この記事の監修ドクター|本田 雅則先生(本田医院)
骨がもろくなってしまう骨粗しょう症。予防と治療に欠かせないのは食事療法です。
骨粗しょう症に食事療法が大切な理由とは
体を作っているのは食べ物で、骨も例外ではありません。タンパク質が骨になり、カルシウムが骨を強くし、ビタミンがカルシウムの働きを助けています。骨粗しょう症の治療はまず食事療法から始めますし、予防においても食事は大きな役割を果たしています。
人の体は全身の細胞が古いものから新しいものへと入れ替わる新陳代謝によって、健康を保っていますが、骨も同様です。骨は、古い骨を壊して吸収し(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)を行っており、これを骨代謝と言います。
この骨代謝のバランスが崩れ、骨吸収に骨形成が追い付かなくなると、骨の内部がスカスカになってしまいます。これが骨粗しょう症です。スカスカになった骨はもろくなり、転倒による骨折の危険にとどまらず、壁に手をつく、荷物を持つなどの軽い衝撃でも骨折してしまうようになります。
骨粗しょう症の治療には食事療法と並行して運動療法を行い、進行すると薬物療法も行います。骨粗しょう症が進行してしまうと、生活習慣の改善だけでは改善は難しくなりますが、初期の治療や予防には、食事や運動の生活習慣の改善は効果的です。
骨を強くする栄養素 ①タンパク質
- 多く含まれる食品
- タンパク質は人の体の、主に血液や筋肉、骨を作っており、体重の1/5を占めています。多く含まれる食品は、肉類、魚介類、卵類、大豆と大豆製品、牛乳と乳製品などです。食事では主にメインのおかずとして登場します。タンパク質をしっかり摂るには、毎回の食事を、おかずのあるしっかりしたものにすることと、おやつなどで乳製品を意識して摂ることが大切です。
- 効率的に摂取するために
(100g当たりの量が多い食品、合わせて食べたい食品など) - 例えば肉を100g食べたからと言って、タンパク質を100g摂取できたことにはなりません。それぞれの食品に含まれるタンパク質には差があり、多いものと少ないものがあります。どの食品に多く含まれるのかを知って、メニューを考えるときの目安にできると良いですね。
例えば、牛もも肉100gにはタンパク質は20.7g、豚もも肉には22.1g、鶏むね肉(皮あり)には19.5g、鶏むね肉(皮なし)には24.4g、納豆1パックには12.4g、豆乳には7.5g、卵1個には8.6gが含まれています。
骨を強くする栄養素 ②カルシウム
- 多く含まれる食品
- カルシウムは骨を硬く強くしてくれる栄養素です。多く含む食品は骨ごと食べられる魚類、大豆などの豆類、乳製品などに多く含まれています。日本人には不足しがちな栄養素とされるカルシウムです。意識して取り入れるようにしましょう。
- 効率的に摂取するために
- カルシウムを摂取する際に注意が必要なのは、摂取したカルシウムがそのまま体に吸収されるわけではないという点です。カルシウムというと牛乳や乳製品を摂りなさいと言われるのは、これらの食品のカルシウムの吸収率が良いからです。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を良くする働きがありますので、一緒に摂取できると効率的です。
骨を強くする栄養素 ③ビタミンD
- 多く含まれる食品
- ビタミンDは、カルシウムの体内での吸収を良くする働きと、血液中のカルシウムの濃度を調整する働きがあり、骨を強く保ってくれる栄養素です。魚介類、卵類、きのこ類に多く含まれています。
- 効率的に摂取するために
- ビタミンDは日光に当たることで、体内で合成することもできる栄養素です。日光をしっかり浴びる、天日干しの乾物を意識して摂るなどを心がけると効率的に摂取できます。
骨を強くする栄養素 ④ビタミンK
- 多く含まれる食品
- 骨を構成するタンパク質を活性化し、骨形成を進める働きをするビタミンです。ビタミンKを多く含むのは、日本茶や抹茶などの緑茶類、海苔やわかめなどの海藻類、納豆などです。
- 効率的に摂取するために
- 毎日の飲料を緑茶に変えてみる、サラダに海藻を添えてみる、納豆を食べる回数を増やすなどで、効率的に摂り入れることができます。
こんな食品は控えめに
加工食品に含まれるリンは骨を弱くします
ハムやベーコン、ウインナーやスナック菓子などに含まれるリンは、カルシウムととても結びつきやすく、結びついて体外に排出されてしまいます。加工食品を控えめにすること、食べる際はカルシウムを一緒に摂取することが大切です。
カフェインとアルコールはほどほどに
コーヒーなどに含まれるカフェインと、酒類に含まれるアルコールは、摂取しすぎるとカルシウムの排出量を増やしてしまう働きがあります。過度の摂取は控え、ほどほどに楽しむようにしましょう。
タバコは止めましょう
タバコはカルシウムの吸収を抑制する働きがあります。また、骨形成を助ける女性ホルモンの分泌も妨げますので、骨が弱くなります。タバコの害はさまざまにありますので、できる限り禁煙しましょう。
毎日毎度の食事を大切に!
骨粗しょう症の予防と治療に大きな役割を持つ食事療法について見てきました。必要な栄養素とその役割、それを多く含む食品、効率的な摂り入れ方を知って役立てて、毎日毎度の食事でコツコツと栄養をとり込んでいくことが大切です。
骨粗しょう症が気になる方は、整形外科専門医を受診し、骨密度測定検査を受けましょう。