この記事の監修ドクター|山崎 秀興先生(とねり整形外科)
高齢者に多い骨粗しょう症。どんな病気なのでしょうか。
日本人の1割が骨粗しょう症?
骨粗しょう症とは、骨の密度が下がって骨がスカスカになる病気です。骨が弱くもろくなるので骨折の原因になってしまいます。とても患者さんが多い病気で、世界的に見ても人類が最もかかりやすい病気とされています。
日本国内では少なくとも1100万人の患者さんがいるとされ、予備軍も含めると2000万人を越えると見積もられています。全人口の1割、10人に1人が骨粗しょう症であると言われています。患者さんは高齢者に多く、男性は50代から、女性は40代から増え始めます。患者さんは1:3で女性の方が多いのが特徴です。
骨粗しょう症は骨の代謝バランスが崩れて起こります
骨の構造
骨は表面に硬い皮のような「皮質骨(ひしつこつ)」に覆われており、その内側には硬いスポンジのような網目状の「海綿骨(かいめんこつ)」が詰まっています。海綿骨の網目の中には骨髄液が満たされていて、血液を作る役目などを担っています。
骨の代謝
骨は一度作られると一生そのままと考えられがちですがそうではありません。骨代謝という骨の新陳代謝が行われ、古い骨は壊されて(骨破壊)吸収され(骨吸収)、新しい骨が作られて(骨形成)います。このサイクルで、1年間に2~3割ほどの骨が、新しい骨と入れ替わっています。
骨形成が追い付かず骨粗しょう症に
骨粗しょう症は、これらの骨の新陳代謝のバランスが崩れて起こる病気です。骨破壊と骨吸収は進むのに、骨形成が進まなくなり、骨の強度と質(骨量)が低下していきます。
骨粗しょう症の原因は…
骨は成長期に大きくなり、20代をピークに、40代以降は少しずつ減少していきます。加齢とともに骨量が低下していくのは自然なことで、誰もが骨粗しょう症になる可能性があると言えます。
加齢とともに骨量が減少する理由は、カルシウムの吸収率が加齢とともに悪くなること、骨も老化すること、などが挙げられます。これらに、運動不足や栄養バランスの偏り、糖尿病などの生活習慣病、喫煙などが影響して、骨粗しょう症が悪化します。
閉経後の女性は骨粗しょう症リスクが高まります
骨粗しょう症は女性に多い病気だと先に述べましたが、これには女性の閉経による女性ホルモンの減少が大きく関わっています。女性ホルモンは成熟期には毎月の月経に備えて、カルシウムが骨から溶け出すのを抑制する働きを担っています。
しかし、閉経によって女性ホルモンが急激に減少すると、カルシウムを骨に保存しておく働きも急激に弱まります。閉経後の女性は、骨からカルシウムが一気に溶け出てしまうということが起こります。骨形成が追い付かなくなりがちな年齢に、カルシウムが溶け出して骨が弱くなるので、骨粗しょう症にかかりやすくなってしまうのです。
骨粗しょう症が高齢者の生活に与える影響とは
骨粗しょう症は加齢とともにかかりやすくなる病気ですが、高齢者の生活に大きく影響する病気でもあります。骨が弱くなるために、骨折の原因となりますが、骨折は高齢者の寝たきりの原因として第3位です。
骨折はどの年代の誰に起こっても、行動が制限されて生活に支障が出るものですが、高齢者が骨折してしまうと、要介護や寝たきりに直結してしまうということが多く見られます。高齢者が健やかに生活していくためには骨折を予防することが大切で、そのためには骨粗しょう症の予防と治療、進行を抑えることが大切なのです。
整形外科専門医で骨密度測定を受けましょう
閉経後の女性と高齢者に多い骨粗しょう症。高齢者の寝たきりの原因は骨折が第3位、骨粗しょう症は骨折の原因になる病気です。高齢になっても健やかに生き生きと生活するためには骨折は避けなければならない重要なケガです。そのためには骨粗鬆症の予防と治療が大切です。整形外科では骨の強度である骨密度測定も受けられます。気になる人は整形外科専門医を受診しましょう。