頭痛の専門医インタビュー (よしむら脳神経外科・頭痛クリニック)

頭痛

丁寧な検査をし、迅速で正確な診断を行い、最善を尽くした治療をし、患者さんとご家族に寄り添う医療を提供する「外科医の眼と技を持つ脳神経系総合医」

吉村 文秀先生

2018/01/15

MEDICALIST
INTERVIEW
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よしむら脳神経外科・頭痛クリニック
吉村 文秀 院長
Fumihide Yoshimura

  • 日本脳神経外科学会認定専門医、指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由)
経歴
  • 平成5年 久留米大学医学部卒業 久留米大学病院、久留米大学高度救命救急センター、済生会福岡総合病院、済生会八幡総合病院、済生会二日市病院、済生会日田病院に勤務。
  • 平成14年 済生会二日市病院脳神経外科部長
  • 平成19年 久留米大学脳神経外科講師就任
  • 平成20年 済生会福岡総合病院脳神経外科部長:脳動脈瘤の手術、脳血管バイパス手術、脳腫瘍摘出術などを中心に脳神経外科手術全般に従事。
  • 平成29年 よしむら脳神経外科・頭痛クリニック開院

頭痛は市販薬で改善するものから命にかかわるものまで原因は様々です。

頭痛に関して説明

私は、約24年間にわたり、脳神経外科医として、大学病院、救急病院、地域中核病院に勤務してきました。その中で最もよく遭遇する患者さんの症状の一つが【頭痛】です。突然の激しい頭痛で発症し救急車で搬送されてくる方、慢性頭痛で歩いて外来受診される方、他の病気で入院中の方の軽い頭痛など様々な頭痛を診てまいりました。

頭痛には、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛のような痛みのコントロールが治療の中心になる一次性頭痛と、クモ膜下出血などの頭蓋内出血、神経内科疾患、頸部疾患などの他の疾患、病態が頭痛の原因になっている二次性頭痛に分類することができます。特に二次性頭痛には一刻を争う危険な頭痛が含まれています。残念ながら、頭痛の強弱や部位などでこれらを判断することは不可能です。実際、元々片頭痛がある方が痛み止めを内服してもよくならないため来院され、画像検査でくも膜下出血と診断されることや緊張型頭痛と判断した方が画像検査でくも膜下出血と診断されること、逆に症状からくも膜下出血であろうと予測して検査を行っても明らかな異常がなく一次性頭痛であることなどは時々あることで、私だけでなく多くの脳神経外科医が経験することであろうと思います。頭痛診療でまず必要なことは、命に係わる二次性頭痛を除外していくことです。それができた後に、十分な問診、病歴聴取、症状の確認を行い、必要な追加検査や治療を進めていくことが大切です。

私は脳神経外科医の経験を活かし、頭痛のスペシャリストとして、頭痛の分類と診断を迅速正確に行い、患者さんやご家族へわかりやすい説明を心がけています。 そのため当院には最新の1.5T MRIを導入し、頭痛で受診された方の検査を迅速に行えるように、体制を整えております。 万が一、危険な頭痛で手術や入院が必要とされる場合は信頼のおける近隣の総合病院と連携し、最善の治療が行えるように迅速に手配いたします。できる限り、患者さんとご家族に寄り添い、安心、安全な治療を進めてまいります。

急に起こる頭痛は危険です

これまでに経験したことのない強い頭痛や、急に始まり急激に強まる頭痛、発熱を伴う頭痛、手足の麻痺やしびれを伴う頭痛、50歳以降に初めて経験する頭痛、増悪傾向がある頭痛などは危険です。一刻を争う場合もありますので、至急受診して診断を受けましょう。これらの頭痛は、こんな疾患の症状かもしれません。

  • ・脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)
  • ・髄膜炎
  • ・脳炎
  • ・慢性硬膜下血腫、急性硬膜下血腫などの頭蓋内出血
  • ・脳腫瘍

まずは二次性頭痛ではないかどうかを鑑別することが大切です。「急に起こる頭痛は危険」と心得ておきましょう。

慢性頭痛は脳のサインかもしれません

慢性頭痛に関して説明

皆さんは、のどの痛みが続くときには耳鼻咽喉科、胸痛があるときは呼吸器科や循環器科、上腹部痛があるときは消化器科、女性の下腹部痛は婦人科など受診されると思います。「痛いところに何か病気があるかもしれない」と思い、その専門家を選択して受診するのは当然のことです。胃もたれから胃カメラをしたら、早期胃がんが見つかり、早期がんで治療できてよかったというたぐいの話はよく聞きます。

それでは、頭痛の時にはどこを受診されますか?私の周りには内科を受診される方がたくさんいらっしゃいます。中には「薬局に行って頭痛薬を買う」と答える方もいらっしゃいます。しかし、その頭痛は脳のサインかもしれません。一度は脳神経外科、神経内科で頭蓋内に異常がないかを検査してもらうことをお勧めします。頭痛、めまいの検査でMRI検査を行い、くも膜下出血を起こす前の脳動脈瘤、脳血管奇形、脳腫瘍などいわゆる無症候性の病気が見つかることがあります。頭痛が病気のサインであったという状態です。脳に損傷を起こす前に治療が可能な状態のことが多く、計画的に治療が可能になります。

頭痛の市販薬は多くは鎮痛剤で、1920年ころから市販されています。その当時は医療機関を受診しても、頭痛だけで二次性頭痛を診断することは不可能であったため、医療機関でも鎮痛剤を処方するだけであったと思われます。そのため、頭痛で医療機関を受診する機会が減った可能性があります。しかし、1990年以降はCT、MRI検査が広く普及し、比較的容易に二次性頭痛を診断することが可能になっています。1997年には日本頭痛学会が発足し、医師の中でも頭痛に注目が集まり、データの蓄積、治療方法などの意見交換が活発になってきております。また、新しい薬で頭痛を軽減できる可能性もあり、市販薬だけで経過を見るのは100年前の治療と同じで、医療技術の進歩の恩恵を受けていない状態で避けるべきと思います。先日、私のクリニックに「頭痛ぐらいで診てもらえますか?」とおっしゃって来院された方がいらっしゃいます。一通りの検査、診断をさせていただき、慢性片頭痛でしたので頭痛の予防方法をご説明し、予防薬と鎮痛剤を処方させていただきました。片頭痛は予防薬もありますので、きちんと診断されれば頭痛回数を減らし、頭痛から解放される日を増やすことができます。

繰り返す頭痛は生活の質を低下させます

度々繰り返される頭痛はつらいものです。こんな頭痛は慢性頭痛といいます。生活に支障が出ない程度のものを軽症、日常生活や仕事に影響があるものを中等症、日常生活や仕事が不可能で寝込むものを重症と定義されています。中等症、重症になると患者さんの生活の質を大きく損なってしまいます。慢性頭痛の中で最も高頻度のものは緊張型頭痛です。これはほとんどが軽症です。次に多いのは片頭痛です。片頭痛は重症のものも多く、WHOが発表している健康寿命への悪影響を示す病気ごとのYLD(障害損失年数)というものがありますが、全疾患の中で片頭痛は第10位で、気管支喘息(第13位)、交通事故(第14位)より上位です(ちなみに第1位はうつ病です)。我慢が出来て日常生活に支障がない程度の軽症ならまだしも、仕事に集中できない、普通にできない程度の中等症や寝込んでしまうような重症になると非常につらいと思います。約束通りの行動、仕事が急にできなくなるわけですから、信頼関係、人間関係にも制限、影響が大きいと思います。

1997年の調査では日本人の頭痛有病率は約40%で、60%の人は頭痛がほとんどありません。軽症の緊張型頭痛の方は22.4%で日常生活に影響がない程度ですので、80%以上の日本人は日常的な強い頭痛の経験がありません。 つまり、中等症、重症になるような片頭痛(8.4%)、さらにひどい痛みの慢性片頭痛(2%)、群発頭痛(ごく少数)での強い痛みを周囲の方が理解できないことがよくあるのではないでしょうか?女性の生理痛を男性が十分理解できないことと同じです。このように考えると、片頭痛の方が痛くなる前に鎮痛薬を服用する気持ちもわかります。 慢性頭痛でお悩みの方は、市販薬の内服を繰り返さずに、一度頭痛クリニックを受診してみてください。 ちなみに片頭痛は女性に多く、30代女性の20%、40代女性の17%です。全年齢で見ても男性の片頭痛有病率は3.6%ですが、女性の有病率は12.9%です。片頭痛と生理痛に耐えている女性はすごいと思います。

・片頭痛

主に頭の片側のこめかみ辺りから目にかけて、脈のようにズキンズキンと痛みます。痛みは多くは4時間から3日ほど続き、収まっても月に1〜2回、多ければ週に1〜2回ほど繰り返し起こります。

強い痛みに、吐き気や嘔吐を伴うこともあり、寝込んでしまう患者さんも多いようです。体の向きを変えたり、頭の傾きを少し変えたりするだけでも痛みが悪化するので、行動が大きく制限されてしまいます。

・緊張型頭痛

頭の両側から全体が、ギューッと締め付けられるように痛みます。鈍く重苦しい痛みです。痛みは短くて30分、長くて1週間ほど続くこともあり、毎日起こる患者さんも多く見られます。

吐き気を伴うこともありますが、嘔吐に至ることは少なく、肩こりやめまいを伴う患者さんも多いようです。寝込まなければならないほどではないけれど、つらい痛みです。動くと多少楽になることもあります。

・群発頭痛(三叉神経・自律神経性頭痛)

とても強く激しい痛みが、頭の片側に1〜2か月間ほぼ毎日続けて起こります。群発的に起こる頭痛ということで、群発頭痛と呼びます。痛みは短いと15分ほど、長くて3時間ほどで止みますが、「目がえぐられるような」と表現されるほどの激痛です。

じっとしていられないほどの激痛で、動くと痛みが紛れることもあります。目が充血したり、涙が出る、鼻水が出るなどの症状を伴うこともあります。

・その他の一次性頭痛

頭痛はこんな検査を行います

頭痛の診療で大切なことは、危険な頭痛とそうではない頭痛を、一刻も早く見分けて、それぞれに最適な治療を行うことです。そのために、私は脳神経外科としての長い経験から得た「外科医の目」をもって、危険な頭痛を迅速に診断します。そのために以下のような検査機器を備えております。

・MRI

放射線ではなく、電磁波や磁気、水素原子の働きを利用して、体内の臓器や血管の状態がつぶさにわかる検査機器です。筒状の検査機器の中に入り造影検査を受けて頂きます。当院では最新装置の1.5テスラと呼ばれる、より短時間で、より鮮明な画像を撮ることができる上に、検査時の音も静かになり、よりリラックスして検査を受けて頂けるようになっております。

・マルチスライスCT

脳出血や脳梗塞、脳腫瘍などの脳の疾患、危険な頭痛かどうかの診断に欠かせない検査機器です。一刻を争う患者さんのために、短時間で撮影が行えるうえに、被ばく線量が最大でこれまでの75%低減できるようになりました。安心して検査を受けて頂けます。

・頸動脈・血管エコー

超音波を利用した検査機器で、簡単に行えますが、動脈硬化など血管の病変がよくわかる検査機器です。

・脈波検査

血管の硬さや詰まり具合を調べることができ、動脈硬化の進行度を診断する大切な検査を行います。同時に手足の血圧も計測でき、5〜10分で終わる短時間の検査です。

これら検査の結果、万が一手術や入院が必要との診断となりましたら、地域の総合病院と連携して、転院や治療を行いますので、ご安心ください。

頭痛の治療はこんなことを行います

・迅速正確な診断

先に述べましたように、頭痛には一刻を争う危険なものもあります。その頭痛を迅速に見分けて診断し、必要最適な治療を始めることが、頭痛治療の第一に大切なことです。

・問診、病歴、症状確認

問診、病歴、痛みの状態、強さなどの問診が一次性頭痛の診断には非常に重要です。症状、痛みの程度、部位、随伴症状をお聞きしながら、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、運動時頭痛、睡眠時頭痛、一次性穿刺様頭痛などの様々な一次性頭痛の鑑別を行います。

・頭痛の原因検索

一次性頭痛の診断は二次性頭痛の除外を行う必要があります。頭蓋内疾患以外に内科疾患が原因で頭痛がある方もおられます。甲状腺機能低下症、鉄欠乏性貧血、睡眠時無呼吸症候群、側頭動脈炎、薬剤性、頚椎症、顎関節症、高血圧性脳症、緑内障などの眼疾患等様々な内科疾患が原因となることもあります。採血検査などを追加します。

・痛みの緩和治療(急性期治療)

慢性頭痛の治療は、頭痛発作が起こらないようにする予防治療と、発作が起こってしまった時に痛みを軽減する急性期治療の2つの柱で進めます。発作時の痛みの緩和には、通常の鎮痛薬なども使用しますが、中等症以上の片頭痛の方には即効性があり、効果的なトリプタン製剤が使用できるようになり、発作時の患者さんの苦痛軽減に重要な役割を占めています。群発頭痛の患者様にはイミグラン自己注射の指導も行い、安全に使用していただきます。

・頭痛発作の予防

片頭痛発作がない時から予防薬を飲み続けると、発作回数が減る、発作の持続時間が短くなる、発作時の痛みが軽くなるなどの効果が得られる治療です。バルプロ酸ナトリウム、塩酸ロメリジン、プロプラノロールなどを使用しますが、症状をお聞きしながら漢方薬を併用することがあります。

ホスピタリティーにあふれた、優しさと温かさのあるクリニック

私の座右の銘は「名医たらずとも良医たれ」という言葉です。医師になった当初から、そのことを常に心がけています。一刻を争う状況であっても、そのような状況であるからこそ、患者さんとご家族に症状と必要な治療、予想される治療経過をわかりやすく説明いたします。丁寧な検査をし、迅速で正確な診断を行い、最善を尽くした治療をし、患者さんとご家族に寄り添う医療の提供が、良医としての資格です。

私は長く脳神経外科医としての勤務から得た知識と経験で、「外科医の眼と技を持つ脳神経系総合医」を目指しております。まずは病気にならないように予防をしっかりすること、病気になってしまったら治療をしっかりすること。簡単なことのようですが、難しいこともあります。当院は患者さんに優しく温かいクリニックとして、地域の皆様の信頼を頂けるよう努めてまいります。