この記事の監修ドクター|山崎 秀興先生(とねり整形外科)
骨粗しょう症は運動で治療、予防できる病気です。病気のメカニズムから見ていきましょう。
骨粗しょう症は骨の代謝バランスが崩れて起こります
骨は成長期に一度作られると一生そのまま、と考えられがちですが、実は骨代謝と言って、骨の新陳代謝が常に行われています。古い骨は吸収されて(骨吸収)、新しい骨が作られ(骨形成)、一年に2~3割ほどが新しい骨に入れ替わっています。
骨粗しょう症は、この骨代謝の骨吸収は行われるのに、骨形成が追い付かないというアンバランスな状態を言います。古い骨は吸収されていくのに、新しい骨が作られないので、骨の内部はスカスカになっていきます。とてももろい状態になりますので、骨折が起こりやすくなってしまいます。
骨の強さ(骨密度)は20代をピークにして、40代以降は低下していきます。加齢とともに骨代謝のバランスが崩れていくことが多く、骨粗しょう症は高齢者が骨折する大きな原因となります。
骨粗しょう症の治療法の3つの柱
骨粗しょう症の治療は食事療法、運動療法、薬物療法の三本柱で行われます。
- ①食事
- 骨粗しょう症の食事療法は、骨を作るたんぱく質、骨の強さを保つカルシウム、骨代謝に必要なビタミンDやKなどの栄養素の摂取を合わせて充分に行います。
- ②運動
- 運動を適度に行うと、骨に刺激が与えられ、骨が丈夫になります。加えて筋肉が鍛えられるので体のバランスが良くなり、高齢者の転倒予防に役立ちます。
- ③薬物療法
- 食事療法と運動療法で充分な効果が上がらない場合、薬物療法も行います。骨代謝に関係して、骨吸収を抑制する薬、骨形成を助ける薬の他、骨形成を行う副甲状腺ホルモンというホルモンの注射もあります。
栄養面から、カルシウムの吸収を助けるビタミン剤も処方します。女性の場合、女性ホルモンの減少が骨を弱くしていますので、女性ホルモン拡充のための薬もあります。
骨粗しょう症の予防には運動が大切です
骨粗しょう症の予防のためには、若いころから食事や運動といった生活習慣を整えていくことが大切です。特に運動習慣は骨粗しょう症の予防に大きく役立ちます。
運動が骨に良い理由
骨に刺激と負荷がかかると、それに応えて骨は強くなります。また、骨を作る細胞の働きも活発になり、骨形成が促されることになります。それに従って骨密度も運動によって回復します。半年から2年間、適度な運動を行ってきた場合、年間平均で0.9%ほど回復します。一気に骨粗しょう症が進む年代である、閉経後の女性でも0.8%回復するほど、運動は予防に効果があります。
骨粗しょう症に良い運動とは
骨の強度である骨密度を保つ、あるいは回復させるために効果的な運動は瞬発的な運動よりも、適度な強度で長く続ける運動が適しています。水泳、水中ウォーキング、ウォーキング、ランニングなど、持久力を上げる運動がおすすめです。体重に応じて骨は強くなりますので、軽めのダンベルを持って、負荷を増して行うのもおすすめです。
他にはウエイトトレーニングも骨に刺激を与えることができます。筋肉と骨は腱という筋を通して刺激が伝わります。狙った筋肉を鍛えることができるため、全身をまんべんなくトレーニングすることもできて効果があります。
若い時から運動を習慣化して骨粗しょう症予防を!
骨粗しょう症はゆっくりと進行する病気です。ですから、病気の予防と言っても一朝一夕にはできません。長い年月の食事による栄養バランスや運動習慣などが大きく影響する病気です。でも、これは逆を返せば、バランス良い食事と運動習慣があれば、骨粗しょう症は予防できる、ということにもなります。
栄養面で重要なのは、タンパク質、カルシウム、ビタミンDとK。そして、何よりも運動が大切です。好きなスポーツを見つけて、週に数回行うことを継続していけると、高齢になった時にも骨折せずに健康に過ごしていけるでしょう。骨密度の測定など、気になることがある場合は整形外科専門医を受診しましょう。