睡眠時無呼吸症候群の専門医インタビュー (さがみ野内科・呼吸器クリニック)

睡眠時無呼吸症候群

成人男性に多い「いびき」それは糖尿病、高血圧の原因となるOSAS(オーサス)かも知れません。

野島 大輔先生

2018/01/23

MEDICALIST
INTERVIEW
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さがみ野内科・呼吸器クリニック
野島 大輔 院長
Daisuke Nojima

  • 日本内科学会
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会
  • 日本呼吸器学会専門医
  • アレルギー学会
  • 難病指定医
  • 身体障害者福祉法指定医(呼吸器)
経歴
  • 2007年3月 獨協医科大学医学部医学科卒業
  • 2007年4月 海老名総合病院 初期研修医
  • 2009年4月 横浜市立みなと赤十字病院 呼吸器内科後期研修医
  • 2012年4月 海老名総合病院 呼吸器科
  • 2016年4月 座間総合病院 総合診療科

気管支喘息などの呼吸器疾患をメインに家族で受診できるホームクリニック

私がこの地域でクリニックを開業しようと思ったきっかけは、地元であるこの地で呼吸器を専門とするクリニックが他に無かったのが一番の理由です。風邪やインフルエンザなど呼吸器に関わる病気は多いですが、多くの方は内科で受診されることが多いはず。気管支喘息なども、安定していれば内科の医師に受診しても良いのですが、症状が安定しないなどの場合は呼吸器専門医を受診するのがベスト。専門医ならではの呼吸器に関する細やかな治療が可能です。

また当クリニックは気管支喘息などの呼吸器の治療に関して、4歳以上の小児の対応をおこなっています。気管支喘息はご両親のどちらかがかかっているとお子さんもという例が多いです。親御さんが呼吸器内科で受診するのにお子さんは小児科となると、通院も待ち時間も2倍になってしまい大変です。当クリニックではお子さんと親御さんに一緒に受診していただける体制を整えています。私たちは、呼吸器をメインにいつでも家族で安心して相談いただけるホームクリニックを目指しているのです。

自覚症状が少なく診断、治療が遅れがちな閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

野島大輔院長

眠っている間に10秒〜数分と何度も呼吸が止まってしまう症状のことを「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS・オーサス)」といいます。マスコミでも頻繁にとりあげられ、この病気の名前を既に耳にしている人は多いのではないでしょうか。この病気は成人男性に多く、本人の自覚症状が少ないのが特徴です。当クリニックでも開業以来多くの方がこのOSASの診断、治療のために来院されていますが、ほとんどは家族の方からの「いびき」や「睡眠中に呼吸が止まっている」などの指摘によって来院されています。眠っている間にいびきがあること、呼吸が止まっていることは本人にはほとんど自覚がありません。しかしこれらの症状は、本人が気づかなくても大切な睡眠の質を著しく低下させていて、さらに「朝起きると頭痛がする」「日中に眠くなる」などの症状を巻き起こしているのです。しっかり睡眠時間をとったはずなのに1日中眠気が取れない、起きた時に軽い頭痛がするなどの症状はOSASの疑いがあります。ぜひ専門医による正しい診断と治療を受けていただくことをお勧めします。

いびきは「舌根沈下」といって舌がのどの奥に下がり気道を狭くしたり、気道に沈着した脂肪が同じく気道を狭くすることによって起こります。これらの原因によって狭くなった気道を無理矢理空気が通るためいびきが起こるのです。無呼吸はさらにこの状態が進んで気道を完全にふさいだ時に起こります。いびきをかくだけであれば無呼吸は起こっていない状態です。しかし、いびきをかくということは無呼吸になりやすい状態でもあり、無呼吸状態に前後していびきをかくことも多く、いびきはOSASの重要なサインでもあります。またいびきは本人の自覚こそほとんどありませんが、睡眠の質を下げていることに間違いはなく、本人よりも奥様などご家族の睡眠に大きな影響を与えている場合も多いのです。

睡眠時の無呼吸とはどんなことが起こっているのでしょうか?

野島大輔院長

睡眠時に気道がふさがり、1,2分〜数分ほども呼吸が止まってしまうと体は低酸素状態となってしまいます。眠っている間、人の体は副交感神経が働いているのですが、低酸素状態になると、活動時に働く交感神経が働きだし、睡眠時に休むべき脳などの器官が休めなくなってしまいます。睡眠時間を十分取ったはずなのに眠った気がしないのはこのためです。

またOSASは日中の眠気や起床時の頭痛だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の原因となり、脳梗塞や心筋梗塞などの危険な病気を招く恐れがあります。無呼吸症候群の人はインシュリンの効果が弱くなる「耐糖能異常」が起こりやすく、肥満、糖尿病になりやすいのです。さらにOSASは交感神経を優位にさせるので高血圧になりやすいです。糖尿病、高血圧も自覚症状の少ない病気ですが、これらの生活習慣病は進行すれば脳梗塞、心筋梗塞など命に関わる危険な病気に悪化する可能性があります。また、OSASを原因に、不整脈による突然死という最悪の事態も起こりうるのです。

在宅のポリソムノグラフィでOSASの早期診断を

それではOSASの診断はどのようにおこなわれるかを当クリニックの例でご説明しましょう。OSASの疑いやいびきの悩みで来院された方には、まず簡易検査を受けていただきます。これはご自宅で就寝中に指先センサと呼吸センサを取り付けて血液中の酸素と呼吸の状態を調べるものです。この検査により、睡眠中に10秒以上の無呼吸の回数と血中低酸素状態が起こっているかがわかります。この情報をAHI(無呼吸低呼吸指数)といい、AHIの値が0〜5であれば正常、5〜15までが軽症、15〜30までが中等症、30以上が重症となります。軽症以上の結果が出た方にはポリソムノグラフィによる精密検査に進みます。これは簡易検査と同様に呼吸状態と血中の酸素状況を測るのと同時に脳波による睡眠の状態調べてより正確な無呼吸の状態を知るための検査です。

これまで、このポリソムノグラフィ検査は一泊の入院が必要で、入院設備のある総合病院でしかおこなえませんでした。そこで当クリニックでは、検査業者と提携し、在宅での検査を可能にしました。これまで簡易検査でOSASの疑いが強い人であっても精密検査の敷居が高く、そこで足踏みされる方がたくさんいました。しかし、当クリニックの在宅ポリソムノグラフィ検査はこのようにとても手軽なので、簡易検査で精密検査が必要となったほとんどの方が受けられています。

重症度に応じて、マウスピース、生活習慣の改善、CPAP治療を実施

CPAP治療の説明

OSASの治療はAHI5〜15までの軽症な方の場合、マウスピースを使った治療や生活習慣の改善をおこないます。このマウスピースは、睡眠中の顎のかみ合わせを整えて、息の通りをスムーズにするのですが、患者さんによって効果の出方がまちまちで、効果が出ない患者さんもいらっしゃいます。生活習慣の改善は、肥満が原因していることの多いOSASに対して減量をおこなったり、お酒を控える、仰向けではなく横向きで眠るなど、生活のよってOSASの症状を抑えていく方法です。

OSASの効果的な治療法にはCPAP(持続性陽圧呼吸)療法があります。睡眠中にCPAP装置を用いて装着したマスクによって気道に空気を送り込み、常に圧力をかけて気道が塞がらないようにするという治療法です。治療開始から1〜2ヵ月程度は違和感を覚える患者さんもいますが、機器の細かな調整が可能で改善されますので、装置の治療に慣れて継続治療される患者さんが多くいらっしゃいます。AHI20以上の方が保険適用となり、3割負担の患者さんで月5000円程度の負担となります。この治療によっていびきと無呼吸の症状が緩和され、高い効果を示します。

このようにCPAPはOSASに効果的な治療法ですが、根本治療ではなく、治療を辞めてしまうとまた元の通り無呼吸やいびきが元に戻ってしまいます。CPAPによってOSASの症状を抑え、質の高い睡眠をとり、生活習慣を改善して、OSASを起こさない体をつくっていくことが大切です。

院内風景

肥満とOSASの関連性は? 私自身のいびき克服方法

OSASは痩せ型でも顎が細く気道が狭い小顔の方にも起こります。また肥満でも、顎がしっかりした気道の広い方はOSASにならない方もいらっしゃいます。一概に肥満=OSASとはいえませんが、OSASは代謝を悪くし、肥満や生活習慣病を引き起こす原因でもあります。すべての生活習慣病につながる肥満は食生活や運動で改善していくことが望まれます。

今から4年ほど前、私も妻の指摘で自分がいびきをかいていることを知りました。いびきが出ると言うことはOSASの前兆かも知れません。私も自覚症状はほとんどなかったのですが、思えば日中突然眠気に襲われることがよくありました。当時の体重は今から12、3キログラムも重く、私は思い立ってダイエットをすることに。食事制限と運動によって2ヵ月でほぼ今の体重まで落とすことができました。そうするといびきも見事になくなって、しっかりとした睡眠をとれるようになりました。日中もいつも頭がすっきりとしていて、眠気に襲われるということもなくなりました。自身で睡眠の大切さを実感することができました。

OSASは自覚症状なくても、不十分な睡眠によって日常生活の質が下がっていたり、さらに重篤な生活習慣病に発展したりと決して放置してよい病気ではありません。いびきやOSASにお悩みの方には、できるだけ早く専門医に相談し、その方に一番合った治療をおこなうことことをお勧めします。