下肢静脈瘤はタイプごとに治療法が異なります

下肢静脈瘤はタイプごとに治療法が異なります

この記事の監修ドクター|塩尻 泰宏先生(上高田クリニック)

下肢静脈瘤は4つのタイプに分けられます。タイプごとの症状や治療法を見ていきましょう。

下肢静脈瘤はこんな病気です

ふくらはぎを抑える女性

下肢静脈瘤は、足の静脈が膨れ上がってコブのようになったり、静脈が透けて見えるようになる病気です。足の静脈は、足の筋肉のポンプ作用と静脈の逆流防止弁によって、重力に逆らって心臓に血液を送り返すために、足の筋肉は「第二の心臓」と呼ばれています。

このポンプ作用と、逆流防止弁によって血液が落ちてくるのを防いでいますが、この弁が壊れてしまい、血液が足の静脈に留まってしまうために起こるのが、下肢静脈瘤です。静脈は、老廃物を集める役目もありますから、下肢静脈瘤になると、血流が滞り、だるさやむくみも現れます。

下肢静脈瘤は良性の病気で、命の危険がある病気ではありませんが、見た目の問題やだるさ、むくみなどの慢性の症状で、QOL(生活の質)が低下してしまいます。

下肢静脈瘤は、成人の4割、30歳以上では6割の人がなっているとのデータがあります。男性よりも女性に多く現れる病気で、特に出産後の女性の半数がなるとの報告もあり、とても身近な病気です。

静脈瘤は大きく4つに分けられます

①伏在型静脈瘤

【症状】

足の表面にある静脈の中でも大きな静脈の弁が壊れて起きます。腿の付け根の弁が壊れて起きる場合は膝の内側に、膝の後ろの弁が壊れた場合はふくらはぎに静脈瘤が現れます。

静脈が太いため、静脈瘤も大きくなり目立ちます。また、だるさやむくみの症状も強めに出ることが多いです。

【治療法】

手術が適用されることが多い種類です。手術はストリッピング術や血管内焼灼術という方法が採られます。弁が壊れている静脈をワイヤー(ストリッパー)で抜き取ったり、レーザーで静脈を焼き閉じてしまう方法です。

血管を抜き取ってしまったり、焼き閉じてしまったら不都合が起こらないかと心配になってしまうかもしれませんが、弁が壊れており、静脈瘤ができている静脈は血管として機能していないどころか、悪さしかしていませんので、抜き取ってしまっても問題ありません。

注射イメージ

②分枝静脈瘤

【症状】

皮膚の表面に近い、細い静脈の弁が壊れて起こります。膝の周りや裏側、腿の前面や裏側に血管が浮き上がるようになります。

【治療法】

見た目が気になるかどうかで治療を行います。硬化療法という治療法が適用されます。異常を起こしている静脈に注射で硬化剤を注入して、静脈をつぶして閉塞させます。

硬化剤を注入した静脈が色素沈着を起こすこともありますが、3年もたてばきれいになることが多いです。また、足のだるさやむくみがつらい場合は弾性ストッキングを着用する圧迫療法も効果的です。

③網目状静脈瘤

【症状】

さらに細い静脈が静脈瘤を起こして、腿の裏側や膝の後ろに網の目のように浮き出てきます。

【治療法】

分枝静脈瘤と同じく、硬化療法で治療を行います。

④クモの巣状静脈瘤

【症状】

細かな血管が静脈瘤となって拡張し、青や赤のクモの巣のように浮き出て見える静脈瘤です。下肢静脈瘤の中では最も軽症とされる種類ですが、伏在型が併発することもあります。

【治療法】

見た目が気になる場合に治療の適用となることが多いです。治療法は硬化療法と圧迫療法です。

自分の症状に合った治療法を

考える女性

下肢静脈瘤はタイプごとに重症度も適した治療法も異なります。自分の症状がどのタイプなのかを知り、適した治療法を見つけましょう。