この記事の監修ドクター|本田 雅則先生(本田医院)
閉経期の女性に増える骨粗しょう症。どうしてこの時期の女性なのか?理由と対策を見ていきましょう。
骨粗しょう症を知っていますか?
加齢や栄養バランスなど、さまざまな理由で骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気が骨粗しょう症です。日本では、全人口の1割ほど、約1100万人の患者さんがいると見積もられており、骨粗しょう症になりやすいとされる予備軍の人を含めると2000万人を超えると考えられています。
骨粗しょう症は閉経後の女性に多い病気です
骨粗しょう症の特徴として、閉経後の女性に多いことが挙げられます。これは、女性ホルモンが骨の強さに関わっていることや、閉経によって女性ホルモンの量が激変することから起こることです。詳しく見ていきましょう。
骨は吸収と形成を繰り返しています
人の体は、全身の細胞が古いものから新しいものへ移り変わる新陳代謝によって保たれています。骨も古い骨を壊して吸収(骨吸収)し、新しい骨を作る(骨形成)「骨代謝」を行っています。この骨代謝によって、人の全身の骨の2~3割ほどが1年の間に入れ替わっているのです。
この骨代謝のバランスが、さまざまな原因によって崩れ、骨吸収に骨形成が追い付かなくなると、骨の中がスカスカになってしまいます。これが骨粗しょう症です。
閉経によって女性ホルモンが激減すると…
女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、骨代謝の際に骨吸収を抑制して、骨からカルシウムが排出されるのを抑える働きがあります。このため、閉経によってエストロゲンが減少すると、骨形成が追い付かなくなり、骨がもろくなってしまいます。
閉経によるエストロゲンの減少は急激です。このため、男性は20~30歳頃をピークに徐々に骨が弱くなっていくのに対して、女性は閉経を境に急激に骨がもろくなります。骨粗しょう症は早めの治療が有効です。閉経前後から、定期的に骨密度検査を受けるようにしましょう。
他にも女性がかかりやすい理由があります
骨粗しょう症は閉経期の女性がかかりやすい病気ですが、他にも女性がかかりやすい理由があります。過度の飲酒によってアルコールがカルシウムの吸収を阻害する、排出量を増やしてしまうなどがありますが、女性に多いのは無理なダイエットによるアンバランスな食事が骨粗しょう症の原因として挙げられます。偏食によって、骨に必要な栄養素が不足して、骨が弱くなってしまうのです。
骨粗しょう症は高齢者の骨折の大きな原因です
骨粗しょう症は骨がもろくなるため、骨折の原因となります。転倒すると骨折してしまう他にも、進行すると、知らないうちに背骨が骨折していた、寝ている間に体の重みで骨折してしまった、などが起こります。
骨折は命に関わるものではありませんが、特に高齢者にとっては、寝たきりや要介護になるきっかけとして、生活に大きく影響しています。寝たきりになる原因の第3位が「転倒による骨折」、要介護になる原因の1割が骨折と転倒です。骨折を予防するためには、骨粗しょう症の予防や治療が大切なのです。
骨粗しょう症になりにくくするためには食事と運動!
高齢となったときの生活の質を保つためにも、骨粗しょう症にならない、あるいは進行を緩やかにすることはとても大切です。骨粗しょう症になりにくくするためには、食事と運動が効果的です。
- ①食事で摂りたい栄養素
- 骨を作るたんぱく質、骨を強くするカルシウム、カルシウムの働きを助けるビタミンDやKを意識して食事に取り入れましょう。年を重ねるにつれ、タンパク質やカルシウムの摂取が減る傾向にありますので、積極的に量を増やすことが大切です。
また、避けたい成分として、リンやカフェイン、アルコールがあります。リンはハムやベーコン、スナック菓子などに含まれており、カルシウムと結びついて排出されます。カフェインやアルコールも過度に摂取すると、カルシウムの排出を進めることになるので注意が必要です。 - ②運動は骨を強くします
- 運動による負荷は骨を強くする他、運動によって筋肉が鍛えられ、全身のバランス感覚が改善され、転倒しにくくなるというメリットもあります。激しい運動である必要はありませんが、エアロビクスなど、ある程度の動きのある運動がおすすめです。好きなスポーツを見つけて、週に数回を長く続けられるといいでしょう。
食事と運動で健康に年を重ねましょう
女性の体を健康に保つ女性ホルモンは、骨を強く保つ役割も持っています。その女性ホルモンが急激に減少するのが閉経期。この時期を境に、何の対策もしないと女性の骨はスカスカになってしまいます。大切なのは食事と運動です。必要な栄養素をしっかりとって、週に数回の運動を心がけて、健康な年を重ねていきましょう。