小児感染症
インフルエンザからO157まで、ウイルス性、細菌性など多岐にわたる小児感染症のスペシャリスト
2017/10/30
- 経歴
- 平成4年3月 弘前大学医学部 卒業
- 平成4年4月 千葉大学小児科 入局
- 平成4年 千葉大学医学部附属病院小児科 勤務
- 平成5年 君津中央病院小児科 勤務
- 平成6年 千葉労災病院小児科 勤務
- 平成7年 旭中央病院周産期医療センター 勤務
- 平成9年 千葉大学医学部附属病院小児科 勤務
- 平成10年 千葉県立こども病院感染症科 勤務
- 平成11年 千葉大学医学部附属病院小児科 勤務
- 平成12年 君津中央病院小児科 勤務
- 平成16年 千葉市立青葉病院小児科 勤務
- 平成27年 あいざわキッズクリニック 開設
千葉大学小児科感染症グループに所属する医師が地域医療に貢献するクリニックを開設
私はこのクリニックを開業するまで、大学病院やその関連病院で一般小児科、NICU(新生児集中治療室)に勤務し、外来のみならず入院あるいは重症化された患者さんへの診療経験を積んで参りました。特に感染症については日本感染症学会、日本小児感染症学会にも所属し、現在も千葉大学小児科感染症グループに籍をおいて、最新情報の入手・検討に務めています。
当クリニックの特徴は、幅広いお子さんの感染症に対応するばかりではもちろんありません。乳幼児健診や予防接種をおこない、地域のかかりつけ医として、一次診療に取り組み、お子さんの健康についてお気軽に御相談いただけるクリニックづくりをおこなっています。子供は大人と異なり、例えば自覚症状を言えない年齢もありますし、小児には使用してはいけない薬もあります。それらを考慮しつつ、保護者の方々に安心して受診して戴けるクリニックを目指しています。
感染症の種類と使用する薬剤について
感染症には、ウィルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、他がありますが、小児感染症では前2者が主です。また、発症する部位によって、呼吸器感染症、消化器感染症、全身感染症、等に分けることができます。とは言いましてもピンとこない方もいらっしゃると思います。例えばインフルエンザはウィルス性の全身感染症で、最近マスコミでもよく話題となるO157は細菌性の消化器感染症です。治療ですが、①ウィルス性の感染症には抗菌薬(抗生剤)は無効です。症状をやわらげる対症薬を使用します(例外として、インフルエンザ等、ごく一部のウイルスには有効な抗ウイルス剤があります)。一方、②細菌性の感染症には抗生剤を使用します。
よく風邪には抗菌薬が効くと誤解されている場合がありますが、風邪の原因の多くはウィルス性の感染症ですので抗菌薬は効きません。症状をやわらげる対症薬を使用します。風邪をひくたびに「不安だから」と抗菌薬を安易に頻用することは、ウイルス感染に無効であるのみならず、次に述べる「耐性菌」を出現させやすくしてしまいます。しかし風邪をひくのと同時に、鼻やのどなど上気道に細菌(溶連菌など)による感染症を起こす場合もあります。これら細菌によって起こる扁桃炎や副鼻腔炎、中耳炎などには治療に抗菌薬が用いられるのです。
なお、たんのからむ咳の場合(気管支炎など)は、細菌感染症も加わっている場合もままあり、経過により抗菌薬を使用します。
抗菌薬の使用には用法・用量の厳守が必要
細菌性の感染症に有効な抗菌薬ですが、使用には注意が必要な薬でもあります。その理由の一つは、頻用したことにより患者さんの体内に耐性菌をつくってしまうリスクがあることです。耐性菌はその名の通り抗菌薬に対して耐性をもった細菌のこと。耐性菌による感染症では抗菌薬を使っても細菌を殺すことが難しくなってしまいます。そして治療に難渋し長期化や重症化のリスクも出てきます。耐性菌は全世界的に問題となっており、厚生労働省も2016年より薬剤耐性対策のアクションプランを決定しております。
それでは抗菌薬を使って細菌感染症の治療をする際に注意することは何でしょうか。
抗菌薬はまず医師の処方による用法・用量・日数を正確に守ることが必要です。症状が治まったからといって、途中で服薬をやめてしまうのも厳禁です。症状が治まった状態でも体内に細菌がまだ残っている場合があり、そうして生き残った細菌が耐性菌となってしまうからです。抗菌薬はきちんと最後まで飲み切りましょう。
よく保護者の方から、お子さんが保育園に行く都合上「1日3回服用となっている抗菌薬の量を多くして1日2回にすることはできないか」と質問されることがあります。結論から言うとできません。それは、抗菌薬に限らず、ほとんどの薬の用量・用法は厳密に決定されていて、これを違えると、効果がでないばかりか悪影響がある場合もあるためです。体内での薬物の動態や抗菌力を考えると飲む回数を変えることはできません。とは言いつつも、服用回数が元々1日2回や1回の抗菌薬もあり、症状・経過と合わせて選択し、処方しています。対症薬の中には症状がおさまれば飲むのを中断しても良い薬もありますし、1日2回に変更することができるものもあります。医師や薬剤師から薬の説明を十分に受けてから服用をはじめることが大切です。
お子さんの感染症への対策。予防接種と対症薬による治療
様々な感染症を防ぐ方法として予防接種があります。当クリニックでは午後に完全予約制で予防接種専用の時間帯を設けています。定期接種としてヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎、四種混合、BCG、MR(麻疹風疹)、水痘、日本脳炎、任意接種のロタウィルス、おたふく風邪の予防接種をおこなっています。 予防接種は病気を防ぐために必要な免疫を安全につけるための方法です。お子さんが感染症にかからないための有効な手段として、積極的に受けるようにしてください。
日常生活においての感染症の対策は、うがい手洗いを励行することが第一です。もしお子さんの様子がおかしいと感じたら、早めの受診をお勧めします。当クリニックでのお子さんの治療としては、症状に応じた検査・診断をおこない感染症に応じた薬を処方していきます。お子さんの場合、抗菌薬の使用が避けられる場合は、対症薬(消炎鎮痛剤、解熱剤、去痰剤、整腸剤、吐き気止めなど)を処方しています。抗菌薬の使用は頻度が高いほど耐性菌をつくるリスクも上がるので、これから長い人生を生きるお子さんこそ抗菌薬の使用は慎重にする必要があるからです。また抗菌薬は、腸の環境を整える腸内細菌も殺したりもしますので、まだ回復力の弱いお子さんには大人以上の影響が出てしまうのです。一方、抗菌薬が必要と思われるお子さんには抗菌薬も処方し、中途半端に服薬中止することなくしっかりと飲み切るようにお話しいたします。
感染症にかかったお子さんの家庭での対処法は
お子さんが感染症にかかった場合、注意すべきは家庭内での二次感染の防止です。部屋を隔離し、家族との接触も極力避け、食事も別に取ります。汚物や吐瀉物も処理に十分に注意してください。
胃腸炎(ウイルス性・細菌性共に)などの消化器の感染症では下痢が続くことで脱水症状を起こしてしまうことが心配です。症状によっては食べ物がのどを通らなくなりますので、水分、糖分、塩分の補給が最低限必要です。水分補給なら水やお茶でも良いのですが、それだけでは低血糖になってしまうこともありますので、薬局やコンビニエンスストアでも販売されている経口補水液などが良いでしょう。飲料でも吐き気を感じる場合もありますので、何回にも分けて少しずつ飲ませてあげてください。
呼吸器系の感染症では鼻がつまったり、たんが絡んだりして呼吸が苦しくなります。黄色い膿性のはなやたんのからむ咳は体が余計な分泌物を外へ追い出そうとしている作用ですので、すみやかに取り除けるようにしてあげてください。むしろ咳をしてたんを出すように促したり、鼻をうまくかめない小さなお子さんの場合はスポイトやお母さんが口で吸ってあげる吸引器も有効です。
もしお子さんがインフルエンザにかかったら
毎年国内で流行するインフルエンザについて、基本的なことはすでに皆さんもご存知だと思います。その年に流行するインフルエンザの型が予想されていて、それに応じたワクチンの予防接種がすすめられます。インフルエンザは保育園、幼稚園、学校で集団生活をおこなう子どもたちの間で大人以上に流行します。感染を防ぐにはやはりワクチンの予防接種が最も効果的です。よく「予防接種した型と違う型のインフルエンザにかかってしまった」という話を聞きますが、予防接種に使われるワクチンはいくつかの型にまたがっていて、全く効果がないということはほとんどありません。感染は完全に防げなかったとしても、予防接種をしないより、症状はずっと抑えられているのです。
インフルエンザにかかってしまった場合は、抗インフルエンザ薬を使用します。現在ではインフルエンザ迅速診断検査キットも改良され、かなり早い時期にインフルエンザの診断ができるようになってきましたし、中には発症後ごく短時間で検査陽性となる患者さんもいます。しかしそれでもインフルエンザ迅速検査で判断するには発症から12時間経過が必要だといわれています。それより早く検査をおこなってしまうと擬陰性(病気がインフルエンザであっても検査では陰性となること)となってしまうのです。もし検査で陰性になった場合でもインフルエンザが疑われる場合は、翌日再検査をおすすめしています。インフルエンザは早期検査には現れにくい一方で、抗インフルエンザ薬は発症後48時間以内に使用すべきとされています。受診のタイミングが難しいところです。、ただお子さんの場合は、重症の可能性を考えればやはりおかしいと思ったら早めの受診をおすすめします。
お子さんの感染症は様々ありますが他の病気と同じく早期発見・早期治療が一番肝心です。例えば3ヵ月未満の赤ちゃんはお母さんからもらった免疫によってウイルス感染症を起こしにくいのが普通です。もし、3ヵ月未満の赤ちゃんが発熱したとしたら、重篤な病気の可能性もあります。早急な医師への相談が不可欠です。小さな異常の発見から大事を免れることがあるのもお子さんの病気の特徴です。普段から気軽に相談できる「かかりつけ医」をぜひ見つけておいてください。