認知症の専門医インタビュー (たかさき脳神経外科クリニック)

認知症

最新鋭のCT・MRIを備え、その画像を基に豊富な診療経験を踏まえて認知症を診断する脳神経外科専門医

高崎 勝幸先生

2017/08/02

MEDICALIST
INTERVIEW
59

  • シェア
  • シェア
  • LINEで送る

たかさき脳神経外科クリニック
高崎 勝幸 院長
Katsuyuki Takasaki

  • 日本脳神経外科学会認定
  • 脳神経外科専門医
  • 医学博士
経歴
  • 平成 8年  久留米大学医学部卒業 脳神経外科学教室入局
  • 平成10年 済生会八幡総合病院 脳神経外科
  • 平成11年 久留米大学病院 高度救命救急センター
  • 平成13年 高邦会 高木病院 脳神経外科
  • 平成15年 済生会福岡総合病院 脳神経外科医長
  • 平成16年 済生会二日市病院 脳神経外科医長
  • 平成17年 久留米大学病院 脳神経外科病棟医長
  • 平成18年 済生会福岡総合病院 脳神経外科部長
  • 平成22年 たかさき脳神経外科クリニック 院長
  • 平成24年 医療法人 高坂会 たかさき脳神経外科クリニックを設立、理事長・院長

認知症は症状によって適切な診断と治療、計画が必要

認知症について

認知症は一般に、治療により改善が得られるものと進行を予防するものの2種類に分けられます。 頭部外傷から1-2ヶ月の経過のなかで生じる「慢性硬膜下血腫」は認知機能が低下する可能性のある病気で、手術加療によりほぼ完全に元通りにもどる病気です。 また頭のなかに水(髄液)が溜まってくる病気「正常圧水頭症」もあり、きちんと診断・治療すれば症状は改善します。 このような病気はCTスキャンやMRI検査などの画像検査やタップテストといわれる髄液排出試験をおこなうことで診断することが可能です。 このように認知機能低下をきたす病気には適切な診断と治療により正常な状態に戻りうることがあることを知っていただきたいと思います。

しかし認知症には治癒が得られない進行性の認知症があることも確かです。 一般的に認知症というとアルツハイマー型認知症を連想しますが、アルツハイマー型認知症は全体の約40%といわれており残り60%はそれ以外の診断による認知症です。 幻視やパーキンソン症状をともなうレビー小体型認知症や性格変化をともなう前頭側頭型認知症、脳梗塞などあとに生じる脳血管性認知症などがそれにあたります。 これらの病気に対しては、症状の進行を遅らせるという治療薬が存在しますが患者さんによりその効果はまちまちです。 症状は画一的ではなく、それぞれの病態や病気の進行時期などにより治療内容は異なりますが、何より大事なのは患者本人のご家族や周囲の環境における立ち位置や性格・生活スタイルなども考慮してご家族全体で治療をしていくことが大事です。 ただ、独居であったり老々介護であったり家族だけで支えていくことは困難ですので行政サービスや介護サービス・訪問看護などを駆使して社会全体で支えることが本人のADL(日常生活動作)や家族のADLを保つために必要なことです。

当院ではきちんと診断をつけることや今後の起こりうる変化などをご家族とともに話し合いながら治療を進めることに重きをおいています。一般治療薬のみならず症状を改善しうるサプリメントなどの治験なども行っており新しい治療と症状改善のための対症的治療を併用し家族みんながハッピーになれる認知症の最後の姿になれるよう治療を行っています。

人生を楽しむためにも「認知症」は早期発見し早期に治療しましょう

人生を楽しむためにも「認知症」は早期発見し早期に治療しましょう

認知症は誰でもなりうる病気です。 近年、治療薬の研究が進んでいますが残念ながら治癒にいたる薬剤はまだ開発されていません。だからこそ早期発見し早期に治療をおこなうことで進行を少しでも遅らすことが重要です。それにより少しでも人間らしい時間を長く得ることが出来人生を楽しむ余裕ができます。また、認知症になりやすい病気も分かってきています。高血圧や高コレステロール・肥満はそれぞれ危険度が2倍になることが知られておりこれら3つ全てに当てはまる場合には危険度が6.21倍になることが知られています。このことからは生活習慣病にならない食生活が重要であるといえます。また運動をしない人や社会的接触を持たない人も発症が高くなる傾向があり適度な運動や話し相手をもつことも非常に重要です。

治療により治る認知症も少なからずあり、きちんとした診断・治療を受けることのメリットは大きいと考えられます。また、アルツハイマー型認知症などでも早期に診断され治療することで進行を遅らせることが可能です。また診療により認知症の進行を予防するたくさんの手段やサービスを得られる恩恵があります。家族とともに治療をおこなうことで家族のなかでの患者さん本人の存在意義や楽しく生活をおくる方向性への手助けができると考えられます。

最新鋭の診療設備と来院し易い環境で認知症治療をサポート

最新鋭の診療設備と来院し易い環境で認知症治療をサポート

当クリニックの待合室はシックで落ち着いたインテリアでまとめられておりカフェのようなたたずまいになっています。まず病院に行くことのプレッシャーに打ち勝ち受診された患者さんにとって何度でも気楽に入れる環境であることが重要だと考えています。また、無床のクリニックですが看護師6人検査技師3人の体制でどんなに患者さんが多い状況でもゆっくりと話を傾聴することが可能です。まずは、本人・家族にとって困っていることが何かということをしっかり把握することが治療の一歩目と考えています。また認知症を診断するうえでの当クリニックの特長は、院内に最新鋭のCT 、MRIを備えていること。その画像を基に豊富な診療経験も踏まえて診断をつけています。また脳波検査や臨床心理検査などにより認知症類似疾患にも対応が可能です。MRIはオープン型を採用しておりドーム型での撮影では閉塞感が強く施行できない方でも対応が可能です。

慢性硬膜下血腫や特発性正常圧水頭症など、いわゆる治療可能な認知症に長く関わってきた経験から、当クリニックではCTやMRIのほか腰椎穿刺によるタップテスト(髄液排除試験)も行い、必ず診断をつけます。大きい病院に行く必要はありません。

認知症の患者さんとそのご家族が幸せな人生を送れるように

私は実家が耳鼻科の開業医であったこともあり、医師という職業は身近なものでした。医学部卒業時には耳鼻咽喉科への入局も考えましたが、人の生命の狭間で医療を行いたいとの志が捨てきれず脳神経外科に入局しました。脳神経外科では、救命センターでの仕事が長く重症頭部外傷や重症脳卒中の患者さんの治療に携わることを多く経験しました。脳神経外科専門医取得後は、大学病院での後進の指導とともに市中病院での急性期治療を主に行っていました。専門医取得後10年は「手術によって患者さんの命を救う、やりがいのある仕事だった」のですが開業の道を選んだのには、大きく二つの理由があります。

一つは、患者さんの一生に長く寄り添っていたかったからです。 頭の病気は残念ながら障害が残ったり根治が困難な場合も多いのですが、それでもできるだけ良い時間を長く過ごしてもらうのが医師の努めです。勤務医の場合、どうしても何年かごとに異動などがあり、ずっと診ることができませんが、かかりつけ医ならば長期的な視野に立って診療することができます。

もう一つの理由は、この地域に脳神経外科の専門医がいなかったことです。糟屋郡に隣接する福岡市の済生会福岡総合病院に勤務していたころ、この篠栗町や周辺の町など遠方から来院される方がかなりおられ、こちらで開業してほしいという声をたくさん聞きました。この地域は高齢者も多く認知症診療のニーズも大きいので、その一翼を担おうと開業を決意しました。

また、認知症治療に関しては患者さんの性格や人生観などを見極めて適切な説明とアドバイスをし、患者さん本人やご家族に前向きに病気と向き合っていただくことが重要でありクリニックでの医師の重要な役割と思っています。

当院では診察室に入られるまでに、看護師が患者さんとご家族からできるだけ詳しくお話を聞くためにスタッフを潤沢に配置しています。特に認知症の場合は、ご本人とご家族の話が食い違う場合があるので、丁寧な聞き取りが大事です。そうするにはやはり、スタッフの数が必要なんです。患者さんの中には『私はどこも悪くないんですけどね......』と渋々来たことをあからさまに示す患者さんもおられます。そんな方が診察室で積極的にお話しされるわけがない。でも、心配したご家族がやっとの思いで受診にこぎつけたのだから、私たちが症状に関するエピソードを引き出す努力をしなければなりません。病気に対する悩みや生活環境は、ご家族によってそれぞれ違います。きちんとそれを踏まえたうえで、いま私たちができることに誠心誠意取り組み、また介護に対する社会資源の生かし方などもお話しするようにしています」ご家族まとめてひとりの患者さんであるという意識を共有し診療にあたっています。

医療法人としては、今後認知症ケアを含めた介護事業と脳卒中後のリハビリなどに特化したリハビリ施設を併設した新たなクリニックの新設を計画しています。また、待ち時間の長い現況を改善するために機能を特化したクリニックの分割化を考慮してます。地域の他の診療所・介護施設・訪問医・訪問介護などとも連携を密にして、地域全体での認知症医療の向上の一翼を担いたいと考えております。