この記事の監修ドクター|会沢 治朗先生(あいざわキッズクリニック)
突然の発熱と全身に現れるかゆい水泡。帯状疱疹と水ぼうそう、このよく似た2つの病気には、どんな関係があるのでしょうか。
帯状疱疹と水ぼうそうは同じウイルスの感染症です
帯状疱疹と水ぼうそうは、どちらも「水痘帯状疱疹ウイルス」という同じウイルスの感染症です。
水ぼうそうと帯状疱疹の症状の違い
「水痘帯状疱疹ウイルス」に初めて感染するのは9歳以下の子供がほとんどで、水ぼうそうの症状がでます。一方、帯状疱疹は、水ぼうそうにかかった経験がある人が、全身の神経節に潜んでいたウイルスが再び活動を始めて発症したものです。
水ぼうそうの主な症状
発熱と発疹が初めに出ます。発疹はかゆく、赤くなり、盛り上がり、水泡に変化します。頭部から体幹へ、次いで手足へと広がります。数日かけて広がるので、かゆみに悩まされる他、全身のだるさが起こることもあります。
他に目立った症状は起こらないことが多く、発熱も2~3日で収まっていきます。しかし、稀に髄膜炎や膵炎などを合併します。感染してから発症するまでの潜伏期間は10~21日程度と幅がある上に、発疹が出る2日前から、水泡がすべてかさぶたになるまで感染力があります。家族内感染は90%と高く、かかったことのない人、予防接種をしていない人は必ず感染すると考えた方が良いでしょう。
帯状疱疹の主な症状
帯状疱疹は、発疹が出る2日ほど前から、発熱とだるさ、体の左右どちらかにピリピリと痛みが起こります。また、水ぼうそうの場合は軽症で治っていくことが多いのに対して、帯状疱疹は重症化することも多く、水泡に細菌が感染する、脱水症状、肺炎、髄膜炎や脳炎などの中枢神経への障害も合併症として起こる危険があり、注意が必要です。
感染年齢と症状が違う理由
水ぼうそうは、この水痘帯状疱疹ウイルスの初感染時の発症を指します。水ぼうそうとして、比較的軽症で症状が治まったのちも、ウイルスは全身の神経節に潜んでいますが、抗体が弱まる時期と、疲労やストレスなどで体力が落ちた時期が重なると、免疫力がウイルスの活動を抑えられず、帯状疱疹として発症します。帯状疱疹は、水ぼうそうの経験がある人すべてになる可能性がある病気です。特に50歳以上から高齢者に多く発症し、高齢者の場合、水泡が細菌感染して潰瘍になってしまう、痛みが年単位で長く残るなどの合併症も起こることもあります。
水ぼうそうや帯状疱疹の周囲への感染・発症について
水ぼうそうは子どもに多い感染症として知られ、周囲の子どもに感染して水ぼうそうを発症させます。では、帯状疱疹は周囲にに感染するのでしょうか。結論から言うと「水ぼうそうの感染源になり得ます。しかし、周囲に帯状疱疹を発症させることはありません」。帯状疱疹を発症した人が家庭内にいると、90%の高い確率で、水ぼうそうにかかったことのない子どもに、水ぼうそうが発症します。しかし、帯状疱疹の患者さんと接触した大人に、帯状疱疹が発症することはありません。
前述のごとく、帯状疱疹は、体内に潜んでいたウイルスの再活動によって発症するものだからです。
水ぼうそうは予防接種があります
水ぼうそうの予防接種は、定期接種として、無料で受けられるようになっています。1歳の誕生日を迎えたら1回目の接種が受けられ、その3ヶ月後に2回目の接種を受けて、免疫が定着します。
子どもの水ぼうそうは軽症で収まっていくことが多いとはいえ、重症化する例もあります。また、保育園や幼稚園などの集団保育の場で感染が広まることも多く、患者となる子どもの体への負担のみならず、保護者の負担軽減の観点からも、予防接種は有用な予防方法です。。
また、帯状疱疹に関しては、重症化予防のために、水ぼうそうワクチンの予防接種は効果があります。特に重症化しやすい高齢者は、ワクチン接種がおすすめです。
水ぼうそうは予防接種がおすすめです
水ぼうそうと帯状疱疹の関係について見てきました。水ぼうそうはかかる前に定期接種で予防すると良いでしょう。また、気になる症状が出た時は、早急に小児感染症を専門とする医師へ受診しましょう。