骨粗しょう症の専門医インタビュー (本田医院)

骨粗しょう症

患者さんの「治したい」という意志を大切にする骨粗しょう症のスペシャリスト

本田 雅則先生

2018/08/03

MEDICALIST
INTERVIEW
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本田医院
本田 雅則 院長
masanori honda

  • 日本整形外科学会 整形外科専門医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 日本整形外科学会 認定スポーツ医
  • 日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医
経歴
  • 平成10年 聖マリアンナ医科大学医学部医学科 卒業
  • 聖マリアンナ医科大学医学部付属聖マリアンナ医科大学病院整形外科学教室 入局
  • 平成12年 聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科 入学
  • 平成16年 同大学院卒業
  • 聖マリアンナ医科大学医学部付属聖マリアンナ医科大学病院
  • 聖マリアンナ医科大学医学部付属東横病院
  • 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
  • 川崎市立多摩病院など市中の中核病院に勤務
  • 平成27年 10月1日 本田医院 開院

元野球少年が生まれ育った地元に開いた整形外科とリハビリテーション科の医院

私はこの町田の街で生まれ、野球に打ち込む少年時代を過ごしました。そんなことから、スポーツに親しんだ私は、スポーツ医学に関心を持ち、大学、大学院で整形外科とリハビリテーションを専門に医学を学び、大学付属病院、地域の中核病院で整形外科医として医療に取り組んで来ました。

大学附属病院や中核病院では主に外傷や骨折の治療をおこない、数多くの手術も手がけました。しかし大規模病院では医師が担当する患者さんも必ず同じとはいかず、どうしても患者さん一人ひとりと向き合って治療をおこなう時間が限られてしまいます。そこで私は、地域のホームドクターとして活躍できるよう開業の道を選びました。2015年10月から町田駅から徒歩5分の立地で、平日も19時まで、土曜日の診療もおこなっています。整形外科、リハビリテーション科を標榜しながら、専門性にこだわらず、幅広い患者さんの悩みに応えていきたいと考えています。

気がつかない間に進行している骨粗しょう症。いくつであっても今から意識を

メディアにもよく取り上げられる骨粗しょう症について、既にご存知の方も多いと思います。加齢などによって、骨の密度が下がり、骨がもろく、弱くなってしまう病気です。人の生活において、骨が重要な役割を果たしていることはいうまでもありません。人生において長く健康な体を保つためには、骨粗しょう症にならないようにすることは重要なポイントだといえます。

骨粗しょう症には男性よりは女性がなりやすく、症状が現れてくるのは、50代から60代以上です。しかし、加齢によっていきなり骨密度が下がるのではなく、その進行には食生活と運動が大きく影響することがわかっています。50代になったから、注意するというのではなく、30代、40代から骨粗しょう症にならない生活スタイルをつくっていくことが重要です。そしてその生活スタイルは骨粗しょう症だけでなく、広く生活習慣病にならない生活スタイルでもあるのです。

骨といえばカルシウム、さらにビタミンD、K、タンパク質の摂取と運動を

子どもの骨の成長のために、カルシウムやビタミンDが必要なことは皆さんも耳にされたことがあるのではないでしょうか。大人になってから健康な骨を維持するための食生活も基本は同じです。カルシウム、ビタミンD、さらにビタミンK、タンパク質の摂取が骨の健康維持に効果的です。

カルシウムはイワシ、シジミ、干しエビなどの魚介類、納豆、木綿豆腐などの大豆製品、乳製品、野菜、乾燥ひじき、わかめなどの海藻類に多く含まれます。ビタミンDはサンマ、サケなどの魚類、干しシイタケなどのキノコ類に多く含まれます。これらの食品を見ると、肉中心の欧米型の食生活よりも、魚や大豆製品、海藻を好んで食べる日本型の食生活の方が理想に近いことがわかります。日頃からこれらの食品の摂取を心がけていれば、骨粗しょう症が現れるリスクを下げることができます。

また骨を健康に保つために食生活を意識する人は多いのですが、同じくらい大切なのが運動です。骨の形成にはそのための栄養と適度な運動が必要で、運動なくして十分な骨密度は維持できません。普段の生活において全く運動から離れてしまっているという方には、短時間の散歩から運動をはじめることをおすすめします。体内でビタミンDをつくるためにも日光を浴びることも重要です。1日10〜20分程度の散歩でも、全く運動をしない人と比べると骨粗しょう症ばかりでなく生活習慣病全体に高い効果を示すことがわかっているのです。

こんな形で骨粗しょう症は見つかっています

当院に来られる患者さんで、骨粗しょう症がみつかるのは、健康診断で指摘を受けて、相談に来られる患者さんや、テレビなどで情報を見て「自分は大丈夫だろうか?」と検査に来られる患者さん、そして腰痛や膝の痛み、骨折などで来られた患者さんがいらっしゃいます。

骨粗しょう症自体に自覚症状はありません。骨密度が下がることによって骨折しやすくなったり、骨が変形して腰痛や膝痛を起こすなどの影響が出ます。骨粗しょう症と診断されるのは、骨密度が健康な若年成人の70パーセントを下回った場合です。骨折などの既往があった場合は骨密度が80パーセント以下の場合から骨粗しょう症の治療をはじめます。当院では骨粗しょう症が疑われる患者さんに血液検査と腰のレントゲン撮影、そして骨密度測定装置による検査で正確な骨密度を測って診断をおこなっています。

患者さんの意志を大切にする薬のよる骨粗しょう症治療

骨粗しょう症と診断されたら、それに対する治療が必要です。骨粗しょう症には前述の運動や食事による療法をおこないながら、骨密度を上げることができる薬による治療が可能です。

骨は骨吸収と骨形成を繰り返して健康な状態を保っています。加齢や栄養、運動の状態によって、骨吸収に骨形成が追いつかなくなることで、骨密度が低下し、骨粗しょう症が起こるのです。骨粗しょう症の状態を改善していく薬には主に骨吸収を抑える薬と、骨形成を促す薬の2種類があります。どんな薬を使うか、あるいは併用するかは、患者さんの状態によって変わってきます。

当院では私から「この治療が正しいです」というような決めつけは致しません。患者さんと体や状況を考えて適切な提案はおこないますが、治療の方法を決めるのはあくまで患者さんだと考えています。骨粗しょう症の治療はもちろん保険適用ですが、薬を使った治療には患者さんにも一部費用と通院する手間が発生します。だからこそ治療は「医師にすすめられて」だけではなく、ご自身の意志でスタートいただきたいと考えています。

健康な体で長い人生を楽しみましょう

前述のとおり。骨の変形や骨折など特に影響が出ていなければ、特に自覚症状がないのが骨粗しょう症です。しかし、加齢によって骨と骨とをつなぐ軟部組織も痩せていき、全身から痛みは現れてきます。運動によって下肢を中心に筋力を強化し、骨粗しょう症を防ぐだけでなく、骨を支える全身の力を鍛えることも、老化防止につながります。

当院では骨粗しょう症の患者さんに関しても専門の理学療法士がリハビリテーションの指導をおこなっており、高い効果を上げています。一度の通院でリハビリテーションをおこなうのは20〜30分程度で、患者さんの状況に合わせてていねいにおこなっていきます。骨折などがある人はその部位の治療の進み具合に合わせ、全身の筋力アップを図っていきます。健康な人でも歪んでいることの多い、歩き方のバランスなども矯正していきます。

継続治療する患者さんは半年に1度骨密度の測定をおこなっていきます。薬物、食事、運動(リハビリ)の3つの療法を併行しておこなっていくことで、骨粗しょう症の症状は大きく改善されていきます。関節の痛みが和らぐ、姿勢が良くなるなど、目に見えて症状が改善される場合もあります。そして今は大丈夫であっても将来的に骨折や寝たきりになるリスクを減らすために、50歳を過ぎたら年に1度ぐらいで骨密度の検査を。骨粗しょう症と診断されたら、放置せずに積極的な治療をおこなわれることをおすすめします。