加齢黄斑変性の専門医インタビュー (横浜保土ヶ谷眼科)

加齢黄斑変性

待ち時間を減らし、患者のニーズに沿う治療を提供『少しでも楽にしてあげたい』

西出 忠之先生

2018/11/20

MEDICALIST
INTERVIEW
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横浜保土ヶ谷眼科
西出 忠之 院長
Tadayuki Nishide

  • 日本眼科学会専門医
  • 日本眼科学会指導医
  • 難病指定医
  • 眼科PDT認定医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 有水晶体眼内レンズ手術認定医
経歴
  • 横浜市立大学 医学部 入学
  • 横浜市立大学 医学部 卒業
  • 横浜市大附属病院 研修医
  • 横浜市大附属病院 眼科常勤医師
  • 秦野赤十字病院 眼科常勤医師
  • 茅ヶ崎市立病院 眼科常勤医師
  • 横浜南共済病院 眼科常勤医師
  • 横浜市大附属センター病院 眼科 助手
  • 横浜市立大学大学院 医学部 眼科学 助手
  • 横浜市立大学大学院 医学部 眼科学 助教、医局長
  • 横浜市立大学大学院 医学部 眼科学 講師、医局長
  • 横浜市立大学大学院 医学部 眼科学 講師、総医局長
  • 横浜市立大学大学院 医学部 眼科学 准教授

患者数が増加している加齢黄斑変性

加齢性黄斑変性は近年患者さんが増えてきていると言われる病気です。
この病気は、目の中の中心にある黄斑という場所で発生します。黄斑は物を細かく見る、色を見るという場所です。そのため、何か細かいものを見ようとすると、歪む、かすむ、中心だけ黒く見えるという症状が出て見えにくくなります。全体的にかすむ、ものが二重になるという症状は誰しも経験したことがあると思いますが、加齢黄斑変性の場合は全体的にかすむのではなく、中心部分だけ歪んだりかすんだりします。
病気は目の奥で少しずつ進行していますが、患者さんの多くが「ある日急に見えにくくなった」と来院されます。これは、片目の小さな症状であれば、良い方の目がカバーして脳で悪い情報が伝わりにくくなるためです。しかし症状がだんだん強くなると、良いほうの情報も打ち消してしまいます。そのため病気がある程度育ってから急に自覚することが多いのです。

病気の原因は、加齢と喫煙、食事

加齢という名前の通り年齢が高くなると現れる病気であることから、人口の高齢化が原因のひとつです。年をとって目の奥が弱くなり、加齢性黄斑変性になりやすくなります。それから大きな原因の一つが喫煙です。喫煙に関するいろいろな物質が目の奥に悪影響を及ぼして異常が起こります。そしてもう一つ、忘れてはいけないのが食事の内容です。カロリーの高いものを食べ続け、栄養のバランスが取れていないと、高血圧になったり目の奥にビタミンや栄養素が届かなくなったりして病気になります。

三次元断層検査により病気が発見されるようになった

この病気は、視力検査、眼底検査、三次元断層検査という3種類の検査を行い診断します。三次元断層検査とは、目の奥の一部だけを立体的に調べるという検査です。以前と比べると三次元断層検査ができる機械を所有する眼科が増え、検査が受けやすくなりました。この検査によって加齢黄斑変性が発見されるようになったのも、加齢黄斑変性が増えている理由の一つです。
検査はとても簡単で、目の奥に弱い光を当てるだけです。麻酔も不要で、短時間で検査ができ、その日のうちに診断することができます。

加齢性黄斑変性の有効な治療法

さまざまな治療法があるのですが、今、最も有効な治療法は硝子体注射です。目の奥に薬剤を注射し、病気が起こっている場所に薬剤を届けます。当院でも毎週たくさんの患者さんがこの注射を受けています。注射を打つのは、角膜の脇4㎜(白目の出血しにくいところ)の場所です。そこに一番細い針で、患者さんからは見えない方向から注射します。
処置後の変化は人それぞれなのですが、約半数の人が翌日には良くなったと実感されています。目というのは非常に繊細なので、良いか悪いか、自分ですぐに分かるのです。ただ一つ大事なのは、それで病気が消えたのではなく、抑えられただけだということです。そのため、くり返しの治療が必要となります。月に1回の頻度で、最低3回は注射を受けていただき、その後は患者さんの症状に合わせて治療の回数を決めていきます。
注射をするときは光を当てて眩しくし、物がよく見えないようにして注射をします。また、麻酔もしています。注射をするときに針は見えませんし、注射をしている時間は1回あたり10秒程度です。患者さんの話をきくと「いつ注射をしたのか分からなかった、押されているような感じがあっただけだ」とおっしゃいます。
翌日、確認のために来院し、眼帯を外していただきます。そこで問題がなければ普通の生活に戻ります。当日だけは眼帯をしているのでお風呂には入れないのですが、それ以外は普通の生活が可能です。

加齢性黄斑変性は再発・再活動する病気、定期的な検査は必須

加齢黄斑変性は失明の原因にもなる病気ですが、病気そのものが原因というよりも、加齢黄斑変性により大出血を起こし、治療ができなくなるためです。
加齢性黄斑変性は進行していたとしても、多くの場合、注射によって少しの改善やプラスの影響を得ることができます。ただし、この病気は再発・再活動することがあるため、注射をしたらそれでおしまいというわけではありません。病気が再活動したら、再び注射をして進行を止めます。そのため、定期的に受診していただき経過をチェックしています。
この病気は他の緑内障や網膜剥離と同じで失明につながる病気であり、後戻りができない病気でもあります。ただし初期なら治らなくても、進行を止めることができます。しかし進行した状態ではどんな治療をしても失明に向かっていきます。
病気を早期発見するために、健康診断で眼底に異常が指摘されたら必ず眼科を受診してください。また、片目ずつ隠して柱や障子の格子部分などを見て、歪んでいないか、欠損がないかを確認するというセルフチェックも有効です。60歳くらいからはセルフチェックを週に1回くらいはしていただくと良いでしょう。
この病気には完全な予防法はありません。原因となるタバコを吸わない、偏食や暴飲暴食をしないことが大事です。ビタミンが不足しないように緑黄色野菜をしっかり摂り、バランスの良い食生活を心がけると良いでしょう。

患者さんのニーズに沿った診療を行う

患者さんは軽症の方から重症の方までさまざまです。軽症の患者さんだと、仕事の合間に来院さることもあるため、待ち時間・診療時間を含めなるべく短時間で終わるようにし、重症の患者さんの場合は、少し時間が長くなってもしっかり説明する時間を取るというように、病気の深刻さに合わせた対応をするように心がけています。大学病院に勤務していた際、患者さんの待ち時間が非常に長く、4時間ほど待つ患者さんもいました。それは患者さんが多いというだけでなく、効率が悪い面も多かったためです。そういったものをできるだけ改善し、少しでも患者さんを楽にしてあげたいと思っていました。
病院は決して怖いところではありません。病院にかかることに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、当院では過ごしやすいようにさまざまな工夫をしていますので、足を遠ざけず、何かあればすぐに受診して確認する、そういう気持ちで病院と付き合っていただけると良いと思います。