内視鏡検査
『無送気軸保持短縮法』による痛くない大腸内視鏡で術後も安心なポリープ除去
2017/10/08
きたやま胃腸肛門クリニック
北山 大祐 院長
Daisuke Kitayama
- 医学博士
- 日本大腸肛門病学会 専門医(Ⅱb:肛門科)
- 日本消化器内視鏡学会 専門医
- 日本消化器外科学会 専門医
- 日本外科学会 専門医
- 消化器がん外科治療認定医
- 日本抗加齢医学会 専門医
- 経歴
- 平成20年 千葉大学医学薬学府博士課程 卒業
- 平成12年 千葉大学医学部第一外科 入局 千葉大学医学部附属病院、社会保険船橋中央病院、聖隷横浜病院、国立千葉医療センター、千葉県救急医療センターなどに勤務
- 平成20年 東葛辻仲病院 勤務
- 平成21年 ただともひろ胃腸科肛門科 非常勤医師として兼任
- 平成29年 7月 きたやま胃腸肛門クリニック開院
胃・大腸の内視鏡検査+肛門疾患の専門医による地域密着型クリニック
きたやま胃腸肛門クリニックは2017年の7月に開業したその名の通り「胃腸と肛門」を専門としたクリニックです。私はこれまでの10年間関東屈指の大腸肛門病センターである「東葛辻仲病院」で内視鏡による検査・治療と肛門手術において専門医として研鑽を積んで参りました。桜新町は、地元に対する愛着が強く、よい街づくりをしていこうという皆様がお住まいの地域です。私はこの街で、地域の方々に親しまれ、安心して胃腸、肛門に関する医療を受けていただけるクリニックをつくりあげていきたいと考えています。
当クリニックの特徴は、食道、胃、大腸の消化器全般から肛門までを一連のものとして診察・治療ができるところです。胃・大腸の内視鏡による幅広い検査や治療はもちろんのこと、痔などの肛門疾患について一部の入院が必要な手術以外は当クリニックでの日帰り手術が可能です。また、患者さまのプライバシーに配慮し、待合室を男女別にし、診察室、内視鏡室、処置室等の出入りも男女別の動線を設けて、クリニック内で互いに対面することのない配置と工夫をおこなっています。胃腸やおしりについて日頃から気になることがありながら、内視鏡の苦しさや恥ずかしさから受診をためらわれるケースがよくみられます。当クリニックではそのような患者さまの不安や悩みに応え、最高水準の医療を提供できるよう努力して参ります。
一般的な大腸内視鏡の挿入方法と『無送気軸保持短縮法』の違い
私はもともと消化器外科医として、大学病院や拠点病院で約十年にわたり手術による消化器の治療を経験しました。そののち、内視鏡検査・治療と肛門診療のスペシャリストになりたいと考えるようになり、内視鏡による大腸の検査・治療と肛門の治療を専門とした、全国でも有数の大腸肛門病センターである辻仲病院で勤務することになりました。私はそこで、10年間、内視鏡検査・治療と肛門に関する知識と数多くの臨床経験を得て、そして、このクリニックの開業に至りました。
大腸内視鏡の操作法にはいくつかの流派ともいえる挿入方法があります。私が辻仲病院で身に付けたのが『無送気軸保持短縮法』という大腸内視鏡の挿入方法です。大腸内視鏡検査は、先端に高性能のカメラがついているスコープで、大腸全体と小腸の一部を観察することができる検査です。まず肛門から内視鏡を挿入し、大腸の一番奥である盲腸の部分まで内視鏡を到達させなければなりません。実際に大腸を観察するのはそこからで、戻りながら大腸の粘膜に病変がないかを確認したり、ポリープを発見し、切除したりするのです。
大腸内視鏡を奥まで挿入する際、一般的な挿入法では空気や二酸化炭素を送り込み(=送気)、大腸を膨らませながらカメラの前に空間をつくって前に進んでいきます。しかしこの方法では腸が空気で膨らんだ分、ファイバースコープを奥へと押し込んでいかなければなりません。空気や二酸化炭素によって膨らんだ腸はファイバースコープによって押されると患者さまは苦痛を感じることになってしまいます。特に腹部の手術の経験があり腸に癒着がある人などは、空気を入れることで挿入がより難しくなってしまう場合が多く見受けられます。この現象は、お祭りなどで見かける棒状の風船をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。棒風船は膨らんでいなければ柔軟で、中を自由に通過することが可能ですが、膨らませて屈曲させるとその屈曲部は閉塞して、通り道をふさいでしまいます。「無送気」という挿入法がいかに有効かというひとつのイメージになります。
『無送気軸保持短縮法』による大腸内視鏡検査の数々のメリット
私がおこなう『無送気軸保持短縮法』は内視鏡の挿入時に空気や二酸化炭素を入れずに盲腸のところまでファイバースコープの先端を到達させる挿入方法です。大腸は通常膨らんでおらず、蛇腹構造になっています。この蛇腹を一つひとつたたみながらたぐり寄せるようにして、スコープを押すことなく、奥まで進めていくのが『無送気軸保持短縮法』なのです。大腸の全長は個人差があり、1~1.5m程度と言われています。『無送気軸保持短縮法』では大腸を丁寧に手繰り寄せながら挿入していきますので、ほとんどの場合、スコープを60-70cm以上挿入することなく、大腸の奥まで挿入が可能です。一般的な挿入方法では、スコープを押し入れては引き戻しての繰り返しで挿入していきますので、検査中に挿入されるスコープは1mを超えることも見受けられます。このことからも、無送気軸保持短縮法がいかに「押さず」に奥まで届いているかがわかると思います。
この『無送気軸保持短縮法』は腸を押すことがないので患者さまが痛みを感じることはほとんどありません。しかし、一つひとつ腸のひだを丁寧にたぐり寄せていくので、挿入には少し時間がかかります。通常の送気で熟練の内視鏡専門医がカメラの挿入を終えるのに約1.2分かかるといわれています。私がおこなう『無送気軸保持短縮法』での挿入が約3分程度です。しかし、その後スコープを引き抜きながら、大腸を丁寧にくまなく観察していくわけですから、観察には5〜10分かかります。つまり、すべての内視鏡の検査時間で考えると検査時間自体では大きく変わりません。この1分の差によって、苦痛がほとんどない優しい検査が可能なのが「無送気軸保持短縮法」の大きなメリットなのです。
また、スコープを無理に押し進めることがないため、大腸の穿孔といった危険がなく、安全な挿入法であることは言うまでもありません。
私はこれまで12000件以上の大腸内視鏡検査を経験し、内視鏡検査における合併症は一例もなく、この優れた方法を患者さんに自信を持っておすすめしています。
経過が良好なコールドスネアによるポリープ除去
がんの早期発見や、様々な腸の病変の発見、診断に大腸内視鏡が大きな役割を果たしていることは既にご存知のことと思います。内視鏡検査の優れた点として、検査を行うと同時にポリープ切除などの処置が可能な点があります。
当クリニックでは、大腸ポリープは内視鏡検査時にそのまま切除が可能です。ポリープの切除はスネアと呼ばれる輪状の処置具を用いてポリープを切除します。従来はこのスネアに高周波と言われる電気を流して、焼灼しながらポリープを切除しておりました。しかし、この方法は焼灼した部分が、治癒する過程で潰瘍となり、その部分からのある一定の頻度で後出血を起こすことが、常に懸念事項でした。
当クリニックではコールドスネアポリペクトミーという大腸ポリープ切除の方法を用い、高周波にて焼灼することなくシャープにポリープを切除する方法を積極的に取り入れております。この方法の場合、切除後の後出血の可能性も低く、安全に日帰り手術が可能といえます。
高画質で診断能力をアップした最新の経鼻胃内視鏡検査
当クリニックでは、フジノンの最新の胃・大腸内視鏡システムを導入しています。これまで鼻からスコープを挿入する経鼻胃内視鏡検査(胃カメラ)は、口から挿入する経口胃内視鏡検査に使用するスコープに比べ径が細いため、画質で経口胃内視鏡検査に劣ると言われていました。しかし、当クリニックで導入している最新鋭の経鼻内視鏡システムは、画質が飛躍的に進化し、これまでの経口内視鏡と比べても全く遜色がないと感じています。当クリニックでは患者さまの苦痛の少ない経鼻胃内視鏡検査を第一選択としています。この経鼻内視鏡は極細径のため、経鼻での検査が苦痛が少ないことももちろんですが、女性など鼻の中が狭い方で、どうしても経鼻では検査が行えない方が、経口で使用する場合でも従来の経口内視鏡検査よりオエッとなる反射が少なく、患者さまにとって検査を楽に行うことが可能です。また当クリニックでは、上部内視鏡、大腸内視鏡のどちらの場合も患者さまの緊張をほぐし、リラックスして検査を受けて頂けるように鎮静剤を使用し、より痛みのない、苦しくない胃・大腸内視鏡検査を可能にしています。
消化器の様々な疾患を早期に発見するためには40歳以上の方は、胃は毎年、大腸は2.3年に1度を理想とした、胃・大腸内視鏡による定期的な検査が望ましいです。内視鏡検査で患者さんに辛い、苦しいと感じられてしまっては、もう一度検査をしようとはなかなか思っていただけません。だからこそ患者さまにとって少しでも苦痛の少ない内視鏡検査を絶えず目指しています。
また、看護師スタッフは3名が内視鏡技師免許を取得していますので内視鏡検査・治療の体制も万全でスムーズな検査が可能です。他で内視鏡検査をして苦しかった方、あるいは初めて内視鏡検査をしてみようと考えている方も当クリニックでの検査についてご説明致しますので、お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。
胃・大腸内視鏡を30分で続けて一度に検査が可能
当クリニックでの1つのエピソードをお話しさせて頂きます。健診で便潜血が指摘され、さらにひどい胸焼けがあるという50代男性の患者さまが来院されました。当クリニックでは、ベッドに横になったままで胃内視鏡と大腸内視鏡の検査が同時に可能ですので、胃内視鏡検査を行ったのちにそのまま続けて、大腸内視鏡検査をおこないました。初診時に問診を行い、内視鏡検査の準備のための下剤の服用方法をお話しし、検査日を決定致します。検査当日30分前に受診していただき、検査の結果、胃内視鏡検査では逆流性食道炎が指摘され、大腸内視鏡検査では大腸ポリープを3個認めましたので、同時に内視鏡的切除を行いました。
両方の内視鏡検査とポリープ切除を含めて要した時間は20分程度で終了しました。検査終了後はリカバリールームで30分ほど体を休めていただき結果を説明。ポリープの治療はこれで完了ですが、逆流性食道炎の治療のための薬を処方し、経過を観察中です。これは、検査や治療のために何度もクリニックへ受診しなければいけないから、なかなか病院にいくことができないという患者さまの負担を減らし、できるだけ検査後に早く治療を開始できるようにと、当クリニックが取り組んでいる検査・治療の1例です。