この記事の監修ドクター|寒河江 三太郎先生(厚木胃腸科医院)
胃の病気にはピロリ菌が大きく関わっています。ピロリ菌と胃内視鏡検査について知っておきましょう。
ピロリ菌とは
ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌です。
食べ物を消化する胃酸の酸度は高く、多くの細菌は生き続けられないのですが、ピロリ菌は胃酸と共存することができ、胃炎や胃潰瘍、胃がんや食道炎などの病気の原因となることがわかっています。
ピロリ菌は生まれたときから胃の中にいる細菌ではなく、多くの場合幼児期に感染します。主な感染経路は井戸水や既感染者からの経口感染で、上下水道が未整備の国での感染率が高いのですが、日本は先進国の中でも際立って感染率が高い国です。井戸水で育った中高年が多く感染しているのに対して若年層では未感染者が多く見られます。
ピロリ菌感染を調べる胃内視鏡検査とは
ピロリ菌に感染しているかどうかを調べるには胃内視鏡検査がお勧めです。経口あるいは経鼻で小さなカメラやレンズを通して内部を観察し、同時に治療も行う検査です。胃カメラとも呼ばれます。
口や鼻を通すと言うと痛いとか苦しいのではと心配になりがちですが、技術の進歩でとても細い内視鏡が開発されていますし、静脈麻酔や鎮痛剤で痛みを感じにくくして検査を行いますので安心して受けましょう。
検査前日の夕食は通常通りとって良いのですが、夜12時以降の食事は控えましょう。検査当日は起床時から検査終了まで食事はできませんが、水やお茶、スポーツドリンクは飲んでも大丈夫です。静脈麻酔を行う場合は、車やバイク、自転車でクリニックに行くのは避けましょう。
クリニックでは血圧測定ののち、正確な検査のために胃の泡をなくす消泡剤を飲みます。喉の麻酔と静脈麻酔を行い、経口の場合は口に検査用のマウスピースをはめて検査代の横になります。検査は5分ほどで終わり、何も覚えていない患者さんも多いです。検査後は10~15分ほど安静にしてから、検査の結果を聞くことができます。
胃内視鏡検査でわかる病気
胃内視鏡検査でわかる病気にはどんなものがあるのでしょうか。自覚症状とともに見ていきましょう。
- 逆流性食道炎
ストレスや加齢によって胃の入り口の筋肉(括約筋)が緩み、胃液が食道に逆流してしまい、食道粘膜を傷つけて炎症が起こります。炎症が悪化したものを食道潰瘍と言います。慢性化すると食道がんになりやすい病気です。
ピロリ菌に感染していると胃酸の分泌が減るため、近年ピロリ菌感染率の低下に伴い、逆流性食道炎の症状を訴える患者様が増加しています。自覚症状は、胸やけやすっぱいものが上がってくる感覚、食べ物がしみたりつかえる感覚があります。
- 食道がん
- 食道にできるがんですが、比較的進行が早く、予後不良ながんといわれています。逆流性食道炎が重症化慢性化するとがんが発生することもあります。食道がんの初期は自覚症状がない場合が多いですが、症状が進んでくると胸やけや胃酸が上がってくる感覚など、食道炎と似た症状が起こります。
- 胃炎
- きっかけはストレスや暴飲暴食、喫煙や薬に副作用などさまざまですが、長引くと慢性胃炎となります。原因はピロリ菌であることが多く、胃がんの原因ともなる病気です。悪化した場合を胃潰瘍と言います。40歳以上に多く、自覚症状は胃の不快感や痛み、むかつきや嘔吐、食欲不振などが起こります。
- 胃がん
- 胃がんの70%がピロリ菌を原因としており、ピロリ菌の除菌が予防として有効です。発症した場合も早期発見できれば、内視鏡治療による早期治療で完治できる場合もあるがんです。自覚症状は初期はない場合が多く、進行してくると胃の不快感や痛みなど、胃炎と似た症状が起こります。
- 十二指腸潰瘍
- ストレスや不規則な生活などで胃の消化液である胃酸が過剰に分泌されてしまい、十二指腸の粘膜が傷ついて起こります。95%がピロリ菌を原因として発症し、10~20代の若年層に多い病気です。自覚症状は、空腹時の上腹部痛や胸やけ、吐き気や嘔吐が起こります。
胃内視鏡検査とピロリ菌除菌の大切さ
胃内視鏡検査で発見することのできる病気はいくつもあり、がんの原因となる病気も含まれています。早期発見と早期治療が大切な病気です。異常を感じたら胃内視鏡検査を受け、ピロリ菌の検査も行いましょう。
検査でピロリ菌の感染が分かった場合は除菌治療を受けることができます。さまざまな病気の原因となるピロリ菌を除菌して、健康な生活を目指しましょう。