することを防いで、正確な治療を行う為にも有効です。更に、小さな器具を使った場合の誤飲、誤嚥を防ぐ効果もあります。

  • ②開口器

    治療中に口を開けたままにしておくことが難しい場合、急に口を閉じてしまうと、口の中を傷つけてしまうなどの危険が伴います。開口器は、口を開けておくことをお手伝いする為の器具です。

  • ③AED

    心臓の心室という部分の異常により、血液を十分に送り出せない状態となった時、電気ショックを与え、正常な心室の動きを取り戻させる機械です。現在は空港や駅構内、大型商業施設など、大人数の人が行き交う場所に設置されており、当院にも設置されております。

  • ④エピペン

    お子さまのアレルギーに関しては、問診の際に詳しくお聞きしておりますが、アナフィラキシーと呼ばれるアレルギー反応により、呼吸困難や血圧低下、不整脈などの症状が起きた場合に、症状の悪化を防ぐ為に、アドレナリンという薬剤の筋肉注射を素早く行えるキットを用意しています。

  • ⑤酸素吸入器

    低酸素状態など、酸素が必要な場合に備えて、酸素を吸入する為のマスクや経鼻カニューレを準備しています。また、アナフィラキシーショックなどの重篤な状態に陥った場合に備えて、ほぼ100%の酸素を与えることが出来るバックバルブマスクと呼ばれる道具を準備しています。

  • ⑥パルスオキシメーター

    パルスオキシメーターは、血液中に十分な酸素が含まれているかどうかを知ることが出来る機械で、呼吸状態の異常をいち早く知ることが出来ます。治療中は常にお子さまの呼吸の状態や顔色などを観察しておりますが、少しでも異変を感じたら血中酸素濃度を測定できるように配慮しています。

当院で行っているむし歯予防

お子様の歯の、正常な発達をサポートする為、むし歯予防に対しても積極的に取り組んでいます。

  • ①ブラッシング指導と食生活アドバイス

    小児は成長に伴い、口の中の状態が大きく変化します。全ての乳歯が永久歯に生え替わるのは、小学校の高学年から中学生くらいですが、その間、歯磨きのしにくい場所や汚れの溜まりやすい場所、むし歯の出来やすい場所も変化します。歯ブラシなどの清掃用具や歯磨きの際に気を付けるポイントも、成長に合わせて変えていく必要があります。当院では、歯が生えたばかりの赤ちゃんから、全てが永久歯に生え替わったお子さままでいらして戴いていますので、お子さまによってブラッシング指導の方法は変えています。

    食生活に関して言えば、むし歯の原因のかなりの部分を占めているのは事実です。食生活というのは、それぞれのご家庭の生活環境や習慣に大きく関係していますので、簡単に変えることが難しいことは分かります。私も母親ですので、子どもの生活習慣を変えることの難しさは身をもって感じています。食生活指導では、ただ無闇に甘いものを禁止する、というスタンスは取っていません。甘いものは禁止するよりも、ご褒美としてお子さまと約束した日に食べるという方が前向きです。小さなお子さまでも、お話をして約束すると理解してくれますし、シュガーコントロールをしたお子さまの口の中の環境が大きく変わることを嬉しく思います。

  • ②フッ素塗布/シーラント

    フッ素は、歯のむし歯に対する抵抗性を高めてむし歯を予防する方法で、有効性・安全性に関する証拠が確認されています。歯科で使用するフッ素には、ホームケアで用いることのできる低濃度のフッ素を含有した製品と、歯科医院でしか扱えない高濃度のフッ素を含有した製品があります。当院では、4か月から6か月に一度のサイクルでフッ素塗布することをお勧めしております。

    乳歯も永久歯も、歯が生えて間もない時期は、歯の質が未熟な上に、歯の溝が複雑な形をして、むし歯になりやすい時期であると言えます。また、他の歯よりも背丈が低く、歯ブラシが当たりにくく、汚れが溜まりやすい時期でもあります。この時期の歯にある小さな溝を、あらかじめセメントやプラスチックで埋めて、むし歯を予防する方法がシーラントと呼ばれる処置です。歯が生えて間もない時期にむし歯を予防することは、将来に渡ってむし歯を予防することに繋がりますので、特に6歳臼歯が生えた時期には、是非シーラントをすることをお勧めします。

小児歯科専門医としての診療ポリシー

子どもの頃のお口の中の環境は、一生を左右すると言っても過言ではありません。乳歯の下には永久歯が育っていますので、乳歯のむし歯を放置することは、永久歯に悪影響を及ぼす可能性がありますし、むし歯だらけの歯がある状態で永久歯が生えてくると、永久歯のむし歯のリスクも高くなります。また、乳歯が生えてから永久歯に交換するまでには、むし歯だけでなく様々なトラブルも起こり得ます。小児歯科専門医は、成長過程にあるお子さまのお口に起こり得るトラブルを早期に解決し、成長を見守っていくスペシャリストです。お子さまが美味しくご飯を食べて、笑って話すことの出来るよう問題を解決することが小児歯科専門医の使命であると考えております。お子さんのお口の中で気になることがあれば、是非お近くの小児歯科専門医を受診されることをお勧めします。