内視鏡検査の専門医インタビュー (厚木胃腸科医院)

内視鏡検査

地域の「胃がん・大腸がん進行の低減」を標榜し、生活者の健康を守る。年間症例数2,400件以上の検査を行う「内視鏡」の専門医

寒河江 三太郎先生

2017/03/01

MEDICALIST
INTERVIEW
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厚木胃腸科医院
寒河江 三太郎 院長
Santaro Sagae

  • 日本消化器内視鏡専門医
  • 日本外科学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本禁煙学会認定指導医
経歴

2007年、北里大学医学部卒業。外科医を志し、国際親善総合病院での研修後、慶應義塾大学一般・消化器外科教室に入室。その後、稲城市立病院、平塚市民病院の外科、慶應義塾大学病院一般・消化器科外科でキャリアを重ね研鑽を積んだ。

2016年6月、父が院長を務める「厚木胃腸科医院」の2代目となり、勤務医時代に専門とした内視鏡検査に注力。胃がんや大腸ガンの早期発見・早期治療に尽力しながら、検査の重要性を世に広めるべく、啓発にも取り組んでいる。

“かかりつけ”として半世紀のクリニックを継承した内視鏡専門医

当院は近年改装をしたのもあり、あたらしいクリニックかと思われるかもしれませんが、約50年の歴史があります。ありがたいことですが、近隣にお住まいの方々に、なんでも相談できるかかりつけとして認知していただいています。私が父から継承し2代目になったのは2015年のこと。まだ日は浅いですが、父がそうであったように、今後も末長く皆さまの健康のお役に立てるクリニックとして邁進していきたいと思っています。

父の代から変わったのは、内視鏡検査など各種検査への注力です。自分の専門分野を加えることで、通いやすさはそのままに、より病気の早期発見と早期治療に貢献できる専門的な環境をつくりたいと考えました。

日々の診療と体験から磨いた専門分野を多くの患者へ

内視鏡を専門にしたきっかけは、勤務医時代に遡ります。もともと私は、大学病院や関連病院の消化器外科で診療にあたっていました。北里大学を卒業後、国際親善総合病院での研修を経て慶應義塾大学の一般・消化器外科へ入室。その後、稲城私立病院や平塚市民病院の外科、慶應義塾大学病院一般・消化器外科で研鑽を積みました。

それぞれ大きな病院で、潰瘍性大腸炎や腸閉塞などさまざまな病気の患者さんが来院され、また進行がんの方も少なくなく、数々の手術を担当しました。

外科診療の日々で、私なりに考えたのは大掛かりな手術が必要ないうちにがんを何とかできないか、ということです。進行がんは手術したとしても生命予後にリスクがありますから、それ以前、初期の段階でがんを発見し治療することも重要だと思うようになっていきました。そして、特に胃がんや大腸がんは早期発見・早期治療でほぼ治ることがはっきりわかっていますので、そこに貢献したいと内視鏡の診断技術を磨き専門医となりました。

また、このような経緯には、診療での気づきだけではなく、自身の体験も関係しています。実は、継承のきっかけも父の食道がんを早期発見したことでした。幸いにして治療は成功しましたが、家族としてがんと向き合った体験も、早期発見や早期治療へ意識を向けさせたのだと感じています。

キャリアと体験、いわば医療と家族の視点から診療にあたれる分野が内視鏡なのです。まだまだ、世の中のイメージでは苦手意識が強い検査だとも聞きますので、当院では患者さまができる限りストレスなく質の高い検査を受けられる環境づくりと啓発に積極的に取り組んでいます。

胃がんの99%に関与する「ピロリ菌」とは?

内視鏡の受診理由に多い胃がんのお話をすると、胃がんはまず日本人のがん死亡率で男女ともにトップ3に入るがんです。男性では肺がんに次ぎ第2位、女性では、大腸がん、肺がんに次ぎ第3位となっています。その原因ですが、わが国では99%の胃がんに「ピロリ菌」が関与しているといわれています。

最近はメディアでも取り上げられているので、耳にしたことがある方も多いと思われますが、ピロリ菌は正式名称を「ヘリコパクター・ピロリ菌」といい、胃の中に住む常在菌です。ただ、常在菌とはいっても、誰しもの胃の中にいるのではなく、保菌者と無保菌者に分かれ、特に高齢者の方は保菌率が高い傾向にあります。なぜ、高齢者に多いのか? といえば、ピロリ菌はほとんどが5歳以下で感染し、汚染された水などや、感染者からの経口が感染経路になると考えられていて、井戸水の利用など、まだ上下水道の整備が進んでいなかった数十年前の時代に高い感染リスクがあったとされているからです。事実、現代の若い人は保菌者からの経口感染が多く、ピロリ菌の保菌率は低くなっていることが確認されています。

ピロリ菌が胃がんリスクを高める仕組み

胃に感染すると生じやすくなるのが、慢性胃炎とよばれる持続的な炎症です。この症状が長期化することで胃の粘膜の萎縮と炎症が進んでいきます。胃粘膜の萎縮は「オープンタイプ」と「クローズタイプ」という2パターンがあり、さらにそれぞれ3段階に分けられますが、重い症状であるオープンタイプは胃がんの発生リスクが極めて高まっている状態とされています。

ピロリ菌の検査は血液や尿検査、内視鏡検査による粘膜採取などで手軽に行えます。除菌においても抗菌薬と胃酸の分泌を抑える薬の1週間の内服でほとんどの方が除菌可能ですから、心配な方はぜひ検討いただきたいと思います。また、胃がんだけではなく、さまざまな胃の病気の引き金がピロリ菌です。例えば幼少期の祖父母とのキスなど、保菌者の口から感染することもわかっていますので、高齢者の方だけではなく、若い方も検査をして、保菌している場合は除去をおすすめします。

早期胃がんの発見に有効な内視鏡検査

ピロリ菌で荒らされた胃の状態を判定、またはさまざまな胃の病気を発見するのに必須となるのが内視鏡検査です。そして、特に早期胃がんの発見率については、血液検査からピロリ菌の有無と胃がんリスクを判定する「ABC検査」、胃の輪郭から胃がんの病変を判定する「バリウム検査」と比べても群を抜く精度を誇っています。

当院の専門性としては、2つの特徴があると考えています。ひとつは症例実績。内視鏡全体で年間2,400件以上の症例に検査を行い、胃内視鏡については1,500件以上行っています。絶えず経験を積み重ねながら、胃の微細な色調変化や凹凸の異変から診断を下せる技術を磨いています。もうひとつは、患者さまに負担ない検査環境。内視鏡と聞いて、いちばん不安に思われるのが、“えづいてしまう”嚥下反射による苦痛だと思います。そこで、外経5mmと細い最新型の内視鏡を用いて検査を実施。さらに苦手な方には検査前に静脈麻酔も用意しており、まったく気にならなかったという方が多数いらっしゃいます。ストレスなく検査を受けられ、はっきりと胃の状態がわかる。それが強みです。

がんを放置させないためにも、内視鏡に取り組む

現在では、ピロリ菌の除去も浸透しつつあり、胃がんの罹患率は近年で減少傾向にあります。しかし、死亡率の高さは最初にお話しした通りのですので、40歳以上の方や親族に胃がんを患った方がいらっしゃる場合は、ぜひ保菌判定や定期的な内視鏡検査を受けていただきたいと思います。

また、当院では大腸内視鏡検査も同様に力を入れています。こちらも、胃内視鏡と同じく“つらい”というイメージばかりが先行してしまいがちの検査ですが、熟練した専門医によれば決してつらいものではありません。検査後に生じる“お腹の張り”を抑えるため、事前に注入する空気の代わりに「二酸化炭素」を用い、患者さまの負担の軽減にも取り組んでいます。

胃がんも大腸がんも初期では症状がまずでません。そして、放っておくほど治療は大掛かりになり死亡率も上がります。如何に誰もが内視鏡を手軽に受けられる環境をつくるか、そして胃がんや大腸がんの死亡率をどこまで下げられるか、それを当院の使命だと考えています。今後も誰もが気軽に受診でき、しっかりと安心できる環境づくりに取り組んでいきますので、ぜひお気軽にご相談ください。