赤ちゃんは要注意!RSウイルスを知っていますか?

赤ちゃんは要注意!RSウイルスを知っていますか?

この記事の監修ドクター|会沢 治朗先生(あいざわキッズクリニック)

RSウイルス感染症。風邪に似ていますが、赤ちゃんに感染すると怖い病気です。

赤ちゃんの命が危険!RSウイルス感染症

寝ている赤ちゃん

聞きなれない病名かもしれません。冬に流行する、風邪に似た症状を表す感染症のひとつです。特に、乳児、赤ちゃんが重い症状になりやすい、危険な感染症です。

赤ちゃんの中でも月齢が低いほど危険とされるRSウイルス感染症。その特徴や、かかってしまった時の対処の仕方、治療法などを紹介します。

RSウイルス感染症の特徴

①冬に多く流行します

RSウイルス感染症は、毎年秋から冬にかけて流行します。特に人口の多い都市部での流行が目立ちます。

②初期は風邪に似てます。まれに細気管支炎を起こし重症化することがあります。

鼻水や鼻づまり、咳や発熱が見られます。RSウイルスは、細気管支(気管支のさらに奥、肺の中で枝分かれしている部分)に入り込み、炎症を起こします。発症後しばらくすると、細気管支炎の症状が出始めます。

浅く速い呼吸や「ゼロゼロ」といった呼吸音が胸やのどからでるようになります。チアノーゼ(呼吸が難しくなり、酸素不足で唇や手足が青紫色に変わる)が起こることもあります。

これらの症状は、月齢が低い赤ちゃんでは、症状がわかりにくいこともあります。普段よりも、母乳やミルクをあまり飲まない、泣く回数が減った、起きているのか寝ているのかわからない、などの様子の変化に見えることもあり、発症に気づくのが遅れることもあります。

呼吸困難で、無呼吸を起こすこともありますので、いつもと様子が違う、体が熱い、などの症状をよく観察しましょう。

③母乳の赤ちゃんもかかります

母乳育児の場合、母体からの抗体を豊富に含む初乳を飲んでいます。しかし、RSウイルスの抗体を持っているにもかかわず、ウイルスの感染力に抗体が負けてしまい、感染します。生後1か月未満の新生児でも感染する場合があり、重篤化しますので、注意が必要です。

④急激に症状が悪化することもあります

RSウイルス感染症の症状で危険なものは、細気管支炎と肺炎です。特に月齢が小さな赤ちゃんほど症状が重くなりがちです。一般的には、発熱や鼻水などの軽い風邪症状が数日間続き、その後、細気管支炎や肺炎が起こります。

しかし、新生児期に感染すると、呼吸の異常がないまま悪化するケースも見られ、発症の発見が遅れがちです。無呼吸による突然死の危険もあります。

⑤幼児や小学生もかかりますが、軽症が多いです。

RSウイルス感染症は、すべての年代で感染がありますが、年齢が上がるにつれ症状が軽くなる傾向です。幼児や小学生も感染しますが、軽い風邪のような症状のまま推移し、治ってしまいます。しかし、感染力の強いウイルスですので、周囲に感染させてしまいます。特に赤ちゃんがいる家庭では、赤ちゃんへの感染に注意が必要です。

RSウイルス感染症の感染経路

風邪にかかっている幼児

風邪気味の幼児や小学生からの感染が多いです

秋から冬にかけ、赤ちゃんと年長の幼児や小学生がいる家庭ではそのうち4割ほどが感染するという報告があります。家庭内に感染者がいる場合、咳などによる飛沫感染と、手や指、触った物を通して感染が広がります。

感染してから発症するまでに、おおむね4~6日間の潜伏期間があります。軽い風邪症状の幼児や小学生と赤ちゃんが同居している家庭では、流行期間中注意が必要です。RSウイルスは鼻や口のみでなく、眼からの感染もあります。マスク、うがい、手洗いによる予防と同時に、発症に速やかに気づくことが大切です。

迷わず受診を

赤ちゃんの容態変化は気づきにくく、発見が遅れがちのため、家庭内感染者と赤ちゃんの容態変化がある場合は、できるだけ早く受診しましょう。

RSウイルス感染症の治療

対症療法
外来治療としては、基本的に対症療法となります。去痰剤の内服や鼻汁吸引などを行います。
抗生剤投与(細菌との混合感染の場合)
RSウイルスには、抗生剤は無効ですが、細菌との混合感染が疑われる場合は抗生剤も投与します。《重症の場合は、入院治療となります。以下は入院での治療です。》
酸素投入
呼吸困難による酸素欠乏を防ぐために、酸素マスクや保育器内の酸素を高濃度に保つなどして、呼吸を助けます。
呼吸管理
呼吸数や脈拍をモニター管理します。
輸液
咳がひどい場合など、水分が充分にとれず脱水症状になることがありますので、輸液でその予防をします。

冬の流行に注意しましょう

冬のこどもと家族

RSウイルス感染症は、毎年冬に流行し、注意喚起がされますが、意外に知られていない感染症です。乳幼児に風邪に似た症状が出たら、感染の可能性を念頭に置き、小児感染症を専門とする医師へ早めに受診しましょう。