骨粗しょう症の専門医インタビュー (とねり整形外科)

骨粗しょう症

「折れない骨を作る」骨粗しょう症の専門医

山崎 秀興先生

2018/06/20

MEDICALIST
INTERVIEW
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とねり整形外科
山崎 秀興 院長
Hideoki Yamazaki

  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
経歴
  • 職歴
  • 日本大学医学部付属板橋病院
  • 駿河台日大病院
  • 日大光が丘病院
  • 埼玉県立小児医療センター
  • 横須賀市立市民病院
  • 春日部市立病院
  • 豊岡整形外科病院
  • 博慈会記念総合病院

骨粗しょう症の診断には最も信ぴょう性の高いデキサ法

診察台

腰や膝の痛みで受診される方には、最初から骨密度の測定を希望されるような、骨粗しょう症に対する意識が高い方がいる一方、骨粗しょう症を全く意識していない方もいます。そういう場合は、まずレントゲン検査の結果と、圧迫骨折の既往の有無から、骨粗しょう症の検査をした方が良いですよという話から始めるようにしています。

骨粗しょう症の診断には、骨密度の測定と血液検査を行います。骨密度の検査には、簡便な手首やかかとの骨、指などで測定する方法もありますが、当院の骨密度の検査は、腰椎と大腿骨の2ヵ所に、エネルギー量の異なる2種類の放射線を当て、より精密に測定するデキサ法を採用しています。高齢者が寝たきりになる原因として、腰椎の圧迫骨折と大腿骨の頸部骨折があげられます。そのため、骨折の可能性が高い部位の骨密度測定が、骨折リスクの評価に最も信ぴょう性が高く、意味があるものだからです。

次に、骨密度が低いことが分かった時点で、血液検査を行います。骨は、古い骨をこわす破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞がバランスよく働いて常に生まれ変わり、健康な骨が作られています。骨粗しょう症は、これらのバランスが崩れることが原因のひとつとしてあげられます。そこで、採血をして破骨細胞の働きを示すTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ)と、骨芽細胞の働きを示すP1NP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド)という、骨代謝マーカーを測定すると、骨粗しょう症のタイプを見極めることができます。骨粗しょう症のタイプと、年齢や骨折の既往を考慮した上で、治療法を決めていきます。

「折れない骨を作る」ための治療開始の考え方

診療室

治療を開始する大きな目的は、骨粗しょう症による骨折を予防することです。そのため、骨粗しょう症ガイドラインでは、基本的には骨密度が低く骨折リスクが高い場合に、治療を開始することとなっています。骨密度の評価という点で言うと、腰椎のデキサ法による骨密度は信頼度が高いと言われています。一方、腰椎には骨硬化像という老化現象が出現し、その部分に放射線が当たると、骨密度が実際よりも高く出る傾向があることがわかっています。そのため、私は、大腿骨の頸部の骨密度を重要視し、血液検査の結果と合わせて、治療を開始するかどうか判断しています。骨密度が高いと評価された方でも、血液検査でTRACP-5bが高く破骨細胞の働きが優位な方や、P1NPが低く骨芽細胞が働いていない人に対しては、治療を開始します。また、数値だけに頼るのではなく、年齢やレントゲンの画像、喫煙や飲酒などの生活習慣、歩き方なども含めて、転倒や骨折のリスクを総合的に判断します。少々転んだぐらいでは折れないような骨を作ってあげる。そういう気概を持って、患者さんの治療に向き合っています。

骨粗しょう症のタイプで選ぶ治療薬

診療機材

骨粗しょう症の治療薬は、以前は破骨細胞の働きを抑えるビスホスホネートという種類の薬しかありませんでした。しかし、近年開発が進み、ビスホスホネートとは違うメカニズムで破骨細胞の働きを抑える抗ランクル抗体薬や、骨芽細胞を刺激して骨の形成を促す薬が登場し、選択肢が増え、骨粗しょう症のタイプに合わせたオーダーメイドの治療が可能になってきています。  ただ、骨芽細胞を刺激する薬は、一生のうち2年間しか使用できないため、どのように治療を継続していくかが、骨粗しょう症の治療の問題点です。閉経後の女性は、治療の手を緩めると骨密度は低下する一方です。患者さん一人ひとりに合わせた治療を、一生継続するために、さらなる新薬の開発に期待がかかるところです。

骨粗しょう症のリスク

・生活上のリスク

スタッフ集合

加齢、女性であること、閉経、骨折の既往などは、骨粗しょう症の避けられないリスクです。また骨質の良し悪しは遺伝的な要素でリスクになります。一方、カルシウム不足や極端な食事制限によるダイエット、運動不足、日照不足やビタミンD不足などは、ご自身で避けることのできるリスクです。紫外線は皮膚がんの原因と言われ、美白を好む傾向もあり、日光を浴びることを極端に避ける風潮があります。骨が弱くなって寝たきりになるのは本末転倒と言えましょう。また、若い女性のダイエットは、運動しながら痩せることが、将来の骨粗しょう症の予防のために大事です。

・糖尿病と腎臓病

糖尿病は骨粗しょう症のリスクのひとつであり、糖尿病のある人は、ない人と比較して、骨折のリスクが高いことがわかっています。また、血糖コントロールが不良の方は、良好な方と比べて骨折のリスクが高いことがわかっており、血糖コントロールを改善すると良くなると言われています。  また、腎臓病で透析をしている方は、骨がもろく弱くなっており、骨折して手術をする場合も予後が非常に悪く、治療法にも制約があります。糖尿病腎症は透析導入の原因の第1位でもあり、そうならないためにも、血糖コントロールは非常に重要です。

クリニック内観

カルシウムは自然な形で摂りましょう

日本人は欧米人と比べて、食事からのカルシウム摂取量が少ないと言われています。カルシウムは骨を構成する重要な栄養素のため、カルシウムを摂ることは重要です。一方、カルシウムのサプリメントは、心臓血管系に問題をきたす可能性が高いということが言われており、自然な形で食事から摂るように指導をしています。最近はカルシウムを添加、補充した牛乳なども出ていますが、そうでない普通の牛乳を飲むことをおすすめします。