緑内障の専門医インタビュー (もりた眼科クリニック)

緑内障

アットホームなクリニック環境を整え、質の高い緑内障検査・治療を行い患者さんの目を守る「緑内障診療」の専門医

森田 哲也先生

2017/02/22

MEDICALIST
INTERVIEW
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もりた眼科クリニック
森田 哲也 院長
Morita Tetsuya

  • 日本眼科学会認定専門医
  • 日本眼科学会認定指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本眼科学会
  • 日本緑内障学会
経歴

1997年、北里大学医学部卒業。同大学病院眼科へ入局。以後、18年にわたり同大学病院での診療を主に研鑽を積んだ。キャリアでは2003年に医学博士号を取得。以後、北里大学医学部眼科学専任講師、北里大学メディカルセンター眼科部長、北里大学医学部眼科診療准教授などを歴任し、若手の育成にも注力した。専門とする緑内障では、診療ほか「緑内障と角膜の関係性」をテーマに研究にも注力。成果が認められ、海外の学術誌に掲載されるに至った。2016年11月、緑内障専門診療が可能な「もりた眼科クリニック」を東京都府中市にオープン。

“目”のあらゆるニーズに応えるクリニックをオープン

もりた眼科クリニックの受付

長きにわたり大学病院で研鑽を積み、2016年11月に当院のオープンに至りました。患者さん一人ひとりと信頼関係を構築し、質の高い診療を提供しながら地域医療に貢献していきたいと考えたのがきっかけです。

当院は商業施設の中にあり、「気兼ねない眼科クリニック」をコンセプトにしています。結膜炎やドライアイ・眼精疲労といった一般眼科診療から、白内障や糖尿病網膜症・加齢黄斑変性症などさまざまな疾患を診療し、誰もがまず通える環境にこだわりました。また、私を含めスタッフも皆アットホームな雰囲気で患者さんが相談しやすい雰囲気づくりにも努めています。

診療において注力しているのが緑内障です。近年、メディアでも情報発信されているものの、緑内障の正しい情報はなかなか広まっていないと感じる面もあるので、検査・治療のみではなく啓発も積極的に行っていきたいと考えています。

70歳代では13人に1人の有病率。日本人の失明原因第1位の緑内障

そもそも、緑内障とはどのような病気か? というお話からですが、まず「視神経の障害から視野に異常をきたす」病気のことを指します。さらに言うと「視神経乳頭や神経線維が障害されて、特有の視野異常をきたす病気」です。言葉で説明するとわかりにくい病気ですね。

症状としては「放っておけば慢性的に視野異常が進行」し、やがて失明に至る場合もあります。有病率は40歳代で20人に1人、70歳代では13人に1人ともいわれていますが、実際の患者さんはもっと多いと予想しています。近年検査機器の進歩により、早期緑内障の発見率が高くなりました。さらに近視と緑内障変化の関係など、今までよく分からなかったことが解明されはじめました。より緑内障をしっかり診断できるようになると、有病率は増加していくものと思われます。

原因がわからない緑内障がもっとも多い!?知っておくべき緑内障の種類

クリニックの待合室

ひとつの病気ではなく疾病群であり、「原発緑内障」「続発緑内障」「発達緑内障」など緑内障にはさまざまな種類があります。発達緑内障は先天性、続発緑内障は目や全身の病気から二次的に発症する緑内障なのですが、ここでは、緑内障にいちばん多い原発性についてお話しましょう。

原発緑内障とは、先ほどの発達性や続発性と違い「他の要因を持たず、なぜ発症するのかは解明されていない」緑内障で、「開放隅角(ぐうかく)緑内障」と「閉塞隅角緑内障」というふたつのタイプがあります。割合が多いのが開放隅角緑内障です。目のなかには“房水(ぼうすい)”という角膜や水晶体などに栄養を運ぶ水が流れています。房水は、目のピントを調節する毛様体という組織でつくられ、角膜と虹彩の境界線である隅角を通り、やがて静脈へと流れていくのですが、隅角の「線維柱帯」という部分が目詰まりしてしまい、房水が目の中で溜まります。

「緑内障=眼圧が上がる病気」とは一般的にも知られていると思いますが、その理由がこの目詰まりです。眼圧が正常範囲(10〜21㎜Hg)から逸脱し視神経を圧迫しつづけた結果、視野が欠ける症状が出るわけですが・・・。ただ、眼圧が高いから緑内障かというと、それもまた異なります。緑内障の種類のようにわかりにくいお話なのですが、開放隅角緑内障の中にはさらに、“眼圧が正常の値なのに”緑内障がみられる「正常眼圧緑内障」というものがあります。この正常眼圧緑内障というのは日本人が最も多く患っているのですが、近視や血行障害などさまざまな原因により通常では緑内障をおこさない程度の眼圧でも視神経が障害されます。目の中は陽圧なので、眼圧が0でもない限り視神経を圧迫していきます。症状はゆっくりと進行し初期の段階では自覚症状がでないので自分では気がつくことができません。そしてこれはどの緑内障にもいえることですが、一度視神経が損傷を受け欠けてしまった視野は残念ながら元に戻すことはできません。

気になる緑内障の検査と治療は?

治療について説明する森田医師

正常眼圧緑内障の例からもわかるように、緑内障は早期発見・早期治療が何より重要です。検査方法としては、「細隙灯検査」「眼圧検査」「隅角検査」「眼底検査」「視野検査」があります。

細隙灯検査は細い隙間(スリット)から出す細い光を目の各所に当てて、顕微鏡で拡大して行う検査です。緑内障のタイプを見極めます。
眼圧検査は目の圧を器械で測定していきます。ほとんどの方が目に空気を吹きつける検査を体験したことがあると思います。ただ緑内障においては、空気の吹きつける「非接触眼圧計」ではなく直接目に特殊なチップをあてて測定する「圧平眼圧計」を用いた検査の方が適しています。非接触眼圧計はスクリーニングに用いますが、値がばらつきやすいので細かい眼圧の値が必要な緑内障診療では不向きです。
隅角検査は特殊な検査用コンタクトレンズを用い、隅角の開き度合いを確かめる検査です。眼圧異常の原因や病気のタイプを判断することができます。 診断や経過観察の上でもっとも重要な検査が眼底検査で、目の底の眼底部にある視神経乳頭や神経線維の変化をみます。近年は光干渉断層計(OCT)という三次元画像解析装置の進歩にて、より早期の緑内障を判断できるようになりました。さらに、今まで難しかった近視の目に対する緑内障の判定が可能になりました。OCTは眼底検査と同じく、緑内障の診断および経過観察に重要な検査機器です。

視野検査はどのくらい見えているかを測定する検査です。「静的」と「動的」のふたつの検査パターンがあり、緑内障を診断・経過観察をするためには静的視野検査が通常行われます。視野異常が進んでいたり視力が低い場合は動的視野検査が行われます。

治療については、「点眼治療」「レーザー治療」「手術治療」があり、眼圧の値や視野異常の進行度合いをみて決定します。

専門診療ならではのスペシャリティに富んだ診療

当院の緑内障専門診療における特色としては「一人ひとりの患者さんに合わせた治療」を的確に行えるというところだと自負しています。最近では「個別化医療」とも言われていますね。

緑内障治療の主体となるのが点眼治療です。点眼薬は、90年代後期を機にして種類が増え、現在20種類以上の点眼薬があります。患者さんにとっては選択肢が増えよろこばしいことですが、反面、眼科医にとっては一人ひとり目の状態に適した点眼薬を的確に判断しなければいけなくなりました。ここに専門か否かの差が生じると思っています。私はこれまですべての緑内障点眼薬に対しての知見があり、使用経験があります。当院では、視野・眼底の状態・眼圧値・患者さんの年齢や社会的背景などから総合的に判断し、最適な点眼治療を実施しています。

オートノンコンタクトトノメーター(緑内障の治療に活かします)

また、そのほかの特色としては検査機器です。角膜の厚みや強さなどを測定できる機器を導入し、緑内障診療の一助としています。緑内障の管理において、眼圧値は非常に重要です。眼圧計は角膜に接触して値を測定するのですが、この値は角膜の厚みや強さに影響されます。

例えば角膜が薄いと、眼圧を測定しても実際よりも低い値で測定されてしまうことがわかっています。また、正常眼圧緑内障では角膜が薄くなっているとの報告もあります。ここから考えれば、正常眼圧緑内障は眼圧値が低く測定されがちということです。 他にも、角膜と眼圧の関係を調べる必要のある目があります。それは、レーシック後の目です。レーシック後は角膜の厚みが100マイクロ以上減り、眼圧値が低く測定されますので、緑内障の方がレーシックを行うと眼圧の管理が極めて難しくなります。レーシックを希望するほとんどの方は近視ですが、近視の目の緑内障判定は難しく、緑内障と判断されないままレーシックを受けてしまった方もいます。

よってさらに精密な眼圧値を測定できるよう、「圧平眼圧計」による測定の他に角膜の状態を検査できる2種の機器から “補正眼圧値”を検出し、総合的な眼圧値を求め治療計画を練っています。診断はもとより、眼圧値は治療においても重要なデータとなりますので、さまざまな緑内障患者さんに貢献できていると思っています。

誠心誠意打ち込める診療科が眼科だった

検査風景

学生時代、私が眼科医をめざそうと考えたのは “親身に治療にあたれる”からという理由でした。単純なのですが、私は近視なんです。自分自身が不便に感じているこの実感は、必ずや診療に生かせるだろうと考え決めました。

北里大学を卒業して同大学病院に勤務したのですが、そこで縁あり出会ったのが緑内障でした。専門グループに所属し、あらゆる緑内障の治療とケア、そして早期発見に邁進してきました。15年以上におよぶ研鑽のなかには、先ほどの緑内障と角膜の関係性についての研究もあります。恩師からの勧めで取り組んだ研究でしたが、まだ解明されていないメカニズムに挑むことに非常にやりがいを感じていました。研究成果が認められ海外の論文誌に掲載されたのは、眼科医としての誇りになりましたし、よい思い出です。

院内風景

一生涯のQOL(生活の質)を左右する目だからこそ、地域の健康を全力で支えていく。

緑内障の治療機器

再三となりますが、正常眼圧緑内障然り緑内障は症状に気づくことができにくい目の病気です。早期発見・早期治療を実現するためには、早めの検査ほかありません。

極度の心配をする必要はありませんが、有病率が高まる40歳以上の方や何か心配事がある方は、是非一度検査をご検討ください。また、緑内障は眼底異常から疑うことができますので、「緑内障は眼底検査でわかる」ということを多くの方の日常の意識として持っていただければと思います。

一生涯のQOLに欠かせないのが目ですので、それぞれに労りの気持ちを持っていただきたいと思います。そして、一人ひとりが健康な目でいられるように全力でお手伝いさせていただくのが当院の使命だと考えています。緑内障はもとより、目の心配事がありましたら是非お気軽におこしいただければ幸いです。