こんな病気も!?歯周病が引き起こす重大な疾患とは

こんな病気も!?歯周病が引き起こす重大な疾患とは

この記事の監修ドクター|加部 晶也先生(町田メアリー歯科)

歯周病は静かに進行して、全身疾患に繋がる病気です。正しく知って早期発見、早期治療を心掛けましょう。

「口の中の病気」だけじゃない!歯周病

歯周病

歯周病は、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に入り込んだプラーク(細菌のかたまり)が溜まることで、歯周病原菌に感染し歯を支える骨を溶かしていく病気です。成人の8割がかかっていると言われる、とてもありふれた病気です。また、歯周病はさまざまな全身疾患と関わっていることも分かっています。歯周病が原因となって起こる病気、歯周病が深く関わる病気には、こんな病気も?と思うものが多く含まれています。

歯周病が原因で起こる病気

メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームは、「内蔵脂肪型症候群」とも呼ばれ、生活習慣病が2つ以上関わっていることを表す言葉です。内蔵脂肪は、皮膚の下に溜まってスタイルを左右する皮下脂肪と違って、腸などの内蔵に蓄積する脂肪です。
内蔵脂肪が蓄積すると、全身の血管に悪影響があり、動脈硬化や高脂血症、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。このメタボリックシンドロームの病気には、歯周病が深く関わっていることが分かっています。
関節炎、腎炎
関節炎や腎炎は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌によって発症しますが、これらの菌は歯周病菌の原因菌で、口腔内によく見られる菌です。歯周病菌が血液中に入り込む、あるいは歯周病による炎症が影響して、関節炎や腎炎が引き起こされることがあります。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

骨粗鬆症

骨粗鬆症は老化やホルモンバランスによって骨のカルシウムが減少し、骨を弱くしてしまう病気ですが、歯周病もまた、歯周病菌によって骨が溶かされる骨の病気です。歯周病菌が骨に達すると、全身の免疫も過剰に反応して、骨などを攻撃する酵素を分泌するようになり、骨粗鬆症の進行を進めてしまうのです。
また、歯周病菌が歯を支える骨まで感染すると、既に骨粗鬆症で弱っていた骨は破壊されやすくなっており、通常よりも早く溶けてしまいます。骨粗鬆症の患者さんには歯周病にかかっている人が多いことも、またその逆も分かっています。どちらの治療も同時進行で行うことが大切です。
低体重児、早産
歯周病が重度に進行した母親が、低体重児を出産する確率は、健康な母親に比べて7倍と、とても高い数値で報告があります。これは飲酒や喫煙よりも大幅に高い数値なのです。
歯周病菌が炎症を起こすときに分泌される物質が、出産の指令を出しているとされ、胎児の発育が充分でないまま、早産や低体重児として出産が行われてしまうのです。また、歯周病菌そのものが血液に乗って羊水に感染し、胎児の発育に悪影響を与えていることもわかっています。
妊娠中はつわりや体調変化で、口腔内の清潔を保つのが難しくなる時期でもあります。そのため、歯周病にかかりやすい、悪化しやすい時期なのです。妊娠中だけでなく妊娠前から、口腔内の治療を進めておくことが大切です。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
食べたものは喉で分別されて食道に入り、胃に運ばれ(嚥下され)ますが、加齢によって喉の筋肉が衰え、間違って気道へ入ってしまう誤嚥(ごえん)が増えてきます。そのため、食べ物と共に歯周病菌が肺へ運ばれて起こる、誤嚥性肺炎が増加します。肺炎は、高齢者の死亡原因の1位を占める危険な病気です。
糖尿病

糖尿病

糖尿病は、血液中の糖分の量をコントロールするインスリンと言うホルモンが少なくなったり、働きが悪くなったりするために、血糖が血管に負担をかけてしまう病気です。歯周病菌は、このインスリンの働きを悪くする物質を分泌させてしまうことが分かっています。
歯周病菌によって分泌されたインスリン攻撃物質によって、血糖値が上がり、血液中の糖分が血管を傷めますが、歯茎の毛細血管も同様に傷つき、血流が悪化します。血流の悪い歯茎では炎症が悪化し、歯周病菌が増加、インスリン攻撃物質も増え、糖尿病が悪化するという悪循環が起こるのです。
脳梗塞
歯周病の患者さんの脳梗塞を起こす確率は、健康な人の3倍です。歯周病菌は口腔内だけでなく、血管の中にもプラーク(血栓)を作ります。そのプラークがはがれて流れ、血液に乗って脳へ運ばれ、脳の血管を詰まらせて脳梗塞が起こります。
心臓病
前述の脳梗塞が心臓で起こると心筋梗塞です。歯周病の患者さんが心臓病を引き超す確率は、歯周病にかかっていない人に比べて2~3倍になります。

歯周病は「静かな病気」早めに歯周病専門医へ

診療風景

いかがでしたか?歯周病が口の中の病気だけではないのです。全身の病気、特に命に関わる病気の原因になっていることも多いのです。歯周病は自覚症状が少なく、静かに進行しますので、定期的な歯科検診はとても大切な、歯周病発見のチャンスです。
歯科医の中でも歯周病専門医は、歯周病について深く理解している専門医です。成人の8割が感染していると言われる歯周病。自分は大丈夫と思わず、気になる症状は歯周病専門医へ相談しましょう。