下肢静脈瘤の専門医インタビュー (上高田クリニック)

下肢静脈瘤

心臓血管外科のスペシャリストによる安心、安全で跡がきれいな下肢静脈瘤ストリッピング術

塩尻 泰宏先生

2017/10/18

MEDICALIST
INTERVIEW
80

  • シェア
  • シェア
  • LINEで送る

上高田クリニック
塩尻 泰宏 院長
Yasuhiro Shiojiri

  • 医学博士
  • 日本外科学会外科専門医
  • 日本美容外科学会美容外科専門医(JSAS)
  • 順天堂大学心臓血管外科非常勤助教
  • 陸上自衛隊予備三等陸佐
  • 東京都医師会糖尿病予防推進医
  • 東京都協力難病指定医
  • ACLS Experienced provider
  • 中野区医師会会員
経歴
  • 昭和大学医学部卒業

予備自衛官でもある外科・美容外科、心臓血管外科のスペシャリストのクリニック

塩尻 泰宏院長

上高田クリニックは2017年の7月に開業したばかりのまだ真新しいクリニックです。私はこれまでの数年間、この上高田にほど近い中野駅前で別のクリニックの院長を務めていましたが、ようやくこの場所で準備が整い、開業することができました。前職から中野の医師会で他の医師の方々とも良好な関係を結び、病院、クリニックの連携を含め、とても良い環境で医療をおこなうことができています。また中野の街は私自身が幼少から学生時代まで生活した街で、両親は今もこの街に住んでいます。愛着あるこの街で医療で地域の方々のお役に立ちたいと考えたのが私の開業の思いです。

私は勤務医時代には心臓血管外科を中心に医師としての研鑽を磨いてきました。また、外科、美容外科でも専門医の資格を取得し、小さなお子さんからご高齢の方まで幅広い診察が可能な知識と技術を身に付けています。体に関して「何科にかかれば良いのかわからない」といったときに最初に相談いただく「かかりつけ医」として、地域の皆さまに大いに活用いただきたいと考えています。

また私には予備自衛官という立場で医療をおこなう場合があります。予備自衛官という制度は以前からあったのですが、東北大震災のときに初めて国内で実際に召集され、活動しました。私はこの震災で予備自衛官として災害地などで活動する医師の存在を初めて知り、自らも試験と訓練を受けて予備自衛官となりました。震災当時、災害にあった方々の役に立ちたいと考えても、勤務医だった私は自分の意志だけで災害地に向かうのは難しい状況でした。しかし国の要請で予備自衛官として赴くなら状況も変わってきます。災害地での医療は医師が専門によらず患者さんのどんな状況にも対応できることが求められます。私自身そんな緊急の状況に対応できるよう、幅広い視野で診療がおこなえるようにスキルをつんでいます。決して起こって欲しくないことではありますが、戦争や災害などの緊急の際に、1人でも多くの人を救うことができればと考えて予備自衛官となったのです。今も年に一度の訓練を継続し、予備自衛官の医師として、いつでも召集に応じられるようにしています。

足の気になるこぶや編目状の静脈瘤、色素沈着。下肢静脈瘤は弁不全による逆流です

塩尻 泰宏院長

下肢静脈瘤とは足の静脈がこぶのように膨らんでデコボコした状態になっていることをいいます。血液は血流によって足の先まで届いています。足の細胞に酸素や栄養分を無事送り届けた血液は、逆に細胞から老廃物を受取り、静脈を通って心臓へと戻ります。しかし人が立ち上がった状態では、血液が足の先から心臓まで上るには、心臓からの圧力だけでは足りません。「足は第二の心臓」と呼ばれるとおり、足の筋肉が動くことによって血管をもみしだき、血液を心臓方向へと押し上げているのです。この足の筋肉の動きも、途中で止まってしまえば、上っていた血液はまた足先へと戻ってしまうことになります。そこで静脈には所々に血液が心臓方向にしか進めない弁がついていて、一度上った血液は下へ下がらないようになっています。長時間立ちっぱなしの状態が習慣的に続くなどすると、この弁に負担がかかり、一度上がった血液をとどめておくことができなくなって逆流してしまいます。下肢静脈瘤はこの弁が上手く機能しないこと=弁不全から起こるのです。
足にはこの弁を持った大・小の伏在静脈という太い血管があります。大伏在静脈は足の表(すね)側にあり、小伏在静脈は裏(ふくらはぎ)側にあります。これらの本幹の弁が壊れると、血管がデコボコと膨らんだり、下肢の皮膚が黒ずんだり、潰瘍が起こることがあります。これを「伏在静脈瘤」といいます。
この伏在静脈瘤に対して本幹以外の分枝に起こる「分枝静脈瘤」、太腿の外側から後面、膝の裏側に起こる「網目状静脈瘤」、皮内の細静脈、小静脈が拡張して起こる「クモの巣状静脈瘤」があり、合わせて4種類の静脈瘤があります。

タイプによってそれぞれ治療法が異なる4つの静脈瘤

塩尻 泰宏院長

下肢静脈瘤は以上の4つの種類で現れます。その治療法には弾性ストッキング等を用いて静脈瘤の進行を防ぐ「圧迫療法」と、硬化剤を用いて血液が停滞している血管をふさぐ「硬化療法」、手術によって伏在静脈を取り除いてしまう「ストリッピング法」、同じく伏在静脈をレーザーで焼灼する「レーザー治療」などがあります。
圧迫療法は、下肢静脈瘤の予防や初期には効果的ですが、弁不全を起こしてデコボコになってしまった進行した下肢静脈瘤への効果は期待できません。
硬化療法は伏在静脈瘤以外の分枝静脈瘤、網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤に有効で、硬化剤を注射して血管をふさぎます。手軽に治療がおこなえる反面、それだけでは原因となっている伏在静脈本幹の弁不全がそのままですので、症例によって異なりますが再発する例が多く根本的な治療とはなりません。
ストリッピング法、レーザー治療はどちらも伏在静脈の血流を完全に止めて静脈瘤を解消する根本治療です。違いはストリッピング法が伏在静脈そのものを手術で摘出してしまうのに対して、レーザー治療は伏在静脈にカテーテルを挿入し先端についたレーザーで血管内から焼灼し、血管をふさいでしまうというもの。大・小伏在静脈瘤の治療にはこのいずれかの方法で治療をおこなうのが一般的です。

伏在静脈を切除するストリッピング法

塩尻 泰宏院長

当クリニックでは伏在静脈瘤の治療法として患者さんの症状が適用となればストリッピング法での治療をお勧めしています。ストリッピング法は下肢静脈瘤の治療法として、古くからおこなわれてきた最も安全で確実な治療法です。また現在では麻酔の技術が進んだため、日帰りでの手術が可能になっています。
伏在静脈は下肢にある太い血管の一つです。「こんな太い静脈を取ってしまって、足に影響はないのだろうか?」そう考えられる方もいらっしゃるでしょう。そこはご安心ください。弁不全になり逆流している伏在静脈は役に立たないどころか悪さしかしていません。摘出またはレーザーで焼き閉じた方が足にとっては良いのです。下肢には他にもたくさんの静脈があり、摘出しても全く影響がありません。伏在静脈は、心臓のバイパス手術の際などに摘出して利用したりすることもあり、摘出しても何ら問題はありません。
ストリッピング法では足の付け根のそけい部と膝下を小さく切開し、伏在静脈の中に細いワイヤーを通し、抜き取るという手術です。静脈瘤を起こしている血管そのものを取り除いてしまいますので、最も再発が少ない治療法です。

院内風景

当クリニックでのストリッピング手術のフロー

当クリニックでは伏在静脈に弁不全の逆流があり、静脈瘤がある程度の太さとなっていればこのストリッピング法やレーザー焼灼術の適用として手術を計画します。日帰り手術が可能ですので、患者さんと相談して手術日を決めます。手術が午前中の場合は朝食を、午後の場合は昼食をという風に直前の食事を取らずに来院いただきます。これは手術や麻酔の影響で気分が悪くなった場合、胃がいっぱいだと嘔吐する危険性があるからです。
麻酔はそけい部と膝下の切開部、そして血管の通り道に局所麻酔をおこないます。また、落ち着いて安全に手術を受けてもらいやすいように、静脈から鎮静剤の投与もおこないます。この鎮静剤は全身麻酔のように意識を失うものではありませんが、リラックスできるので患者さんはそのまま眠っていただいてもOKです。ワイヤーを使って伏在静脈を慎重に引き抜いて、2箇所の傷口を縫合したら手術は終了です。
手術後2日間は手術をした部分を包帯で圧迫して過ごしていただきます。この間お風呂に入ったり、シャワーを治療箇所に当てるのは避けてください。上半身や頭を洗うのは大丈夫です。2日後、来院いただき包帯をとって、出血などがないか治療した箇所の確認をします。問題がなければ1週間後に抜糸、1ヶ月後に異常が無いかを確認して、治療は終了です。

美容外科専門医としての切開、縫合へのこだわり。こんな人に起こりやすい下肢静脈瘤

塩尻 泰宏院長

私は美容外科専門医の資格も有しており、患者さんの治療に対する満足度を高めるため治療だけでなく手術の痕の残り方にもこだわりを持って手術に臨んでいます。色素沈着や、デコボコとなってしまった静脈瘤を治したいと考えて来院される患者さんの足に、目立つ手術痕が残ってしまっては元も子もありません。切開部を極力小さくし、痕ができるだけ残らないように美容外科の手法でていねいに縫合しています。

下肢静脈瘤は寿司職人、警備員、ドアボーイ、クリーニング店などの職業の方に起こりやすい疾患です。これはもちろん立ったまま長時間動かないでいることが原因です。足踏みをするなどできるだけ足の筋肉を動かすことが静脈瘤の予防につながります。また上記の方々のように職業的に立ったままの姿勢を取らざるを得ない方々には仕事中だけでも医療用の弾性ストッキングの着用をおすすめします。
また妊娠中の女性にも下肢静脈瘤はよくあらわれます。これは子宮が大きくなることによって下半身の血管が圧力を受け、下肢の静脈に血液が滞留しやすくなってしまっているためです。出産後自然に治るケースもありますが、症状がひどく気になったり、治らない場合は医師に相談いただければと思います。

圧迫療法や硬化療法などの治療方法も初期の静脈瘤にはより効果的です。外見的には目立たなくても、就寝時に足がつるなどの症状は下肢静脈瘤の初期症状かもしれません。専門医への早めのご相談をおすすめします。