歯周病の専門医インタビュー (町田メアリー歯科)

歯周病

世界で最もかかる人の多い病気でありながらあまり知られていない歯周病の危険性

加部 晶也先生

2017/06/06

MEDICALIST
INTERVIEW
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町田メアリー歯科
加部 晶也 院長
Akinari Kabe

  • 日本歯周病学会専門医
  • 日本顎関節学会会員
  • 日本顎咬合学会会員
  • 日本臨床歯科補綴学会会員
  • スタディーグループ赤坂会所属
経歴
  • 新潟大学歯学部卒業
  • 新潟大学医歯学総合病院臨床研修センター所属
  • 医療法人社団内剛会 内田歯科医院勤務〜副院長

人々の健康な口腔内の維持に貢献する歯周病専門医による歯科医院

加部晶也 院長

町田メアリー歯科は2016年9月に開院したばかりのまだ新しい歯科医院です。当医院のコンセプトは『Grin with delight』(喜びや幸せを感じてにっこり笑う)です。お口の健康を維持することで皆さまに毎日の生活に幸せや喜びを感じ、にっこり笑顔になっていただけるような人生を送るお手伝いをしていきたい。そんな思いからこのコンセプトを掲げています。当院の特徴は「包括的治療」を得意としているところです。虫歯や、歯肉炎などの口腔内に起こったトラブルに対症療法的に治療をおこなうだけでなく、患者さんのお口の中で何が起こっているのか、過去どうだったのか、将来どうなっていくのかをきちんと診断し、それを改善していくために必要な予防と治療を積極的におこなっていきます。また、口腔内の健康のために大切なのは、歯周組織(歯を支えている骨と歯茎)の維持だと考え、地域にまだ少ない専門医として歯周病の診断・治療にも力を入れています。

世界中で最も罹患者が多い病気「歯周病」に対する誤解

歯ブラシや歯磨き粉のCMでもよく取り上げられる歯周病。皆さんも、この病名はご存知の方が多いのではないでしょうか。歯周病の予防には、口腔内を清潔に保つことが重要で、毎日の正しい歯磨きが効果的です。しかし、歯がきれいなら問題ないというわけではないのが歯周病の難しいところ。多くの方が「自分は毎日歯を磨いていて、虫歯もないから歯周病は大丈夫」と誤解されていることが問題なのです。歯周病は最終的に歯に影響が出てきますが、歯そのものからはじまる病気ではありません。歯茎や歯を支える骨から症状があらわれる病気なのです。歯周病がはじまり、病状が進行していくのは歯自体ではなく、歯周ポケットの中や、歯を支える骨で、皆さんが歯磨きに後に歯の状態を入念にチェックしても、わかるものではありません。歯茎の下がり具合もある程度目安にはできますが、歯周病にかかっているか、どれくらい進行しているかの診断は、歯科医師が検査をおこなってはじめてわかるものなのです。

細菌だけが原因ではない歯がきれいでも起こる歯周病

診察室

歯周病を防ぐために、毎日の歯磨きと一定の間隔で歯科でおこなう歯垢、歯石の除去が有効です。この二つをおこなっていれば、歯周病を進行させてしまうリスクを随分抑えられます。これは口腔内を清潔に保ち歯周病の原因菌を減らすことを目的としています。しかしそれだけで歯周病を完全に防ぐことができるかというと、残念ながらそうではありません。歯周病は原因菌が歯周ポケットに侵入し、歯茎や歯を支える骨を侵食していく病気ですが、さらに歯に強い圧力がかかることによって症状がより大きく進行します。例えば当院の患者さんで、50代の整体師の方がいらっしゃいます。この方は、歯磨きを子どもの時からていねいにやっておられ、虫歯は1本もなく、歯はとてもきれいで、一見しただけでは口腔内のトラブルは歯科医師でもすぐに見つけることができないほど。しかし、長年の整体師というお仕事のため、歯にかかる圧力が強く、それが原因で奥歯の周囲の歯を支える骨が完全に溶けて無くなってしまっていました。歯そのものはとてもきれいな状態でありながら、その歯を支える骨が無くなってしまっている。支えを失った歯ではもちろん噛むことはできません。こうなってしまうと、歯周再生材等を使って外科的な歯周再生手術をするほかありません。また、治癒の見込みがなく、周りの歯に悪影響を及ぼすと判断されたら、抜歯をせざるを得ません。整体師の他にも歯に圧力がかかる機会の多い職業はあります。また、職業ではなくても歯を食いしばるくせのある人や、眠っている間に歯ぎしりをする人などは、思わぬところで歯周病が進行している場合もあるのです。

レントゲン、CTを使った歯周病専門医による検査を

CT

また、歯周病の原因菌は、虫歯と同じように人から人に感染します。同じ食器を使ったり、キスをしたりすることにより感染しますので、家族に歯周病の人がいる場合は要注意です。歯周病の進行度合いは歯周ポケットの深さで測ります。歯周ポケットの深さが4~5mm程度で、歯肉が赤かったり歯茎が腫れたり出血が見られると軽度、4~6mmで歯がぐらぐらしたり、口臭があったりすると中等度、6mm以上で歯肉が大きく下がって膿が出たりする場合が重度とされています。また、中等度、重度以上の歯周病の詳しい状況を見るにはレントゲンやCTを使って検査をおこないます。普段通われている歯科医院のレントゲン検査で歯周病が見つかることもあります。しかし通常の歯の検査では歯科医師の注目する意識も違ってきます。歯周病の検査、診断はやはり歯周病専門医に依頼するのが確実です。

院内風景

奥歯で4.5mm、前歯で5~6mm以上の深さのポケットは歯石は外科手術で取り除く必要性が増してきます。ただ、その前に大事なことがあります。

歯周病の治療でまずおこなうのはブラッシング指導です。歯周病は口腔内の歯周病原菌(プラーク)によって進行しますので、常に口腔内の細菌の数を少ない状態を保つことが大切です。また歯茎の上の部分の細菌を減らすことは歯茎の内側の毒性の強い細菌を減らすことも明らかにされています。ただ、きれいに磨くのは皆さんが予想しているより難しいです。歯肉の性状や歯並び、磨き癖などを診断し、患者さんひとりひとりにあった歯ブラシの選択から、歯ブラシの当て方動かし方、フロスや歯間ブラシ等の補助器具の使い方を指導していきます。ここできちんと磨けるようなるかでその後の治療の成功率が大きく変わります。正しいブラッシングでプラークが取り除けるようになってから、いよいよ患者さん自身では取り除けない歯石の除去を行っていきます。歯石は歯周ポケットの中にできます。この歯石が歯周病の原因菌の巣で、歯周ポケットが深くなっていくと歯石も歯の根の部分へと伸びて行き、歯茎や歯を支える骨を溶かしていきます。通常のクリーニングで歯石を除去できるのは、歯周ポケットの深さが奥歯で4.5mm、前歯で5~6mm程度まで。それ以上の深さになると、歯茎をメスで切開して歯根を露出し、歯石を取り除くしか方法はないのです。さらに重度の歯周病で、歯周の骨が溶けてしまっている場合は、手術の前に入念な検査が必要です。レントゲンでも歯周の骨がなくなってしまっていることを見ることはできますが、CTでは外科手術をおこなううえでさらに詳細な状況を知ることができます。当院では、CTによる三次元の立体画像なども確認し、病状を正確に診断して手術をおこなうようにしています。

かなり進行してからでないと自覚症状がでない怖い歯周病

歯周病で歯茎を切り開いての外科手術をしなければならない状態などというと、それまでにどれほど痛みが出たことだろう。相当歯の手入れを怠っていたはず。そんなふうに考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし実はそうではありません。レントゲンやCTで歯を支える骨がごっそり無くなってしまっているという病状がわかっても、患者さん本人は、最近歯が少しぐらぐらしている気がするという程度という人も多いのです。歯科で指摘されるまで、全く気がつかないという方も少なくありません。かなり進行してからでないと自覚症状が出ない。これが歯周病が放置されやすい理由でもあるのです。歯周病を痛みが無いからといってそのまま放置していると、歯を支える骨を失って突然歯が抜けてしまうことになります。そして歯周病は、歯の一部ではなく全体に広がっている場合が多く、一本が抜けるとまた次の一本という具合に次々と歯が抜けてしまうこともあります。歯周病は歯肉が腫れたり、出血したりすることからはじまり、重度化して健康に食事をするために必要な歯を失っていくことにつながります。さらに歯周病の原因菌は、歯周にとどまらず、体の色々な部位に広がって思わぬ病気を起こすこともあるのです。先にも言ったとおり、世界中でかかっている人が一番多いといわれている病気が歯周病です。珍しい病気ではないことから放置されがちですが、人の健康的な生活に大きな影響をもたらす恐ろしい病気なのです。

歯周病にも当院で進める「包括的治療」を実施

院長先生

今回取り上げた歯周病だけでなく、虫歯や矯正の治療など、口腔内を健康な状態で保つには「包括的治療」が有効です。そのために当院で力をいれているのが、患者さんとの病状の共有です。患者さんひとりの診療時間を長めに取り、私から患者さんの病状についてていねいに説明するのはもちろんのこと、口腔内の状況を、写真やレントゲン、CTなど活用して患者さんにしっかりと見ていただくようにしています。外科手術が必要な場合などはその時間には治療はおこなわず、これらの画像を見ていただきながらコンサルテーションだけに1時間かけることもあります。特になかなか自覚症状があらわれない歯周病は、患者さんにも状況を理解いただかないと治療が進められない病気でもあります。これら最新の検査器機による画像のお陰で、患者さんの歯周病の治療に対する理解と意識を高めることができるのです。今の歯の痛みを治療によって抑えるだけではなく、患者さんが五年後、十年後、そして生涯健康な口腔で笑顔で生活できるように。当院は『Grin with delight』を合い言葉に、患者さんと一緒に医療を展開していきたいと考えています。