整形外科専門医インタビュー (いしばし整形外科給田診療所)

整形外科専門医

骨粗鬆症への対策で70代、80代でも骨折しにくい体をつくることが大切です。

石橋 嘉津雄先生

2017/08/25

MEDICALIST
INTERVIEW
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いしばし整形外科給田診療所
石橋 嘉津雄 院長
Katsuo Ishibashi

  • 日本整形外科学会認定専門医
  • リハビリテーション医
  • 日本医師会産業医
経歴
  • 学習院高等科卒
  • 日本大学医学部卒
  • 東京慈恵会医科大学 整形外科学教室
  • 世田谷下田総合病院 整形外科

骨粗鬆症、骨折や肩こり、腰痛、膝痛など日常的に起こる体の痛み対応

石橋嘉津雄院長

私はこれまでに大学病院、地域の総合病院において整形外科の専門医として、患者さんの治療をおこなってきました。得意としてきたのは手外科疾患と骨折などよって身体の運動機能を損なってしまった患者さんへの手術による治療です。

体が不自由なく動くということは、生活の質を高める上でとても重要です。特に高齢者は一度動くための機能を失ってしまうと回復が難しく、病院によってはある年齢以上の患者さんには手術をしないという方針のところもあります。しかし私は機能を回復できないことによって、寝たきりになってしまうことを考え、本人とご家族の希望に沿ってできるだけ手術をおこなってきました。

それでも、高齢者の骨折は多く、根本的な解決を図るには、皆さんに高齢者になっても骨折しない体をつくっていただくことだと考えるようになりました。そこで私はこの診療所を開業するにあたり、整形外科、リハビリテーション科、内科の診療科目を持つ総合医院として地域の医療に貢献するとともに、高齢者の骨折の原因となる骨粗鬆症の治療に取り組むことを目指しています。

当院では私の診断のもと、理学療法士、柔道整復師、作業療法士がそれぞれの特質を活かし、患者さんに合った幅広い治療をおこなえる体制を整えています。また、最新の骨密度測定器、超音波検査機、腰椎減圧治療器なども備えてより効果の高い治療に取り組んでいます。

日常生活で起こる腰痛、膝痛は骨の変形が原因かもしれません

石橋嘉津雄院長

もはや日本人の現代病とも言える腰痛。整形外科を訪れる患者さんの主訴の中でも腰痛が大きな割合を占めています。俗に「ギックリ腰」といわれる急性腰痛や、椎間板ヘルニアなどは働き盛りの若い世代にも多い疾患ですが、慢性的な腰痛は、40代、50代と年齢が上がるにつれて多くなっていくのが特徴です。また、人によっては腰痛よりも顕著な痛みを感じる膝痛も、年齢とともに症状を訴える人が多くなります。

これらの腰痛や膝痛が老化による筋肉の衰えによって起こりやすいことはよく知られています。筋肉の疲労や衰えによって腰痛や膝痛が起こっている場合はマッサージや運動によって改善する場合もあります。しかし、これらの痛みは骨の変形によって起こっている場合もあります。骨の変形は、骨密度が異常に低いことによっても起こります。この場合は骨の健康状態を改善して、治療していかなければなりません。

高齢者に多く起こる骨粗鬆症とはどんな病気でしょう

石橋嘉津雄院長

骨粗鬆症は骨密度が低くなり、骨が必要な強度を保てず、変形したり、骨折したりしやすくなる病気で、今やマスコミにも頻繁に取り上げられていて、既にご存知の方も多いと思います。70代から80代以上の高齢者に多く、極端な偏食や栄養不足などでそれよりも若い人にも起こります。特に女性は閉経後のホルモンのバランスの変化によってこの骨粗鬆症を起こしやすく、男性の2〜3倍ほども多く骨粗鬆症を発症します。

近年高齢者の骨折が増大したのはこの骨粗鬆症が原因だといわれています。高齢化自体もその要因ではありますが、私はかつて大学病院、総合病院での整形外科医としての勤務経験で、高齢者が骨粗鬆症にならないようにすることが、現状を改善するための一番効果的な方法だと感じました。多くの方が寝たきりになるきっかけをなくし、生涯、質の高い生活を送っていただくために私は骨粗鬆症を減らす治療をおこなっていこうと考えたのです。

癌、心筋梗塞、脳卒中など、人の命に関わる病気は様々あり、その怖さは広く知られています。しかし、高齢者が骨折することによって寝たきりとなり、生活の質を取り戻せないまま死に至る、「骨折の関連死」でもたくさんの方が亡くなっています。このことを広く皆さんに知ってもらい、骨粗鬆症への意識を少しでも高めていただければと考えています。

50歳を過ぎたら女性は骨密度検査を。適度な運動と食事が大切です

石橋嘉津雄院長

骨粗鬆症はそれこそ実際に骨折してしまうまで、自覚症状の全くない病気です。日常生活で本人が気づくということはありません。骨密度の変化を知るには骨密度測定器で検査することが必要です。当院に導入した全身用X線骨密度測定装置は2〜3分程度機器のベッドの上で横になっているだけで全身の骨密度が測定可能です。一般的に腰椎や脚の付け根の骨密度を測定します。男女の年齢に応じた標準的な骨密度と比較することも可能です。ご自身の骨密度がどれくらいかを知っておいていただき、骨密度の維持や改善の指針にしていただきます。女性の場合、骨密度が急激に変化するのが50代です。50歳を過ぎたらまず一度は骨密度を測っていただき、その後も1年ごとなど、定期的に測定いただけると安心です。

骨密度を上げるためには、日光を浴びる、適度な運動をする、カルシウム、ビタミンDを摂取するなどの方法があります。生活習慣を改善することで大きな効果を得られます。食事療法、運動療法なども患者さんの状態に合わせて指導していきます。

院内風景

重度の骨粗鬆症には薬剤を使った治療も可能です

骨密度を測る上でYAMといわれる数値が使われます。これは若年成人の平均値を表すもので、骨密度がこの数値の70%以下、あるいは80%でも脆弱性骨折がある場合は骨粗鬆症と診断されます。脆弱性骨折は転倒、もしくはそれ以下のわずかな外力によって起こった骨折で、患者さん本人が気がついていない場合もあります。

骨粗鬆症と診断されると、前述の骨密度を上げるための生活改善の他に薬剤を使った治療をおこなう場合もあります。骨粗鬆症の治療に用いる薬剤は、ビタミンD、骨吸収を促す薬、骨形成を促す薬などがあります。当院では患者さんの状況と希望に応じて骨粗鬆症の各種薬剤の処方をおこなっています。中でも骨形成を促す薬剤は毎日患者さん本人が自分で注射するのや、毎週1回、病院で行う注射が効果的です。しかし保険適用で3割負担場合、月間1万円程度の費用がかかります。

骨粗鬆症は生活習慣も含めた継続的な治療が必要です。薬剤を用いた治療には患者さんと十分なコンサルティングをおこなった上で効果的な治療を進めていきます。

リハビリテーション科で患者さんの機能回復を推し進めています

石橋嘉津雄院長

当院では骨粗鬆症による骨折や、病気やケガで生じた障害を理学療法や作業療法によって回復・改善させ、残された機能を最大限発揮できるようにサポートするリハビリテーション科があります。

リハビリテーション科では常駐の理学療法士が基本的な運動機能の維持や改善を目的に歩行などの体の動かし方を練習する運動療法や電気、温熱、光などを利用した物理療法をおこなっています。また「手」の機能回復を専門とする作業療法士が毎週2名来院し、高度な治療をおこなっています。

当院はまだ開院したばかりの診療所ですが、これら理学療法士、作業療法士、看護師のメディカルスタッフから、受付・事務スタッフにいたるまで既に共に勤務した経験ある、気心の知れたメンバーがそろっています。チームワークも抜群ですので、安心して受診してください。